クリープハイプ – 新作「エロ/二十九、三十」を発表したばかりの彼らが、先日、千原ジュニアを迎えて開催した自主企画イベント“ストリップ歌小屋”のレポートを。

クリープハイプ

シングル「エロ/二十九、三十」を7月23日にリリースしたばかりのクリープハイプ。その一週間前の7月16日、彼らは“クリープハイプ presents ストリップ歌小屋”という自主企画イベントを行った。バンド発で自身の好きな&尊敬するアーティストとの共演を果たした以前2回の恵比寿LIQUID ROOMからキャパを拡大し、Zepp Tokyoで迎えた今回。5月にこの公演の開催決定が発表されてから、対バン相手の名前に驚きつつ、いったいどんなパフォーマンスが見られるのかとファンのみならず期待していた人も多いはず。結果は、いい意味で予想を裏切る、感動と面白さを残す異色ライブになりました。では、この日の様子を改めてのぞいてみましょう。

TEXT BY  永堀アツオ

バンドじゃないんですけど、どうしてもほんとに、僕がすごい大好きで、ものすごく尊敬していて、お願いして出てもらいました

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クリープハイプの自主企画イベント“ストリップ歌小屋”の第3回目が、7月16日にZepp Tokyoで開催された。UNISON SQUARE GARDEN、フラワーカンパニーズに続く、対バン相手は、千原ジュニア。オープニング・アクトとして、バイオリンを携えた長谷川カオナシとともに登場した尾崎世界観は、弾き語りで3曲をパフォーマンスしたあと、「すごい大事なイベントなんですけど、クリープハイプを好きでいてくれるお客さんに観てほしいバンドとやりたいなとずっと思ってて。お客さんに喜んでほしいっていう気持ちがあるので。でも、全然やりたいバンドがいなくて。今年もできないか……と思っていたんですけど……あの、バンドじゃないんですけど、どうしてもほんとに、僕がすごい大好きで、ものすごく尊敬していて、お願いして出てもらいました。このあと、楽しんでください」と千原ジュニアを招いた趣旨を観客に伝えた。

どうも、千原疎外感です。

一方、大歓声で迎えられた千原ジュニアは、「どうも、千原疎外感です」とあいさつして会場を湧かせ、「半年ほど前に、尾崎くんが『一緒に対バンをしてくれないか』、と。返す刀で『お前、何言うてんねん』と。俺は芸人ですし、バンドもやってないし、音楽もできないのでお断りしたんですけども、どうしても対バンをやりたい、と。俺はほんとに丁重にお断りしたんです。ほんなら彼がね、『今ね、一緒にやりたいバンドなんて一組もいないんですよ!』なんてカッコいいことを言いますんでね。そこまで言っていただけるならということで、今回、お邪魔しました」と、自身がこのステージに立つに至った経緯を説明した。

「何をさせてもらおうかな?」と悩んだ千原ジュニアが選んだのは、“詩の朗読”だった。「吉と出るか凶と出るかわかりませんけど、最悪、凶と出た場合は、“夏のせい”にすればいいということで」とクリープハイプ「ラブホテル」の歌い出しにかけて爆笑を起こし、作文ともすべらない話とも、漫談や落語とも似て非なるオリジナルの詩を朗読した。

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全29篇の中のひとつに「尾崎世界観」という題名の詩があった。
「尾崎世界観が家に遊びに来た。一緒にお酒を飲んだ。音楽の話をした。夢の話をした。笑いの話をした。未来の話をした。いっぱいお酒を飲んだ。尾崎くんがトイレに立った。
しばらくすると、警備員のおじさんがふたり、大きな声を出しながら、僕の部屋に走り込んできた。『大丈夫ですか? 何かありましたか?』。
原因は尾崎くん。
尾崎くんは、トイレの流すボタンと間違えて、非常ベルを押していた。
僕は思った……どんな世界観やねん」

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クリープハイプのメンバーも楽屋で千原ジュニアの舞台を観ていたのだろう。尾崎は「そう言えば、ジュニアさんの家で間違えた非常ベルの色はオレンジでした」と語り、「オレンジ」を熱唱。ライブは、武道館2デイズ以来ということもあり、彼らのライブを待ち望んでいた観客の期待感と、お客さんの顔を見ながら演奏したいというバンドの気持ちが相思相愛でぶつかり合う、幸せな空間となっていた。「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「ラブホテル」と、イントロが鳴った瞬間に歓声が上がり、拳も上がり、飛び跳ねながらの大合唱が始まる。リリース間近の新曲「エロ」を披露したあと、尾崎は「ほんとにしばらく空いてたから、ライブができて、(お客さんを)目で見れて、本当にうれしいです」と素直に感謝の言葉を口にした。

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4人それぞれの楽器の音が明確に個を主張しながらも、ひとつの大きなグルーヴとなって身体を揺らす。さらにライブではお馴染みの「HE IS MINE」「社会の窓」で、観客が声を張り上げ、バンドの演奏に重なったときの高揚感といったらない。アンコールでは、「最近、ライブをしてなかったから、取り残されるんじゃないかという不安を感じていて。今日、安心しました。長く聴いてほしいな〜と思います。時代は変わっていきますが、同じようにやることしかできないけど、今からやる曲は、自分の歳のことを歌った曲で、お客さんは若い人が多いかもしれないけど、歳をとっても聴き続けていてほしいなという気持ちを込めて歌います」と語り、ダブルAサイドの新曲「二十九、三十」をまっすぐに心に届けるように歌った。

市井の人々に対する愛情深い視点と親密な語り口という点では共通

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千原ジュニアが40歳、尾崎世界観は(今年)30歳。どちらも芸人として、バンドマンとして、ちょうど脂がのっている時期。ふたりは、年齢は離れているが、市井の人々に対する愛情深い視点と親密な語り口という点では共通している。千原ジュニアは「1万円アート」という題名の詩の中で、自分のファンだという彼女がいちばん好きな芸人が“あばれる君”だったというエピソードを語り、クリープハイプはソープ嬢が主人公の「オレンジ」や「イノチミジカシコイセヨオトメ」を歌った。千原ジュニアがクラブで60歳と50歳のおばちゃんにナンパされた話(「なんとなく」)をすれば、クリープハイプは「ラブホテル」や「エロ」で、夏のせいにして、やることやろうよと若い男子の本音を叫ぶ。千原ジュニアはあくまでも自分の視点で、一人称で語り、尾崎は物語に落とし込み、時に女性の主人公にもなるという違いはあれども、はやりものの中に偽善や嘘を見抜き、平凡な人々の変わり映えのしない日々の最中に顔をのぞかせる裂け目の瞬間(笑いだったり、涙だったり、怒りだったり)を捉える鋭い視線を持っている。ふたりはとても似ているから仲良くなるのは簡単だったろう。

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また、話し上手な人は聞き上手と言われるように、自身の物語を語りながらも、聴き手の抱えている、語られてない語りを引き出して、自分の内に受け止めてくれるような懐の深さもある。千原ジュニアの祖母や父母、兄の話に自分の家族を重ね、クリープハイプの楽曲に登場する孤独で血気盛んな若者に自分自身を投影する。そこには、演者と観客の、うまく言葉にできない気持ちのやりとりがある。癒しなのか感動なのか、共感なのか興奮なのか。正体はわからないが、その“言葉にできない気持ちのやりとり”を求めて、終わったばかりではあるが、また早くライブが観たいという気持ちになってしまうのだ。

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SETLIST

千原ジュニア
自作詩朗読

SETLIST

M01. 寝癖
M02. 愛は
M03. 手と手
M04. オレンジ
M05. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
M06. ラブホテル
M07. かえるの唄
M08. グレーマンのせいにする
M09. 明日はどっちだ
M10. エロ
M11. ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ
M12. 新曲
M13. HE IS MINE
M14. 社会の窓
[ENCORE]
EN1. 二十九、三十
EN2. イノチミジカシコイセヨオトメ

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DISC INFORMATION

SINGLE 2014.7.23 release
「エロ/二十九、三十」
ユニバーサル シグマ
[CD]①エロ②二十九、三十③東京日和④なぎら(初回限定盤のみ収録)④ベランダの外(通常盤のみ収録)
[DVD]くそキャンプ2014

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[初回限定盤/CD+DVD]

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[通常盤/CD]

「エロ」MUSIC VIDEO

「二十九、三十」MUSIC VIDEO

LIVE INFORMATION

“八枚目でやっと!九枚目でもっと!”
8月9日(土)東京 かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
8月12日(火)静岡 静岡市民文化会館・中ホール
8月15日(金)愛知 日本特殊陶業市民会館・フォレストホール
8月16日(土)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
8月19日(火)埼玉 大宮ソニックシティホール
8月21日(木)新潟 新潟県民会館
8月24日(日)宮城 東京エレクトロンホール宮城
8月28日(木)大阪 オリックス劇場
8月29日(金)大阪 オリックス劇場
8月31日(日)福岡 福岡市民会館
9月5日(金)北海道 札幌市教育文化会館・大ホール
9月8日(月)神奈川 よこすか芸術劇場
9月12日(金)香川 サンポートホール高松・大ホール
9月13日(土)広島 アステールプラザ
9月17日(水)東京 NHKホール
9月18日(木)東京 NHKホール

PROFILE

尾崎世界観(vo、g)、長谷川カオナシ(b)、小川幸慈(g)、小泉拓(ds)。2012年4月にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャー・デビュー。2014年4月に初の日本武道館2デイズ公演を開催、5月にシングル「寝癖」をリリース。8月より初の全国ホールツアー“八枚目でやっと!九枚目でもっと!”をスタート。今作の「二十九、三十」は、“R25 30 オトコ テーマソング produced by THINK30”に起用されている。

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