クリープハイプ SINGLE「エロ/二十九、三十」ディスクレビュー

エロ/二十九、三十

SINGLE

クリープハイプ

エロ/二十九、三十

ユニバーサル シグマ

2014.07.23 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


「十九、二十」の若者は「二十九、三十」の青年となった

 今年5月にリリースされた移籍第1弾シングル「寝癖」からわずか3ヵ月未満という短いタームで届けられた通算4枚目のニュー・シングル「エロ/二十九、三十」。いちばん最初に「エロ」を聴いたときは、大人数のアイドル・グループの推しメン(選抜外)との妄想にふける曲か? と早とちりしてしまったが、本作は“バンド初の両A面”という点がキモとなっているようだ。

 改めて、1曲目の「エロ」を聴き込んだ末に思い浮かできたのは、“十九、二十”の夏である。金はないけど、時間だけはやたらとあって、鬱屈した情念や苛立ちがセックスや暴力といったダイナミックで肉体的な方向で爆発してしまう季節。強烈な日差しと、鬱陶しい汗と、寝付けずにふらふらと街を彷徨ってしまうようなあてどなさ。これから始まる人生のいろいろに思い悩んだりもするけれども、実際は将来への不安という問題を棚上げして、セックスのことしか考えてないようなダメさ加減……。尾崎世界観は「どうせ最後はこうなるんだから もうやる事やろうよ」と歌う。10代〜20代前半の男子であれば一度は思ったことがあるであろう言いにくいことを、過程を大事にする女子からは“サイテー!”とののしられそうな本音をストレートに言ってくれている。なんでもないことを言ってるようで、とんでもないことを言ってるBメロもいい。そう、若き日の苛立ちと鬱屈したエネルギーを描くのであれば、セックスは無視できないのだ。彼らは「HE IS MINE」や「オレンジ」、「ラブホテル」などでセックスを歌っていることを取り上げられることも多いが、それは、ほかに歌っているバンドがいないという証でもあるのではないかと思う。

 そして、2曲目の「二十九、三十」。優れたストーリーテラーである尾崎にしては珍しく、同年代に向けたストレートなメッセージ・ソングとなっているが、続けて聴くと、「エロ」の若者の10年後としても捉えられる。クソみたいな大人には死んでもならない! と意気込んでいた若者は、やがて現実の重みを知り、子供みたいなことを言ってられないよな……とうそぶくようになる。今日をしっかりと見据えて、明日に向かうしかないと感じているのだが、上の世代はつまっていて、しばらくどいてくれそうもない。「恥ずかしい位いける様な気がしてる ずっと誰にも言えなかったけど 今なら言える サビなら言える」と歌う。“こんなもんかな”という諦めに負けじと、“こんなもんじゃないだろう!”という自信とやるせなさが入り交じって心に切なく響く。

 付け加えていうなら、3曲目の「東京日和」は「二十二、二十三」、初回限定盤に収録された「なぎら」は「二十四、二十五」、通常盤収録の「ベランダの外」は「二十六、二十七」と、それぞれどんな年齢だろうか……と想像しながら聴いてみるのも楽しい。

(永堀アツオ)

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