ケツメイシ ALBUM「KETSUNOPOLIS 9」ディスクレビュー

KETSUNOPOLIS 9

ALBUM

ケツメイシ

KETSUNOPOLIS 9

avex trax

2014.07.23 release

<CD+DVD> 写真
<CD>


完成度を高め続ける、チーム・ケツメイシの戦術とスキル

 素速いテンポと華麗なコンビネーション、最新の戦術を駆使して派手に攻撃したあとは、一歩引いて守備を固めてからゲームをコントロールする。それはサッカーではなく音楽のことで、前作『KETSUNOPOLIS 8』で超攻撃的クラブ・ミュージック路線を究めたあと、ニュー・アルバム『KETSUNOPOLIS 9』で到達したケツメイシの現状はそんな感じかもという、ふと思いついた例え話。「カリフォルニー」ではアコギ、「FUTARIDAY」ではウクレレ、「逆転の発魂」ではエレキ・ギターと、冒頭の3曲で示す“まろやかなビートとメロディ楽器の組み合わせ”は、前作で聴かせた時代の音・EDMへのシンパシーをいったん消化して耳に優しいポップスへと転換したもので、マイルドでのどごし爽やかだがしっかりとコクがあるという、よくできたビールのような味わい。ヘタな例え話ばかりで申し訳ないが、要は前作をややマニアックと感じたファンは安心して楽しめる、そして前作で彼らを気に入ったリスナーをも決して裏切らない見事なサウンド作りだということを、何はともあれ冒頭に申し述べておきたい。

 そのうえで面白く思うのは、EDMのポップス化と同時に、彼らのルーツであるヒップホップへの回帰が強く感じられることだ。ピアノのループを活かした典型的なヒップホップ・ビートの曲「Made in JAPAN」では、RYOさんのラップがひときわ活き活きして聴こえるし、後半11曲目からの3連発「親父のメール」「それぞれのライフ」「少年と花火」で聴けるシンプルでメロディアスなビートとラップの心地よさは、J-POPのど真ん中にラップを持ち込んだ初期ケツメイシのみずみずしさを思い起こさせ、RYOJI、大蔵、RYOさんのラッパー/ボーカリストとしてのうまさを再確認させてくれる、本当にいい曲だと思う。

 歌詞については、RYOさん得意の自虐ネタ「中年あるある」や、“うなぎが食いたい”という欲望だけをねちっこくラップする「EMERGENCY」など、前作にはなかった笑えるテーマの復活も聴き逃せないが、全体的には友達、家族、社会の中での人間関係をテーマにした切実なメッセージや、スケールの大きなラブ・ソングの比重がさらに増した。J-POPシーンの第一線におけるこうしたサウンドと歌詞のバランスは、ケツメイシの独壇場で、他の追随を許さない。良い歳の取り方をしているなぁと、RYOJIを筆頭にさらに貫禄を増したジャケット写真の4人を見ながらしみじみ思う。

(宮本英夫)

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