MUGENLIFE ALBUM「夢幻百景」ディスクレビュー

夢幻百景

ALBUM

MUGENLIFE

夢幻百景

MUGENLIFE MUSIC RECORDS

2014.07.16 release

<CD>


てづくりの音色に触れる。

 私の父は、アンティーク家具のリペアーを生業としている。彼の職場に足を運んで、その仕事ぶりを眺めたこともある。“アンティーク”の基準というのは、それが作られてから100年以上を経過していること。たくさんの愛情が注がれ、重用されてこなければ、到達のできない年数。そしてまた、父の手によって新しい木や金具が交換され、あるいは新調され、その家具たちは生まれ変わる。自分より何十倍も年月を重ねてきたそれらから香る、新しい木のにおいが私は大好きだった。MUGENLIFEの音に触れたとき、思い出したのはそんな風景。

 MUGENLIFEは、2009年に田中亨(vo、g)と田中芳薫(b、cho)の兄弟により結成され、後にドラム/パーカッション、キーボード、トランペットのメンバーを加えた5人編成となる。2013年にリリースされたシングル「MUGENLIFE 紀行」は、亀田誠治氏に“平成のはっぴいえんどのよう”と高く評価を受けた。現メンバーとなってから初の音源となる今作は、すべての楽器においてほぼマイク収録のみで録音作業を行い、“生音”にこだわって作られた1stミニ・アルバムとなっている。その狙いどおり、音色を聴けばすぐに“人の手によって作られた感触”を感じることができる。日常のありふれた風景を切り取った詞世界、ヒーリング・ミュージックのように、なんの無理もなく自然と耳に染みこんでくるメロディたち。ブラック・ミュージックやカントリーなど、古きよき時代の音楽を土台としながら、この時代に生きる若者の瑞々しいポップ・センスによって構築されたサウンドは、懐かしく、あたたかく、新鮮だ。

 きっと、作り手である田中兄弟は、ゆったりと、真剣に、音楽を愛してきた人なのだろう。そんな人柄が、それこそ、この手に取るようにわかる素晴らしい作品だ。自然な音楽であるが故に、幾人かの耳の上を撫ぜて通り過ぎていくかもしれないが、田中亨の優しくも厚みのある歌声があれば、これからいかようにも更なるオリジナリティを重ね塗っていけるはずだ。願わくば、このままのオーガニックな才能を守りながら、新しい木や金具のような刺激を少しずつ付け足して、長く人々に愛されるようなバンドであってほしい。

(小島双葉)

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