東京カランコロン SINGLE「笑うドッペルゲンガー」ディスクレビュー

笑うドッペルゲンガー

SINGLE

東京カランコロン

笑うドッペルゲンガー

avex trax

2014.07.16 release


爽快な自分攻撃とも言える、素晴らしい“ヘンテコ”ポップ

 “ドッペルゲンガー”とは“自分がもうひとりの自分を見る自己像幻視現象”のこと。この曲では“もしも自分がサラリーマンだったら”というコンセプトでのドッペルゲンガーが歌われている。それも描かれてるのはハッピーなサラリーマンではなく、ルーティンな仕事&女っ気のないプライベート&この先何も夢がない、という不満とストレスまみれのサラリーマン。──が、それを自己反省的に歌わずに、自分を罵倒する勢いでぶちまけているところがいい。つまりは、言ってしまえば、愚痴ソング。だが、容赦ない言葉と適度なユーモアセンスのおかげで、愚痴の湿り気はどこにもない。サビの「つまらねぇんだよ、全てが つまらねぇんだよ、あいつが でもつまらねぇのは、何よりも おれ、おれ、おれです」の怒濤の自分攻撃に至っては、猛暑日に食べる火鍋のごときスカッと感さえある。ナルシスティックな自虐は不愉快だけれど、クールな自虐は笑いながら共感できる、という好例だ。

 またA×S×Eをプロデュースに迎えたアレンジがカオス感満載でかっこいい。ノイジーなエレキの音で始まったが最後、エレキのリフがループする中、緩急付けて様々な音が絡んでは去ってゆく。そこらへんの抜き差しの塩梅が絶妙。そこにいちろー(vo、g)が、ちょっと逆ギレ感のあるボーカルを乗せていくことで、さらにクールな自虐度が増していく。そんな「笑うドッペルゲンガー」の最後のノイズ音を引き受ける形で始まる『「HentekoPop is dead」は、内容的には「笑う~」と対になっている楽曲。バンドをやっている現在の状況を、これまた容赦なくクールに自虐的に歌いのける。この曲もサビの「やめるしかねーよ」「売れるわけねーよ」のフレーズが、なんとも小気味いい。そしてラストはレディオヘッドの「Fake Plastic Trees」をカバー。こちらは男前の涼しげなボーカルとトラックが印象的だ。というわけで、いちろーが3曲ともにメイン・ボーカルをとったアバンギャルドでポップな、素晴らしい“ヘンテコ”感に注目したい3枚目のシングルである。

<概要>
ドッペルゲンガーと言う名称は“二重に歩む者”を意味するドイツ語“Doppelgänger”に由来する。医学の世界では“Autoscopy(自己像幻視)”と呼称する。
江戸時代の日本では同様の現象を“影の病”“影患い”と呼んだ。

ドッペルゲンガーは主に本人になんらかの関わりがある場所に出現することが多く、また、基本的に周囲の人間と会話をしないと言われている。
また、「自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬ」とも言われており、実際に過去の著名人(例:アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーン、日本の小説家・芥川龍之介、ロシア皇帝エカテリーナ2世…等)が自身のドッペルゲンガーを見たという記録も残されている。

しかしこれらの人物は目撃した際、精神的に不安定な状態であったという。よって、ドッペルゲンガーはただの幻覚、もしくは思い込みにすぎないのかもしれない。

<対処法>
もし、自分のドッペルゲンガーと遭遇してしまった場合、とにかくなんでもいいので罵倒すれば良いとされている。

 また、表題曲と対になった内容のカップリング「HentekoPop is dead」はかなり意味深な歌詞ということもあり、MVを制作してもらえなかったため、メンバーが勝手に自主制作でMVを作成。今年10月に建て替えが決定しているエイベックス本社にてiPhoneで撮影されたという。このMVは、大人の事情でテレビなどでのオンエア不可、YouTubeでの公開不可ということで、急遽シングル購入者限定特典のDVDに収録されることになった。

(前原雅子)

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