東京カランコロン – いちろーがメイン・ボーカルとしてフィーチャーされた3曲を収めたシングル「笑うドッペルゲンガー」について、いちろー&せんせいに話を聞く。

東京カランコロン

東京カランコロンが5月に発表したシングル「恋のマシンガン」は、せんせいの女性ボーカルを前面に出したキラっとしたポップ・チューンだった。2ヵ月というスパンでリリースされた新曲「笑うドッペルゲンガー」は、前作とはガラリと雰囲気がチェンジ。ブッといギター・リフがループする、いちろーのフラストレーションを吐き出すようなワイルドなボーカルが全開のダイナミックなロック・チューンとなっている。そしてカップリングの「HentekoPop is dead」はグランジ感満載。さらにはレディオヘッド「Fake Plastic Trees」のカバーも収録されている。自分たちのルーツの90’sロックをしっかりと昇華した、思いっ切り振り切った東京カランコロンが存分に詰まったシングルについて、いちろーとせんせいに話を聞いていこう。

INTERVIEW & TEXT BY  土屋恵介


今年の目標として、お客さんの予想をいい意味で裏切るってテーマがある

──新曲「笑うドッペルゲンガー」は、ギターのリフのループ感、ボーカルの激しさ、リズムも変則に突き進んでいく、かなり振り切ったロック・チューンですね。曲自体、どうやって出来ていったんですか?

いちろー ギターのおいたんがリフを持ってきたところからスタートしたんです。前作「恋のマシンガン」もそうでしたが、“スケールの大きな曲を作りたいね”って話をしている中で、スケール感があるフレーズだったので、みんなでセッションしていろんなことを試して形にしたんです。それをプロデューサーのAxSxEさんに整理してアレンジしてもらった感じですね。

──AxSxEさんには、どのタイミングでプロデュースをお願いしようと思ったんですか。

いちろー 曲が決まってからです。ギター・サウンドが前面に出た曲になるのはわかったので、ギタリストのプロデューサーさんが良いだろうってことで。僕らもAxSxEさんは面識もあって好きだったのでお願いしたんです。僕らのアイデアも出過ぎて収集がつかなくなってたので(笑)、それを整理してもらって完成しましたね。

──後半に、ストリングスのホーリーなパートもありますけど、それも最初からあったんですか?

いちろー アイデアはあったけど、「これいるかな?」って話をしてたんですよ。で、AxSxEさんに渡したら、それを緩急付けて全部組み立ててくれたんです。
せんせい 展開ももともと多かったんですよ。メンバー間では「入れなくていいよね」ってときもあったんですけど、全部入れたほうが意味わからんし、やってる私らも楽しいから入れたいって気持ちになったりもして。で、AxSxEさんに投げたら、全部採用されて戻ってきたんです(笑)。

──(笑)。サビも、曲が進むに連れどんどん濃さが増していく印象がありますね。

いちろー そうですね。実はいろんなパートがあるんですけど、意外とゴチャゴチャにならずにまとまったので、それはAxSxEさんの力が大きいと思いますし、最終的な自分たちの色付けもうまくいったと思ってます。アウトロもいらないかなと思ったけど、AxSxEさんがこれも使っちゃおうって(笑)。前回の蔦谷(好位置)さんのときは、削る感じだったけど、逆に全部盛りな感じになりました(笑)。

──「恋のマシンガン」とのギャップが大きいですが、これも自分らの音ですってドンと出したい想いもあったんですね。

いちろー ありましたね。今年の目標として、お客さんの予想をいい意味で裏切るってテーマがあるので、思い切ってやった感じです。ジャケもPVも曲も、前作の想像を裏切ることができたかなって。

──ボーカルも、歌というよりも、エキセントリックに叫んでる人みたいで(笑)。

いちろー (笑)。最初は普通に歌ったり、せんせいが歌ったりもしたんですけど、どれもピンとこなくて。普通に歌うとカッコいい感じになっちゃうんですよ。最初、エアロスミスやレニー・クラヴィッツっぽいねって話をしてて、いろいろ歌い方を試したんですけど。僕、プリンスをすごい好きなわけじゃないけど、岡村靖幸さんが好きで、シャウトしながら歌うみたいなのをやりたいとは思ってたんです。あと、ただのラップじゃ面白くないし、途中で叫び声を入れたり、「フォー!」とか叫んだり、メチャクチャ英語みたいなのをスタジオでやってたんですよ(笑)。それが面白いってなったので、それに合わせてほかのところも組み立てていったんです。急に歌っぽくなったり、サビはちょっと歌だけどシャウトっぽかったり、いろいろ合わせて組み立てていった感じですね。録りのときはメチャ笑ってたんですけど、仕上がったら意外とハマってて、逆に不思議でした(笑)。

もしそのままサラリーマンやってたらって想像して

──歌のテンションの高さと曲のパワー感がマッチしたんでしょうね。歌詞自体は、つまらない自分、日常のフラストレーションが思いっ切り出てますね。

いちろー これは、自分がもし音楽やってなかったらどんな感じなのかを想像しながら、半分ノンフィクションみたいに書いていったんです。実際、僕もサラリーマンをやってたこともあるので、もしそのままサラリーマンやってたらって想像して。まあ、歌詞の主人公ほどダメなヤツではなかったけど(笑)、半分自分のことでもあるというか。もしもストーリー的な感じですね。

──ダメな主人公だけど、それでも自分に期待してるってところが、前向き感があるし、もがき感もあってリアルだなって。

いちろー 最終的に自分がダメだってわかってるから、前に進もうとするけど、それを実際に行動に移すのかって問題ですよね。自分がダメだって気づけてない人はどうにもならないけど、主人公は気づいてるから、最終的に自分に期待して進んで行くしかないって思う。その感じを書きたかったんです。主人公はフラストレーションが溜まって深刻な状態だけど、それをなるべく派手に書いて派手に歌って、第三者が見たらちょっと笑える歌詞にしたんです。だから、親が初老だとか悲惨なところをあえてゴージャスな音にして、客観的に見ると笑えるものにしたり。そういうすべてを含めて、あとはその人が前に進むしかないってことを描けたかなって。
せんせい この歌詞を見たとき、東京カランコロンとかじゃなく、“いちろーさんがここいる”って思いました。本音が出た、いちろーさんが濃く出てるなって感覚があります。あと、私といちろーさんって人間は、こんなにも違うのかというのもすごくわかりました(笑)。もしかしたら、ファンの人には刺激が強かったかなとも思うけど、でもそれがいちろーさんって人間なので。

──今のタイミングで、こういう気持ちを吐き出す曲を歌いたかった?

いちろー そうですね。楽曲が呼び寄せたものだけど。主人公が叫んでる感じはあきらかに見えたので。今までだと、こういう楽曲に違うテイストの歌詞を乗せて楽しむことが多かったけど、今回は曲に対してストレートに作ったんです。そこでのビックリ感はお客さん的にはあると思いますね。僕も逆にノンフィクションだったら気を遣ったと思うけど、半分フィクションで書いたから思い切ってなんでも書けたのもあるし。

この曲を今出さないで何を出すの? って感じ

──では、AxSxEさんとのレコーディング作業はどうでしたか。

いちろー 個人的に面白かったのは、蔦谷さんとAxSxEさんの制作の雰囲気が両極端に違いすぎて面白かったです。蔦谷さんは理論的な人で、AxSxEさんは超感覚派な人だったので。
せんせい 蔦谷さんとやって、AxSxEさんに決まったときに、いい意味で真反対のものになりそうだなって。蔦谷さんはシンセ、鍵盤の人だけど、AxSxEさんはギターとか楽器の人で。プレイヤーって感じで、録り方を口で説明できないときは自分で弾いたり、自分でスタジオに入って音調整したり。AxSxEさんだからこそ、「笑うドッペルゲンガー」の音のバランス、雰囲気が作れたと思います。想像以上に蔦谷さんの作ってくれた「恋のマシンガン」と全然違うものになったなってムチャクチャ満足してるし、さすがやなって思いました。
いちろー ギターは全部で8~9本とかすごい録りました。ギター・アンプとエフェクターは、AxSxEさんのを借りておいたんが弾いたので、AxSxEサウンドの雰囲気になってますね。

──ギター・ソロはシンセみたいな音になってますね。

いちろー あれはおいたんのアイデアだったんです。普通のソロだとつまらないし、振り切っちゃおうって。
せんせい AxSxEさんとやって、たぶん、おいたんがいちばん楽しかったんじゃないかなって。機材もそうだし、ギターだけで5時間ぶっ続けて録ってたんです。そこまでやってもらえるのは、それだけ自分の音を求めてくれてるってことだから、やり甲斐もあっただろうし楽しかったんじゃないかなって思う。私は打楽器とか叩いたりして、レコーディングするぞってよりも遊びに来ましたってテンションだったんで(笑)。
いちろー スタジオが、なんでも楽器を借りられるところだったんです。チェンバロ、「のど自慢」の鐘の音とかティンパニーとか、かなりいろんな楽器を入れてます。レズリーのロータリースピーカーのオルガンとかもあったし。
せんせい ほんと、いろんな楽器に触れて楽しいって感じでした。

──完成した曲への満足度も高いんじゃないですか?

いちろー 高いですね~。
せんせい この曲を今出さないで何を出すの? って感じです。リリースするのが半分楽しみ半分怖い、すごく勝負に出たぞって気持ちですね。
いちろー 前が5月で、今回が7月ってリリース・スパンが短いから、普通に出したら面白くないなって思ってたんです。それにしても振り切ったヤツが出来たと思うし。反応が怖い半分、楽しみ半分。でもやり切ったから、どうにでもなれって感じはありますね(笑)。

──「笑うドッペルゲンガー」ってタイトルは、どうやって浮かんだんですか。

いちろー さっき言ったように、自分がもし、今みたいに音楽をやってなかったらって考えたときに、今の自分じゃない、もうひとりの自分のストーリーを書こうと思ったんです。“ドッペルゲンガー”って、もうひとりの自分って意味もあるんです。見ると死ぬって怖い話もあるけど、ドッペルゲンガーって言葉をどうしても入れたくて。その上にひと言付けたかったんですよ。みんなで話して、笑うってどうかなって……おいたんが言ったのかな? ジャケットは、フラフラしてるもうひとりの自分は笑ってる、でも本心は違うものを秘めてるって意味があるんです。あと、今までの自分が、ニコニコして優しいってイメージを持たれてて。それは東京カランコロン自体のイメージでもあるんですけど、その仮面を剥ぎたいのもあって、もうひとりの自分が笑うって意味で、この言葉がしっくりきましたね。

──踏み込むと、誰もが持ってる二面性ってことにも通じますし。

いちろー そうですね。ライブに来て僕のMCを聞いてくれてる人にはそんな違和感はないと思うけど、そこまで知らない人はビックリするかなとは思ってます。元々シニカルなものは好きなんですけど、今まで東京カランコロンで書くタイミングがなかったんです。ここまでハッピーじゃないテイストの曲自体がなかったので、今回それができたなって。

──PVはどんな感じになってるんですか。

いちろー ジャケットの仮面は、ほんとに仮面を作ったんです。それをガッツリ使ったPVになってるんですよ。関和亮さんに、ジャケもPVも撮ってもらったのでリンクしてます。曲の世界観がより伝わるし、謎解きみたいに楽しんでもらえたらと思いますね。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人