Czecho No Republic ALBUM「MANTLE」ディスクレビュー

MANTLE

ALBUM

Czecho No Republic

MANTLE

日本コロムビア

2014.07.16 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


アメイジングな最高傑作に見る、さらなる可能性

 チェコはいつの間にかとても不思議なバンドになった。始まりこそ、ザ・ストロークスやヴァンパイア・ウィークエンドからの影響を、ストレートに鳴らすポップ・バンドだったが、もともと武井優心はバンドマン的なメンタリティを持ちつつも、ソング・ライティングに関してはかなり職人的な志向の持ち主で、欧米の大所帯バンドが生み出す緻密なサウンドスケープに対する憧れも持っていた。実際、現在の5人編成になってからは、その武井が本来持っていた理想を、本人の技術の向上と、メンバーのプレイヤビリティによって具現化できるようになり、メジャー・デビュー作『NEVERLAND』での経験豊かなプロデューサー陣との共同作業を経て、最近のライブにおける彼らは“高性能ポップ集団”と化していたのだった。

 そして、全曲新曲のセルフ・プロデュース作である『MANTLE』は、そんな現在のチェコの姿が克明に刻まれた、素晴らしい作品になっている。いやあ、これはバッチリでしょう。ギター・ロックの疾走感と、大所帯バンドのスケール感を共存させた「Amazing Parade」と「No Way」という冒頭2曲は、まさに現在の彼らを象徴する曲であり、特に、キャッチーなメロディはもちろん、エレクトロ・ポップ寄りのサウンド・デザインにおいてもさらなる洗練が感じられるリード・トラック「No Way」は、見事なキラー・チューンだ。また、ダフト・パンクの「Get Lucky」にも通じるテイストの「Clap Your Hands」があれば、チェコ第2のソング・ライターである八木類は、持ち味のキュートなポップ・ソング「Field Poppy」をタカハシマイに歌わせる一方で、本人はこれまでのイメージを覆す性急なポスト・パンク「JOB!」で荒々しいボーカルを聴かせる。また、個人的にはソング・ライティングやアレンジ面の向上の一方で、これまで歌詞にはやや物足りなさを感じる部分もあったのだが、消えることのない疎外感をさらけ出した上で、よく見りゃ皆 同じ顔”と、ディープな部分でのオーディエンスとの共有を歌う「Amazing Parade」と、メロディに対する信頼をストレートに綴った、こちらも名曲の「Melody」という2曲からは、武井が音楽に向かう根本的なエモーションが感じられ、とてもグッと来る。

 さて、ここで気になるのが“MANTLE”という不思議な響きのタイトルだ。ウィキペディアをそのまま引用すると、“惑星や衛星などの内部構造で、核(コア)の外側にある層”とのこと。このタイトルをつけた意味を考えてみると、まずひとつに、本作の持つサイケデリックな側面を象徴した言葉なのではないかと考えられる。「Arabia」や「Maridabu」など、ところどころでエキゾチックな旋律が出てきたり、ラストはサイケデリック期のザ・ビートルズばりのプログレ・ポップ「2014年宇宙の旅」で締め括られていたりと、これまで彼らの音楽はもう少し漠然としたユートピアを描いていたが、本作ではより具体的で、なんとも摩訶不思議な、宇宙規模の世界が広がっている。“MANTLE”という言葉は、そんなムードを表しているように思うのだ。

 そして、もうひとつ、これはやや深読みかもしれないが、もしかしたら“自分たちはシーンの中心にはいない”という認識を示したものなのかもしれない。メジャー・デビューを果たし、フェスの常連バンドになったものの、チェコは今流行りのダンサブルなビートとテンションの高いステージングでオーディエンスをガツガツ盛り上げるタイプではないし(その要素を持ってはいるが)、一方では、そのポップな音楽性ゆえに、コアな音楽ファンからは軽視されてしまう危険性も持っている。その板挟みの状態、漠然とした違和感のようなものを、“MANTLE”という言葉で表したというのは、考え過ぎだろうか。

 しかし、言うまでもなく、“だからこそ”Czecho No Republicというバンドは素晴らしい。言ってみれば、彼らはいわゆるJ-ROCK的なバンド・シーンと、トクマルシューゴやceroといった、インディーを基盤に良質な音楽を作り続けるミュージシャンたち、そのミッシングリンクとなり得る稀有な存在なのだ。もう少し個人的なことを言わせてもらえば、僕は以前から“突き抜けたポップ・センスと実験精神を兼ね備えたバンド”という意味で、スーパー・ファーリー・アニマルズのようなバンドが日本から現れないものかとずっと思っていたのだが、チェコにこそその願いを託していいのではないかと、このアルバムを聴き終えた今では思っている。後半やや余計なことを書いているような気もするが、とにかく『MANTLE』という作品はそれだけの可能性を持った作品であるということが伝わってくれれば、とてもうれしい。

(金子厚武)

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