ボールズ – ボールズ(元ミラーマン)が、メジャー1stアルバム『スポットライト』をリリース。フロントマン・山本のまっすぐな思いを聞いた。

ボールズ

ボールズ(元ミラーマン)のメジャー・デビュー・アルバム『スポットライト』を聴いて、率直に、こういうバンドにこそ売れてほしいと思った。5人のメンバーで構築するUSインディ・ポップと共振するローファイなサウンドスケープが“過不足ない音像の隙間”へリスナーを誘う。ナイアガラレーベルに端を発する国産シティ・ポップやソウル・ミュージックから得た豊潤なリリシズムとメロウネスに満ちた日本語の歌は、紋切り型とは無縁の瑞々しい表現力を伴っている。ボールズの楽曲が、数えきれないほどのリスナーを照らす“僕らの歌”になるために。インタビューに応じてくれたフロントマンの山本剛義は、音楽に対してとても誠実でチャーミングなやつだった。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一

 

男らしいバンドでありたい

──ライブを観て、音源を聴いて、率直にこういうバンドに売れてもらわないとなって思った。

うれしいですね。売れたいです、切実に。僕、青山にマンションを買うのが目標なんで。あと、地元を外車とかで乗り回したいタイプの人間なんで。

──いいと思う。そうなってもずっとこういう音楽をやれてたら最高だと思う。

うん、絶対にこれで勝負するべきですよね。僕らは絶対に変なことはしないです。カッコ悪い音楽はやらないです。

──山本くんにとってカッコ悪い音楽って?

新しいことをやって、何も言わずして音楽だけでそれを感じさせることがポップ・ミュージックの奥深さであり、摩訶不思議な部分やと思うんですね。だから、僕はリスナーに音楽のルーツを辿れとか言わないです。歌でそこを感じさせたい。男らしいバンドでありたいですね。なんかね、曲を聴いて爽やかでかわいいみたいなイメージで語られることがあるんですけど、思い思いに聴いてほしいです。

──でも、俺は頑ななバンドだと思ったけどね。聴き心地は爽やかさもあるけど、その裏側に頑なにグッド・ミュージックを鳴らしてやろうみたいな強い執念を感じました。

そうなんです。ライブを観てもらえたらそう思ってもらえるはずなんですけど。

──音源を聴いてもそう思ったけど。

ホンマですか? ホッとしました。よかった。

──日本語で表現するポップ・ミュージックとしてとても独立した存在感があると思うんですよ。いろんなルーツや影響が見えるし、懐かしさも覚えたりするんだけど、フレッシュな普遍性があって。既存のシーンと交じり合わなくても、枠組みのなかで語られなくてもいいっていう、幸福な離れ小島みたいなバンドだなと思って。今、こういう音楽を求めてる人は多いと思います。

はい、うれしいです。『ニューシネマ』(2013年10月リリースの1stミニ・アルバム)を自主制作でリリースして、途中からユニバーサルミュージックとかスペースシャワーネットワークさんが宣伝してくれてさらに広まったんですけど。まず初めにタワーレコード渋谷店の古田さんっていうバイヤーの方がすごく推してくれて。

──古田さん、Twitterとかでもずっと推してたもんね。

そうなんです。あの人のおかげですごく広まったんで。そこが転機になりました。大きな媒体とかに取り上げられなくても、音源を気に入ってくれて押し出してくれる人がいたら、ちゃんと届くんやなって思って。ただ、『ニューシネマ』に関しては、お客さんの目線に立つという部分において今回の『スポットライト』よりはオナニー感があったと思っていて。それを踏まえて『スポットライト』の制作に入ったので。『スポットライト』の反応を見るまではすごく怖いです。全然売れんかったらどうしようって思います。

──瞬間的な反応がどれだけあるのかわからないけど、触れてもらえばしっかり届くと思う。その機会をどれだけ作るかだよね。

そうですよね。これがメジャーで1枚目なんで。少しでも聴いてくれた人、一人ひとりの密度に濃く伝わってほしいなと思っていて。だから、その機会を増やすためにいっぱいアルバムを出したくて。短いスパンで。次のアルバムに向けた準備ももうやってるんですよ。とにかくいっぱい曲を作っていて。

──逆に言えばそれだけ淀みなく曲ができるってことですよね。

曲が作れない時期はないです。今まで止まったことがなくて。歌詞は書きたいことのモードが変わってきてるんで、あえて今は書いてないんですけど。楽曲制作自体は止まらないです。僕ら、ライブはライブで好きなんですけど、みんな曲作りのほうが好きで。

2年間のチャンスをもらえたなら、この2年間で結果を残さないと。

──ステージの感じを見たらライブも好きそうだけど。

ギターのふたりがめちゃめちゃライブが好きで。僕はすごく神経質なんで。例えば朝起きると、どうしても声がガラッとしてるじゃないですか。それだけで“今日、これアカンのちゃうかな”ってネガティブに考えてしまうんですよ。僕、そもそもはめちゃめちゃネガティブで。

──自分最強、とも思ってそうだけど(笑)。

ステージに立ったら大丈夫なんです。なんですけど、ライブが始まる直前までウジウジ言ってしまうんですよ。その日、自分のなかで課題にしていたことがクリアできようが、物販が売れようが、アカンところって絶対あるじゃないですか。

──そりゃそうでしょ。それが次に繋がるわけだし。

でも、そこを1個考えてすごく落ち込むんです、毎回。ライブって良くも悪くも1回ぽっきりで。しっかり自分の伝えたいこと、感じてほしいことを体現しないとダメなんで。でも、最近はちょっとずつ前のライブよりもいい意味でフラットにやれるようになってきていて。今日こういうライブになったということは、こういうライブをするべきやったんやなって思えるように。引っかかる部分があっても、次へ次へって思えるようになったというか。

──追い風が吹いてるのを感じてるとは思うけど、俯瞰で自分自身やバンドのことを見てますよね。

気が気じゃないんですよ。メジャー・デビューってすごく華やかに聞こえるけど、“僕らは契約社員やな”って言っていて。まず2年間の契約期間があるけど、そこに対してメンバーは誰も浮かれてなくて。2年間のチャンスをもらえたなら、この2年間で結果を残さないと。周りがどれだけサポートしてくれても、やっぱりバンドがよくないとどうにもならないんで。『スポットライト』はそういうことも踏まえてこの8曲を揃えたので。

──なんでこういう音楽ができるんだと自己分析してますか?

いちばんスタンダードな作り方は阪口(晋作/b)が最初にオケを作って、僕がそこにメロディと歌詞を乗せるんですけど。僕は全部歌で決まると思っていて。だから阪口には好きなようにオケを作ってもらいたいんです。全部、歌でコントロールできると思ってるから。僕はそこにすごく責任感をもっていて。歌でコントロールできるからこそオケの良さを活かせると思ってるし。

──阪口くんはどれくらいオケを作り込むんですか?

マックス完成度高いですよ。ギター、ベース、ドラム全部入ってる。イントロからケツまでカラオケで送ってきます。

──細かいフレーズとかも入っていて?

入ってます。それをみんなでアレンジしていくなかで変えていくんですけど。問題はたまにオケをとるのか歌をとるのかというせめぎ合いがあって。でも、その葛藤が曲の新しさ、面白さになると思うんですよ。次のアルバムからはもっとフレキシブルな作り方をしようと思っていて。

──山本くんと阪口くんの音楽的なルーツは重なってる部分が多いんですか?

多いですね。でも、僕より阪口のほうがいろいろ聴くんじゃないかな。阪口はミニマルなものが好きで、打ち込みの音楽ばっかり聴いてますね。僕はサイケやポップスが好きなんですね。大きく被ってるのはペイヴメントとか’90年代のUSものとか。

──やっぱりローファイなインディ・ポップというのはひとつ大きなキーワードではありますよね。

そうそう。でも、僕がいちばん好きなのはサイケやポップスなんですよね。いろんなバンドがよく“めっちゃ音楽聴いてます”、“メンバーみんな聴いてる音楽はバラバラでそれが合わさって新しい僕たちだけの音になってます”みたいなこと言うじゃないですか。でも、別にみんな新しい音楽になってないし、人と違うことなんか当然なことで。そこは主張するべきことではないと思っていて。でも、僕らの良さは何かって考えたときに、やっぱり嫌いになる音楽とか、ダサいと思うところがメンバー全員一緒っていうところなんですよ。

──具体的に言葉にできる?

例えばシンプルに“このギター・ソロはダサい”とか、そういうことでもあるんですけど。手数が異常に多かったり。みんな抜きの美学をもってると思うんですよね。

──ああ、その抜きの話は俺もしたいと思ってたことで。ボールズのサウンドって隙間があるんだけど、これで十分というか。ここに何か別の楽器を足しても面白くなるとは思うけど、それをしたらこの過不足ない感じがなくなってしまうと思うんですよね。

でも、『スポットライト』はギターがちょっと遠慮しすぎたなとも思っていて。それがいい意味でも『ニューシネマ』よりバンドっぽさが削られた作品だと思うんですよ。

──バンドっぽさというより、ロック・バンドっぽさというか。

そうそう。今回はちょっとソウルっぽいというか。

──それだけ歌に寄ってるし。

そうですね。歌は全曲サビを意識して作ったので。

──メロディ・センスも素晴らしいと思う。

ありがとうございます。でも、次のアルバムに関してはオケをもっとバンドっぽくしたいから、フレーズも弾き倒して、弾き倒して、弾き倒してそのなかからしっかり選ぶという作業をしたくて。

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