
MINI ALBUM
LAMP IN TERREN
PORTAL HEART
JACKMAN RECORDS
2014.06.25 release
<CD>
LAMP IN TERRENの可能性
’12年9月に自主制作音源『voyage』をリリース。昨年7月に初の自主企画ワンマン・ライブを敢行。その後いくつものロック・フェスに出演、コンテストでもグランプリを獲得、と、加速する勢いで人気を獲得している長崎出身の3ピース・バンドの初の全国流通盤が届いた。……と、これまでの経歴だけ紹介すると、ここ数年、いや、’00年代半ばあたりから特に顕著になったJロック系バンドの出世街道そのまま、という印象を受ける。実際にこの3人組も、個人的にまだ生のライブを観たことはないが、ソツのない確かな演奏力と、聴き手の抑揚を煽るようなAメロ~サビという展開が多くの曲で徹底されていて、恐らく大きなフェスのステージが似合うダイナミックなバンドなのだろうことも想像がつく。フェスが中心に回転しているようなところもある今のシーンの中で輝きを放てるバンドであることは間違いないだろう。
しかしながら、本作での5曲を繰り返し耳にすると、そうした今の時代に似合ったバンドという側面以上の可能性を伝えてくれる。“例えば 目を覚ましたその朝に 僕が僕じゃなくても不思議じゃないだろう”というフレーズで始まる1曲目「portrait」は、激しいギター・カッティングを軸に疾走する演奏など確かに一聴する限りでは’00年代後半~2010年代の主流とも思えるものだ。しかしながら、一つひとつの音節にていねいに言葉を乗せ、それをわかりやすい発音と素直な発声に基づくボーカルとメロディの強さには、胡散臭い時代性には決して巻き込まれないだろう凛々しさがある。変則的なリズムがシャープなギター・リフによって切り刻まれる「Sleep Heroism」のような曲でも、歌と旋律の持つその強さ逞しさが、激しい展開の中でいつの間にか主役となっていくし、ミドル・テンポのソングオリエンテッドな「メトロポリス」に至っては、すべてのパートがしっかりと歌に寄り添おうとしていることが伝わってくるだろう。これからどんなアレンジが施されようとも、どんなに周囲がこのバンドを時代の寵児に担ぎ出そうとしても、この歌とメロディがあれば流されることはない。きっと振り払っていける。そう思えるような曲であることは、もしかすると、フェスやステージでもみくちゃになりながらでは気づかないかもしれない。少しばかり時間がかかるかもしれない。だが、“その時”が来ればきっとこのバンドは我々が思っている以上に大きな存在になっていることだろう。
(岡村詩野)