fox capture plan ALBUM「WALL」ディスクレビュー

WALL

ALBUM

fox capture plan

WALL

2014.07.09 release


ジャズとロックの壁をぶち破れ

 昨年12月発売の2ndアルバム『BRIDGE』が「第6回CDショップ大賞2014 ジャズ部門賞」「JAZZ JAPAN AWARD 2013 アルバム・オブ・ザ・イヤーニュー・スター部門」を受賞するなど、勢いに乗るピアノ・トリオ“fox capture plan”が、わずか半年足らずで3rdアルバム『WALL』を発表。それぞれ別のバンドでも活動する岸本亮(ピアノ/JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(ベース/Immigrant’s Bossa Band)、井上司(ドラムス/nhhmbase)の3人の紡ぎ出すサウンドは、ジャズやロックといったジャンルの壁をぶち破りながら、さらに濃密に、さらにアグレッシブに進化している。

 ダイナミックに駆け抜けるリード・トラック「疾走する閃光」。重厚な演奏の奥にあるセンチメンタルなメロディ・ラインが際立つ「Elementary Stream」から、静かなバラードが大きな盛り上がりをみせてアルバムを締めくくる「the begining of the myth ep.II」まで、練り上げられた楽曲群は、ひとつの曲の中にいくつもの顔を覗かせ、ひと筋縄ではいかない。聴けば聴くほど新たな発見がある。
 インストゥルメンタルでありながら、けっして飽きさせることがないのは、岸本、カワイというふたりの名コンポーザーがいるからこそだ。それぞれピアニストらしい、ベーシストらしい曲を書くわけではなく、岸本の曲ではベースが生き生きと躍動しているし、カワイの曲ではピアノの美しい旋律が耳に残る。競うように“fox capture planらしい”曲を紡ぎ出している。そしてアイデア満載のアレンジ力と高い演奏能力が、それらの楽曲に命を吹き込んでいるのだ。

 ビョークの「Hyperballad」、オアシスの「Wonderwall」、マッシブ・アタックの「Teardrop」と、1990年代のロックの名曲を次々とカバーしてきた彼らは、今回はレディオヘッドの名盤『OK コンピューター』に収録されている「Paranoid Android」に挑み、ドラマチックな展開を持つこの大作を見事に料理してみせた。
 もう1曲、このアルバムのハイライトのひとつがYMO「tong poo(東風)」のカバーだ。かつてのテクノポップの古典が、痛快無比な高速チューンになって蘇った。YMOを知らない世代のファンならオリジナル曲と勘違いするのではないかと思えるほど、見事に彼ららしい音に磨き上げられている。バンドが成長していく間にいくつかのエポックがあるとするなら、このカバー曲ものちのち語り継がれることになるのではないか、そう思わせるほどの衝撃がある。

 8月には彼らにとって初の海外公演となる香港&中国ツアー(5都市)を敢行、10月からは全国ツアーも待っている。7月21日には所属レーベルである“Playwright”のイベント「Party the Playwright vol.2」(新宿LOFT)にも出演する。
 彼らの魅力はライブにこそある。3人のうち誰ひとり欠けても成立しない強靭なバンドサウンドは、聴くものをひたすら圧倒する。緻密に構成された楽曲をときとしてぶっ壊していく即興性。爆裂ドラムを核にして高い熱量でぐいぐいと彼らの世界に引きずり込んでいく、そのライブパフォーマンスは必見だ。

 新しくてカッコいい音に触れてみたい。
 そんな若いロックファン、ジャズファンのためのアルバム、それが『WALL』だ。

(岡村尚正)

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