LACCO TOWER ALBUM「狂想演奏家」ディスクレビュー

狂想演奏家

ALBUM

LACCO TOWER

狂想演奏家

I Rocks

2014.07.02 release

<CD>


“狂想演奏家”――その言葉が意味するもの

自らを“狂想演奏家”と称する5人組ロック・バンド、LACCO TOWER(ラッコタワー)が、ミニ・アルバム『続・短編傷説』以来約1年ぶりにリリースしたフル・アルバム『狂想演奏家』。ラウドなバンド・サウンドを基調としつつも、真一ジェット(key)によるバリエーション豊かなトラックメイク、英詞を用いることなく徹底して日本語こだわった松川ケイスケ(vo)の叙情的なリリックなど、メンバーの個性を高密度に凝縮したサウンドが特徴的な彼らの音楽は、本作においてひとつの頂点に達したようだ。

流麗なキーボードの音色から4つ打ちバンド・サウンドへと転じて行くインスト曲「狂想序曲」でドラマチックに幕を開ける本作。どこか歌謡曲的なテイストを感じさせる情感溢れるメロディが印象的な「恋人」、ライブで盛り上がること必至の畳み掛けるような勢いを持ちつつも、間奏時には突如ジャジーな展開をみせる「奇妙奇天烈摩訶不思議」、真一ジェットのアナログシンセが炸裂するポップ・チューン「少女」など、静から動へ、あるいは美しさから激しさへと大胆に転じてゆくその音楽は、様々な要素が混在するという意味では“ミクスチャー”的ではある。しかし、結果的に、いわゆるジャンルとしての“ミクスチャー”とはまったく異なった──エクストリームな歌謡曲とも言うべきエモーショナルなサウンドに仕上がっているところが、このバンドの何よりも面白いところである。

それにしても、“狂想演奏家”というのは、一体何を意味しているのだろうか。狂おしいほどの情熱を綴ったリック、あるいはその圧倒的なバンド・サウンドが生み出すフロアの狂騒。無論、そこには様々な意味やニュアンスが込められているのだろう。だが、こうも考えられるのではないだろうか。昨今のシーンにおける流行り廃りに目配せすることなく、メンバー5人が持ち寄るものを、ただひたすら高密度な形で濃縮して行った結果、ジャンルを超えた場所に辿り着いてしまった、狂想の演奏家たち。自らのアイデンティティとも言えるその言葉を堂々タイトルに掲げた本作は、彼らにとっては、ある意味セルフ・タイトルに近い一枚であり、ひとつの到達点となるような自信作なのだろう。

つい先ごろには、メンバーの多くの出身地である群馬県にて、自らが主宰するロック・フェス“I ROCKS 2014”を開催するなど、2002年の結成以来、長年にわたって醸成されたサウンドの“メジャー感”とは裏腹に、メジャー・レーベルとは一線を画した場所で、D.I.Y.な活動を展開し続けているLACCO TOWER(ちなみに本作は、ベースの塩﨑啓示が代表を務める自身のレーベル“I Rocks”からのリリースとなっている)。昨今のシーンにおける、ロック・バンドのひとつの“在り方”という意味でも、興味深いバンドのひとつだと思う。

(麦倉正樹)

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