それでも世界が続くなら – もう君はいい人じゃなくていい——メジャー2ndアルバムとなる今作のタイトルだ。今回も篠塚がいろいろな話をしてくれた。彼の思いが伝わることを願う。

それでも世界が続くなら

昨年9月にアルバム『僕は君に武器を渡したい』でメジャー・デビューを果たした“それでも世界が続くなら”。その後、ミニ・アルバム『明日は君に会いに行くから』(’14年1月リリース)、シングル「僕らのミュージック」(’14年5月リリース)と続けざまに作品を発表してきた彼らが、2ndフル・アルバム『もう君はいい人じゃなくていい』を完成させた。音楽とは何か? 生きるとはどういうことか? をどこまでも真摯に追い求め、それを言葉とメロディに昇華し続ける篠塚将行(vo、g)。激しくも美しいノイズ・ギター、ダイナミズムを増したサウンドとともに奏でられる歌に、ぜひ耳を傾けてほしい。そこには、負けることを余儀なくされた人間に一筋の光を当てる、希望という名の音楽が存在しているはずだ。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

 

10組いれば10通りの音楽の進め方があるはず

──まず、6月28日に終わったばかりの全国ツアー(“僕らを置き去りにした音楽と再会する日”)について聞かせてください。今回のツアー、手ごたえはどうでした?  (※当日のライブ・レポートはこちら)

 

うーん、なんでしょうね……。もちろん、やって良かったなとは思ってますけどね。やって良かったですけど、とにかく未熟だなと思いました。本番がすべてなんですけど、ずっと試行錯誤を繰り返してましたね。だから、一つひとつのライブが全然違うとも言えるし。

──それは演奏面のことで?

演奏に限ったことではないですね。音楽をやってる人がこんなこと言っちゃダメですけど、演奏のことだけじゃなくて——あの、どの公演もそうなんですけど、体調が悪くて倒れちゃうお客さんが結構いたんですよ。それはインディーズのときからそうなんですよね。僕らのライブって、ライブハウスやフェスに通ってる人はあんまりいなくて、“初めてライブハウスに来ました”みたいな方が多いんですよ。それはすごく光栄なことなんですけど、ライブハウスの環境ってあんまり良くないじゃないですか。

──まあ、空気は良くないですよね。空調が効かなかったり……。

音もすごく反射しますからね。基本的に立ちっぱなしだし、慣れてない人にはキツイんですよ。僕らやスタッフを含めて、ライブを作る側の人間が、そのことをどこまで配慮してたのかな? っていうのもあって。最初はたぶん、そこまで考えられてなかったと思うんですよね。だからそのあと、会場に椅子を出したり……。だけど、それはそれでちょっと違うんですよね。せっかくライブに来たのに、家で動画を観てるのと同じというか、ライブ特有の雰囲気が損なわれているような気もして。

──なるほどね。

そのあと、“前のほうは椅子、後ろのほうはスタンディング“という形のライブをやったこともあったし、ライブの途中で床に座ってもらったこともあったし。既存のライブの形に合わせるんじゃなくて、必要に応じて作ったほうがいいんじゃないかなっていう。

──確かにそれでも世界が続くならのライブは、曲を伝えるためには何がいちばん大事か? ということを1から考えながら作ってる感じがしますね。

そうなんですよ。イベンターの方とか、ほかの媒体の方にも同じようなことを言ってくれる人がいて。人間として付き合えてる人は一様にそう言ってくれるし、だったら僕としても“やっていいんだったら、1から作りたいです”と思えるというか。今言った話(椅子席、スタンディングを含めた、観客のケア)はほんの一例ですからね。セットリストとか、俗にMCと言われてるものとか、照明とか。ライブの在り方とか、そういうことも全部含んでいるので。

──アンコールもやらないし。

はい。そうやって1から考えることって、すげえ大事だと思うんですよ。10組いれば10通りのデビューの仕方があるし、10組いれば10通りの音楽の進め方があるはずじゃないですか。それは音楽だけじゃなくて、人間もそうですよね。それぞれの生き方があるわけだから。当たり前のように“当然、こっちに行くよね”とか“これはやっておこう”みたいに——まともな話し合いもなく——進んでしまうのって、すごく不誠実だと思うんです。そこをおざなりにして、何が出来るの? とも思うし。実際、そういう話し合いがありましたからね、今回のツアー中も。前にも言いましたけど、僕がこのバンドをやる前に考えていたのは“なんで音楽を信じられなくなったんだろう?”ってことなんですよ。当たり前のように音楽を信じられていたら、こんな仰々しい名前のバンドなんかやってないですよ。でも、もう1回、(音楽を)真摯にやらなくちゃいけないんじゃないの? って思ったんで。

ただ好かれるために(音楽を)やってるわけじゃない

──そういうスタンスは“僕らを置き去りにした音楽と再会する日”というツアー・タイトルにもはっきり表れていると思います。そして2ndフル・アルバム『もう君はいい人じゃなくていい』ですが。

はい。

──メジャー・デビュー以降、かなり早いペースでリリースが続いていて。今回のアルバムは一体、いつ作ってたんですか?

いつ作ったかわからないくらい、ずっと作ってましたね(笑)。レコード会社の人たちは“この時期は作曲期間”って決めたがるんですけど、僕は制作期間もクソもなくて、ずっと作ってるんです。あとは“曲がたまってきたから録ろう”っていうだけで。ツアー中は曲を作る時間がなくて、それは僕にとって問題だったんですけどね。(作詞・作曲は)ライフワークなので。

──逆に言うと、曲作りの期間は必要ないってことですよね。

まとまった時期に曲を作ると、全部一緒になっちゃういますからね。僕の作り方は創作の度合いが低いというか、現実に起きたこと、考えたことを曲にしてるだけなんで。1日に2回日記を書いたとしても、たぶん同じ内容になっちゃうじゃないですか。それと同じです。

──じゃあ、ブログも書けないですよねぇ。

前に書いてたことがあるんですけど、そうすると曲ができなくなるんですよ。僕はブログよりも曲のほうが好きですからね(笑)。マネージャーは「(ブログを)やったほうがいい」って言うんだけど。だから、ホントに日記みたいなものですよ。「メッセージ性がある」とか言われますけど、僕はそんなつもりないですし。言いたいことはあるかもしれないけど、ゴリ押しはしないので。あとはもう、本気で生活するしかないですよね。いろんな人と出会って、人間的に成長するしかないです。

──そういう姿勢で書いた曲に題名を付けるって、どういう感覚なんですか?

あ、そういう聞かれ方は初めてですね。僕ね、本質的には名前なんかいらないと思ってるんです。よく題名のないアルバムとかバンドの名前をそのままタイトルにしたアルバムがありますけど——(ザ・ビートルズの)『ホワイトアルバム』とか——そういう感じとも違っていて。バンドの名前も必要ないと思ってたんですよ。だから、(バンド名が)文章なんですけどね。最近は文章のバンド名が流行ってらっしゃるみたいで、“今風なバンド”みたいになってますけど。

──(笑)。そういえばこの前“日本語の変わったバンド名が増えてるから、そのネタで原稿書いてください”っていう依頼がありましたよ。うまく書けそうにないから、断っちゃったんですけど。

面白いですね、それ(笑)。まあ、まわりのバンドと口裏を合わせて名前を決めたわけじゃないですからね。僕らの場合はもっと単純で、“それでも・世界が・続くなら”っていうふうに分けられるじゃないですか。それが“BLANKEY JET CITY”みたいでいいなって思ったんですよね。メンバーもみんな、BLANKEY JET CITYが好きだし。

──良い理由だと思います。

あとね、僕は以前、ドイツオレンジっていうバンドをやっていて。その頃から知ってくれてる人にとって僕は“ドイツオレンジの人”だし、(新しいバンドを組むときに)違う固有名を考えるっていう発想がなかったんですよね。ドイツオレンジを組んだとき、生まれた初めて友だちができたんですよ、僕は。そのバンドが終わったしまうときは音楽に裏切られた気持ちになったし、友だちにも嫌な思いをさせただろうし……。でも、街に出ればうれしそうにしてる人がいて、幸せだと感じている人もいて、“なんだろう、これ?”って思ったんですよね。俺は音楽を続けられないかもしれないのに、それでも世界は続いていくんだなって。そこから“だったら、もう1回バンドをやろう”って思ったんですよね。だから、これはバンドの名前ではないんです。ただの文章ですよ。

──アルバム・タイトルの“もう君はいい人じゃなくていい”についてはどうですか? このCDを手に取った人は“自分に対して言われている”と感じると思うんですが。

あ、それはうれしいです。実際、そういうふうに言ってますからね。歌の中でも“君”とか言ってますけど、それはモデルの人とかストーリーの中に出てくる人のことではなくて、自分に関係しているすべての人に向かって言ってるんですよ。自分の人間関係って、音楽の側にいる人たちだけなんですよね。取材してくれるライターの方、レコード会社の人、ライブの照明さんやPAの方、もちろん音楽のファンの人たちもそうだし。そういう人たちに向けて——要は自分以外の全員ですよね——全力でやってるので。でも、アルバムのタイトルはただの大喜利ですよ。オチのない大喜利。“それでも世界が続くなら”の続きの文章を考えてるだけというか。

──でも、強い意味が込められてますよね。

うーん……。まず、ただ好かれるために(音楽を)やってるわけじゃない、ということですよね。人に好かれるために音楽が存在するんだったら、なくなっていいと思うし。あとね、こうやって文章の続きを書き続けていくなかで、いつか取り戻せたらいいなと思ってるんですよね。

──取り戻す?

“それでも世界が続くなら”のあとが“最高!”みたいになったらいいなって。たぶん、そんなことにはならないと思いますけど……。だからね、今回のアルバムのタイトルも途中経過なんですよ。まだまだ途中だし、未熟だけど、今、名前を付けるとしたら……ということでしかないというか。ただ、“もう君はいい人じゃなくていい”っていう言葉を考えたときは、正直、ガッカリしましたけどね。

──え、どうして?

あんまり変わってねえんだな、と思って。自分は相変わらずなんだって再確認したというか。もっと正確に言うと、恥ずかしかったんですよ。だって、そのまんまじゃないですか。

──まあ、すごく率直ですよね。

そうですよね。俺、自分がホントに思ってることを言おうとすると、涙が出そうになるんですよ。そういう気恥ずかしさに似てるところもあって。こういうタイトルを付けなくちゃいけないほど、俺は必死になってるんだなっていう……。“あ、そうですね”とか“確かにそうかもしれませんね”みたいなクールな感じではなくて、暑苦しいほど本気になってしまってるんですよ。それだけ切羽詰ってたんだと思いますけどね。

──いいタイトルだと思いますけどね。さっき篠君が言った「好かれるために音楽をやってるんじゃない」という話とまったく同じで、他人から“いい人”と思われるために生きてるわけじゃないから。

うん。僕自身、これでハッキリと覚悟が決められた気もしてるんですよ。自分が何をやったらいいのかも、わかったというか……。僕と、僕の目の前にいる人が、昨日よりもちょっとマシになれるっていう。それならできるかもしれないなと思ったんですよね。自分にできるのはその程度というか、全然大したことではないんだけど。“大した音楽”なんて、どこにもないんだけどね(笑)。

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