SHISHAMO SINGLE「君と夏フェス」ディスクレビュー

君と夏フェス

SINGLE

SHISHAMO

君と夏フェス

GOOD CREATORS RECORDS

2014.07.02 release

<CD>


SHISHAMOの音楽と花とゆめと。

 花とゆめ感。彼女たちの音楽を聴いたときの感覚は、白泉社発行の“花とゆめコミックス”の読後感に似ている。少女コミックに疎い男性読者には申し訳ないニッチな表現だが、完全無欠ではない主人公のいじらしさや、どうしようもなく爽やかなときめき、現実にギリギリ隣接しているファンタジックな世界観、総合するとその表現がしっくりきてしまう。“フラワーコミックス”や“りぼんマスコットコミックス”と違うのは、そこにちょっぴり加えられた毒々しさのエッセンスだろうか。

 表題曲である「君と夏フェス」は、夏にうってつけの浮かれたギター・リフから始まるロック・ナンバー。フェスで好きな人にかわいく思われたい気持ちと、大好きなロック・スターが登場したときの抑えられない興奮との葛藤を描いた、実にキュートな1曲だ。「彼女の日曜日」では、食費を切り詰めてでも彼氏に好かれようと買い物に勤しむ一人暮らしの女の子の日常を歌っており、“脇役”にはクラスメイトのヒロインに嫉妬する女の子と、卒業式での1シーンが描かれている。

 SHISHAMOの音楽は、最後の一音が鳴り終わるまでその結末が読めないのが面白い。そういった意味でも、やはり彼女たちの綴る歌は非常に物語的だし、決してベタベタのハッピーエンドに着地させるとも限らないところが絶妙に生々しく、今作の3曲だけをとってみても、異なる主人公のパーソナリティをシッカリと描き分けているところには、やはり“花とゆめ感”を感じる。筆致はどれもラブリーでありながら“衝動”“葛藤”“愛着”“執着”“妬み”など、愛らしい少女の心に底流する毒々しさを描いている、そのところも。ほんわかとしたバンドのテンションからは想像もつかないほどの冷静な着眼点、それはSHISHAMOの持つ唯一無二の無敵な武器だと思う。

 ストーリーにばかりフォーカスを当ててしまったが、もちろん相変わらず宮崎朝子(g、vo)の透明感のあるよく通る歌声は素晴らしいし、作品を重ねるごとにバンドとしての音圧は確実にブラッシュアップされている。今や引っ張りだこなSHISHAMOだけあって、ライブ・ステージを意識した音作りもかなり完成度が高い。若さとは、成長とは、本当に尊いものだと再認識させてくれる。6月に幕を下ろしたワンマン・ツアーを超え、彼女たちにとっても正にこれから夏フェス・シーズン到来となるわけだが、果たして夏の終わりにはどんな成果を持って帰ってきてくれるだろう。今作を経て、各地でさらにファンを増やし、力を付けた彼女たちの2ndアルバムが今から楽しみだ。

(小島双葉)

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