それでも世界が続くなら – メジャー1stシングルのリリースを記念し行われたワンマン“僕らを置き去りにした音楽と再会する日”の最終日の模様をレポート。

それでも世界が続くなら

メジャー1stシングル「僕らのミュージック」のリリースを記念した全国ツアー“僕らを置き去りにした音楽と再会する日“。メジャー・デビュー後、初めての本格的なワンマン・ツアーの最終日(6月28日東京・下北沢GARDEN)は、約3時間に及ぶ熱演となった。どこまでも真摯に、どこまでも誠実に自らの内面と向き合うことで生まれる篠塚将行(vo、g)の歌はこの夜、さらに深く、さらに強くリスナーの胸に突き刺さったはずだ。

TEXT BY 森 朋之

僕にとってロック・バンドというのは“生きてるもの”

 シングル「僕らのミュージック」に関するインタビューのなかで篠塚将行は、「僕にとってロック・バンドというのは“生きてるもの”だから。もちろん受け取る側の視点もありますけど、そのときに感じていることを歌にしてほしいし、それを聴きたいので」と話していた。その姿勢は“それでも世界が続くなら”のライブにも強く示されている。セットリストの組み立て方、照明、ステージング、アンコールについての考え方。そのすべてがいわゆる“ロック・バンドのライブ”のフォーマットとは異なっているのだ。自分たちにふさわしいライブとは何か? 自分たちの音楽を届けるためには、どんなステージを作るべきか? そのことを根本から考え、試行錯誤を繰り返しながら実践しているのだ。こんなにも誠実にライブに取り組んでいるバンドは、そう多くはないと思う。

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篠塚将行(vo、g)

出来る限り誠実に、その瞬間の感情を表わそうとしている

 薄暗いステージに、黒っぽい服を着たメンバーが登場する。表情はほとんど見えない。ていねいにチューニングしたあと、篠塚がいきなり強烈なノイズ・ギターを鳴らし、そこにすさまじい叫び声を重ねる。1曲目は「シーソーと消えない歌」。爆発的なダイナミズムをたたえたバンド・サウンドのなかで、“その痛みも ちゃんと終わるはずだ”という願いを込めた歌が響き渡る。続く「この世界と僕の話」のエンディングでは、篠塚がドラムを叩き、インプロビゼーション的なプレイへと突入。さらに「僕らのミュージック」では歌が歌えなくなり、演奏が中断してしまう。もちろんやり直して歌ったのだが、篠塚のボーカルは明らかに不安定だ。そしてポップな手触りを感じさせる「片方だけの靴」を演奏しているとき、篠塚は再び演奏を止め、マイクを通して「照明を落としてもらっていいですか? 恥ずかしくて歌えない」とスタッフに話しかける。彼らは奇を衒っているわけでも、予定調和を避けることを意識しているわけでもない。そうではなくて、出来る限り誠実に、その瞬間の感情を表わそうとしているだけなのだと思う。

 その後、篠塚はバンドを始めた頃のことを話し始める。

「誘われて、バンドを始めて、ライブハウスに出始めたんだけど。対バンの人で、スタッフの女の子に“ほかのバンドとしゃべってんじゃえよ”って怒ってるオッカナイ若者がいてさ。どんな音楽をやってるんだろう? ハードコアみたいな音楽かな? と思ったら、全然違うんだよね。“みんな元気!? みんな愛してるよ!”って。嘘だろ? と思ったんだよね。でもさ、そういうのってなんとなくわかるでしょ。隠せてると思っても、わかっちゃうんだよ」

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菅澤智史(g)

アンコールもやらないけど、全部本編に入れたから

 さらに「おまえらが俺らのことを好きかどうか、まだ疑ってるけど、今日、ここに来てくれて、感謝してます。本当にありがとう」「楽しいショーもエンターテインメントもできないし、向いてないから、せめて音楽だけはやって帰ろうと思ってます。アンコールもやらないけど、全部本編に入れたから」と言葉を続け、再び楽曲の演奏に没頭していく。“死ぬ気になれよ 死なないから”と歌う「参加賞」、“嫌いと言っていい。君はもういい人じゃなくていい”と切実な気持ちを鋭いメロディとともに表現する「ヘイトミーヘイトユー」、“まず言葉ありき”の世界に違和感を覚えながら、どうしてありのままを見れないんだろう? というあまりにも根本的な問題を投げかける「一般意味論とアリストレス」。このバンドの歌というのは、ときにとても哲学的で、決してわかりやすいとは言えない。しかしライブにおいては、ギリギリまで研ぎ澄まされたアンサンブルと全身全霊で歌い上げる篠塚の実存によって、楽曲の込められた思いを熱量がダイレクトに伝わってくる。微動だにせず、じっとバンドの演奏に耳を傾けるオーディエンスもきっと、彼らのそんな姿勢に惹き付けられているのだと思う。

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琢磨章悟(b)

 ステージングもほかのバンドとはまったく違う。ギタリストの菅澤智史、ベーシストの琢磨章悟は常に篠塚を視界に捉えられる角度に立ち、篠塚のボーカル、体の動きを察知して、緊張感のあるアンサンブルを作り上げていく。骨太なビートとエッジの効いたグルーヴ感を合わせて持った栗原則雄のドラムも、このバンドの特異な世界観をしっかりと際立たせていた。

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栗原則雄(ds)

こんなにもラディカルな表現に立ち向かっているバンドは、本当に稀だと思う

 ライブ終盤には、ニュー・アルバム『もう君はいい人じゃなくていい』(7月2日リリース)に収録されている新曲「優しくない歌」を披露。

「自分は優しくないと思うんですよ。卑下してるとかじゃなくて」「俺たちはみんな、大げさに言えば加害者。そう思ったら、気持ちが楽になったんだろうね」というコメントとともに演奏されたこの曲は、“迷惑をかけながら生きている自分”という認識から始まり“人間の原罪”に迫るような歌詞が強く心に残る、鋭くて強烈なロック・チューン。言うまでもなく、こんなにもラディカルな表現に立ち向かっているバンドは、本当に稀だと思う。

 表面的な楽しさもなければ、オーディエンスと一緒に踊ったり、歌ったりする場面もない。ただひたすら、人間らしい生き方とは? というテーマのもと、真摯で誠実なロック・ミュージックを体現し続ける“それでも世界が続くなら”。今回のツアーを通して彼らは、その圧倒的な存在感を改めて示した。“このバンドの歌があるから、生きていける”というリスナーは少なからず存在する。その事実こそが、このバンドのアイデンティティなのだと思う。

SETLIST

01. シーソーと消えない歌
02. この世界と僕の話
03. 僕らのミュージック
04. 痛くない
05. 5分後のアンチテーゼ
06. 片方だけの靴
07. ウェルテルの苦悩
08. エスと自覚症状(LIVEver)
09. パンの耳
10. 参加賞
11. 水色の反撃
12. スローダウン
13. ヘイトミーヘイトユー
14. 成長痛
15. 一般意味論とアリストテレス
16. チルの街
17. 優しくない歌
18. カイン

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DISC INFORMATION

ALBUM 2014.7.2 release
「もう君はいい人じゃなくていい」
CROWN STONES/CROWN RECORDS

<CD>

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<収録曲>
01. 優しくない歌
02. 明日のハッピーエンド
03. 僕らのミュージック
04. 無自覚なプラットホーム
05. 水たまりの成分
06. 普通の歌
07. 優先席
08. 白紙の地図
09. サウンドチェック
10. 奇跡
11. 無罪と罰
12. 自己嫌悪のターミナル
13. 2月11日

PROFILE

ソレデモセカイガツヅクナラ/篠塚将行(vo、g)、菅澤智史(g)、琢磨章悟(b)、栗原則雄(ds)。篠塚を中心に活動していたバンド“ドイツオレンジ”がメンバー・チェンジを経て現体制となり、バンド名を改名し2011年より活動開始。都内や関東近郊を中心にライブを重ね、2012年2月に1stアルバム『彼女の歌はきっと死なない』をリリース。同作がタワーレコードのインディーズ・チャートで1位を獲得する。それから7ヵ月後の9月には2ndアルバム『この世界を僕は許さない』をリリース。2013年9月に1stフル・アルバム『僕は君に武器を渡したい』でメジャー・デビューを果たす。

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