王舟 ALBUM「Wang」ディスクレビュー

Wang

ALBUM

王舟

Wang

felicity

2014.07.02 release

<CD>


音楽という、豊かで大きな河に抱かれるような至福の時。

 これは素晴らしい。文章書くのなんてやめて、もう一度ひたすら音を浴びます。あ、ダメですね。書きます。先入観なく、まずはあなたのやり方で耳を傾けてほしい。“俺についてこいよ〜”というタイプの音楽ではなく、心を開いてあなたを待っててくれる音楽だとも思うから、あなたのペースとやり方で、耳を傾けてほしいのです。彼の歌声はアコースティックな音と相性がよく実に温かい。日本語詞の歌からは行間も感じ取り、英語詞の歌は、むしろ意味より単語の響きにまず浸るといい。そうすればきっと、いや絶対、音楽という、豊かで大きな河に抱かれるような至福の時に浸れるハズ。思わず手拍子をしてた? その瞬間、あなたは聴き手を越え、これらの音楽の立派な“共演者”なのではないでしょうか(もちろん僕も……)。

王舟の音楽は、時代を切り取り断面を見せるというより、長い年月で培われた地層全体を見せていく辺りが魅力です。アメリカにヴァン・ダイク・パークスという人がいますが、遠からずな資質を感じます。ある特定のスタイルにこだわるのではなく、様々な音楽の魅力的なエッセンスを調合していくような感覚が似てるのです。では、そのエッセンスとはなにか? 何事も今より大らかだった時代を想像させます。そのひとつとしてアメリカのルーツ・ミュージック、例えばカントリー、という言葉を持ち出すと、これは非常に大きな先入観となってしまうかもしれませんが、人と人とが程よい距離感のなかで生活していたときに鳴っていた音楽が王舟の作品のなかにも感じられるし、だからこそ、手拍子しながら“参加”したくもなるのだと思うのです。

 ただ、いくら彼の音楽が広い景色を見せてくれるといっても、私たちは迷子になりかねません。そんなとき、実に効いているのがメロディ・センス! 彼の音楽におけるメロディは、あたかも旅の魅力的なガイドさんのようです。このガイドさんのお陰で、私たちは日々の行程を楽しく辿っていくこともできるのです。

(小貫信昭)

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