椎名林檎 SINGLE「NIPPON」ディスクレビュー

NIPPON

SINGLE

椎名林檎

NIPPON

Virgin Records

2014.06.11 release

<CD>


ホンモノのプロフェッショナル

 NHKのサッカー・ワールドカップのテーマ曲としてすでにお茶の間で流れている椎名林檎のニュー・シングル。いつになくBPMも早くテンポもストレート、激しいギター・リフや荒々しいベースが軸になって引っ張っていく、この人のロック・サイドが直接的に出た曲だ。“この地球上で いちばん 混じり気の無い…”などといった歌詞の一部が物議を醸しているが、もともとこの人の歌詞には日本人的情緒をモチーフにしたものが多く、これまで彼女の作品に触れてきた人であればほとんど気にならないはず。“あの世へ持って行くさ”とか“淡い死の匂い”などといった箇所などは、力の限り尽くすことの美徳を表現したこの人らしい描写と言える。第一、テレビのサッカー番組を通して聴いたときには、甲高い歌声ゆえに何を歌っているかほとんどわからない。サッカーに相応しい曲になったかどうかはわからないが、少なくとも都会の闇を歌える椎名林檎のような人をスポーツ中継番組のテーマ曲に起用したNHKの心意気は買いたいし、自分の美学を変えることなくスピード感あるロック・チューンに仕上げた彼女自身もプロの仕事をしたと言っていいと思う。

 それよりも個人的に感じるこの曲の魅力は、イントロを含めて曲の至るところに挿入されている、ドンドン、ドドドン、ドッドドッドッド……と力強く叩かれるドラムのタムのフレーズだ。もちろん、応援団の太鼓のような轟きを表現しているわけだが、ピンと来た人も多いことだろう、この曲はラモーンズの「ロックンロール・レディオ」のあのお馴染みのイントロのドラム・パターンとほぼ同じ。彼女が意識したかどうかはわからないが、ラモーンズのあの曲も椎名林檎のこの曲も、何かに対して強く讃えたロックンロールであるという点で共通している。「ロックンロール・レディオ」ではラジオに、この曲ではサッカー……というより日本に、いずれもエールを送る讃歌になっているわけだ。しかも、「ロックンロール~」のほうにはサックスなどの管楽器が多数挿入されていたし、この曲はバンド編成+プログラミング+フル・ストリングス。アレンジが少々ゴチャっとしてはいるが、様々な楽器が一体となることによって、皆でひとつになって応援する、メッセージも伝えることとなった。そのあたりも視野に入れていたのだとしたら……椎名林檎はやはりかなりの確信犯と言えるだろう。

(岡村詩野)

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