テスラは泣かない。 – “マグマロック”を掲げ今年4月にメジャー・デビューを果たした彼ら。フロントマンの村上ソロ・インタビューで見えたバンドの核。

テスラは泣かない。

今年の4月にシングル「Lie to myself」でメジャー・デビューを果たしたテスラは泣かない。が、全曲ミト(クラムボン)プロデュースによる1stアルバム『TESLA doesn’t know how to cry.』を完成させた。メジャー・デビュー決定後に制作されたパワフルな新曲、2012年発表の『High noble march』からの再録曲、さらには、ピアノのリフレイン、ディストーションの効いたギター、4つ打ちという彼らのアイデンティティを決定づけた「パルモア」も収録し、10曲の中にバンドの魅力をギュッと詰め込んだ作品となっている。シングル発表時のメンバー全員インタビューに続き、今回はギター&ボーカルの村上 学の単独インタビューを実施。“マグマロック”を掲げ、爆発力のあるライブを展開するバンドの核になる部分を探るべく、村上のパーソナリティに迫った。

INTERVIEW & TEXT BY 金子厚武

 

“昔・今・未来”を凝縮した10曲

──地元の鹿児島と東京でのリリース・ライブを終えた感想から聞かせてください。

ひとつの区切りっていうのはありますね。自主企画っていうのは、自分たちを観に来てくれたお客さんと一緒にその空間を楽しむ場所なので、それをメジャーに来て初めてできて、“ここがスタート地点になるな”って思いました。

──今年に入ってライブはかなりの本数をやっていて、その成果がはっきりと表れた、いいライブだと思いました。爆発力のある曲はもちろん、長い尺だとミドル・テンポの曲とかもすごく有効で、15曲があっという間でした。

30分ぐらいだと、僕たちのアイデンティティ的な曲をいっぱいやって盛り上げて、印象づけて帰ろうと思うんですけど、ミドル・テンポの曲だったり、「Arc」みたいなゆったりした曲だったり、やりたいことはほかにもいろいろあるんですよね。長尺だと、SEが鳴って自分たちが出ていくところから、アンコールをもらって帰るまで、ひとつの映画みたいなストーリー性を伝えられるなっていうのは、改めて思いました。

──映画で言えば、セッティング中によく演奏してるクラムボンの「バイタルサイン」は予告編ってとこかもね(笑)。

あれはですね、裏話がありまして、ミトさんに直接“僕たちサウンド・チェックで「バイタルサイン」をやってるんですけど”ってメールしたら、“バイタル・チェックですね。素晴らしいと思います”って返ってきて(笑)。

──いい話(笑)。そして、そんなミトさんをプロデューサーに迎えた1stアルバムがついに完成したわけですが、コンパクトな中に今のテスラの美味しい部分をギュッと凝縮した、ばっちりの仕上がりになったと思います。

ありがとうございます。シングルのときも“名刺代わりの一枚”って言ってたんですけど、今回も“僕たちはこういう集団です”っていうのを、スピーカーを通して一発で伝えるにはどうすればいいかっていうのを考えました。“昔の曲を進化した僕らが表現するとこうなります”っていうのを提示しつつ、メジャーが決まってから作った曲に関しては、“今の僕たちはこうです”というより、“これから僕たちはこういう曲も作りますよ”っていう、意思表示になったと思うので、“昔・今”の2セットというよりは、“昔・今・未来”を凝縮した10曲になったんじゃないかって思います。

──なおかつ、ただの10曲のコレクションではなく、ちゃんと流れもあって、それこそ映画的なストーリーも感じられました。

曲の順番を決めるのは大変だったんですけど、1曲目の「Cry Cry Cry」と10曲目の「Someday」、あと途中に「Arc」が入るっていうのは最初に決まってたんです。「Cry Cry Cry」は、トンネルを抜けて、“今から始めるぞ”っていうイメージの曲だし、「Someday」はまさに映画のエンドロールに流れるような曲で、「Arc」もまた別の景色を見せるような曲なので、あとは残りをどう決めるか、どうやれば飽きずにずっと楽しめるかを考えて選びました。

──10曲約35分っていうコンパクトな作品にしたのは、意図的なんですか?

それはですね、10曲録り終わって聴いて、自分たちでも衝撃でした(笑)。やってる方はすげえ作るのに時間かかってるのに、“こんな短いんだ?”と思って。でも、ボリュームは時間の長さで決まるわけじゃないと思うし、自分たちで聴いて、いい意味で重たい、ずっしりくる作品だと思ったので、時間こそ短いけど、ボリューミーな作品になったと思います。

作品に嘘をつかない

──個人的に、短い作品好きなんで、そこもよかったと思います。ちゃんとインパクトがあって、なおかつ繰り返し聴けるっていうのは、いい作品の条件だと思うし。今回は録り方もかなりこだわってるんですよね?

今回はグランドピアノを使ったのと、アナログ・テープで一発で録って、極太なサウンドにしました。『High noble march』を作った頃は、形の整ったものを作ろうとしてたんですけど、歪な形でもいいから、人間味のあるものを作ることにこだわって。ミスをしないとかテンポを合わせるとかっていうのももちろん気にはするんですけど、それよりももっと大事な、僕らのライブ感を重視したので、パンチインもほぼしなかったですね。

──音の説得力はかなりあるよね。ちょっと前にミトさんから聞いたんですけど、ミックスやマスタリングは、あえてアニソンとかをやってる人にお願いしたとか?

とにかく極端に、“無難に済まさない”っていうのが今回テーマになってて、“これちょっとやりすぎじゃないですか?”って臆病になってしまうところも、ミトさんが“それぐらいやっていい”って、背中を押してくれて、ミックスもマスタリングも極端な、パンチのあるサウンドに仕上がったと思います。

──確かに“極端”っていうのはキーワードかも。新曲はどれもアッパーな曲ばっかりで、特に一曲目の「Cry Cry Cry」はパンチ力ありますよね。この曲はタイトル含め、“メイン曲にしよう”みたいな意気込みで作ってたんですか?

僕は曲を作るときは全部メインのつもりで作るんですけど、この曲に関しては結構偶発的で、“cry cry cry cry cry”って言ってる部分が最初にできて、飯野に歌わせたときに、赤ちゃんの産声に聴こえて、そこからすごい開けて。例えば、「アンダーソン」がお腹の中にいて、何か企んでるような曲だとしたら、「Cry Cry Cry」は今まさに扉を開いて、世に出ようっていう曲に聴こえて、偶然のような必然のような曲なんですよね。

──確かに、すごく解放のイメージがある一曲だもんね。そして、生まれた赤ちゃんが思春期を迎えて、“もうめんどくせーな”って言い出すわけだ(笑)。

そのストーリーいいですね(笑)。「めんどくせえ」はキメまくってる曲ですけど、これまでキメってちょっとダサいっていうか、恥ずかしいなって思ってたんですよ。でも、ミトさんが「こんなポップで、“もうめんどくせーな”って言っちゃってるぐらいだから、もっとバカになっちゃえよ」って言ってくれて、それで突き抜けた感が出ましたね。

──この曲もやっぱり“過剰”だよね(笑)。ただ、そういう曲の中に「my world is not yours」とか「Arc」みたいなゆったりした曲があるっていうのが、いいアクセントになって、アルバムの流れを作ってると思いました。

こういうミドル・テンポの曲はライブでやると踊るっていうよりも、揺れるっていう表現が非常に近くて、一緒に波につかりながら揺れてる感じをみんなで共有できる曲だなって。でもその中で、ソロ回しとか、アッパーな部分もあって、面白い感じになったと思います。

──やっぱり、こういう曲があるからこそ、ライブでお客さんそれぞれの楽しみ方ができて、すごくいいなって思う。ちなみに、レコ発で聴いて、「Arc」って向井(秀徳)さんっぽいんだなって、今さらながら気づいた(笑)。

いやもう、まさにそうです(笑)。しかもライブではリバーブをガンガンかけてやって、やればやるほど向井さんのアコースティック&エレクトリックっぽくなっちゃうんですけど、今回に関しては“やっちゃえ”と思って(笑)。

──もちろん、最終的にはテスラらしい仕上がりになってると思うし、ライブもすごい良かったと思います。ちなみに、「Arc」のラストにうっすら入ってる音って、何の音?

雨の音です。歌詞に“雨が降ってるのがせめての救いだった”っていう部分があるので、情景を浮かび上がらせる助けとして入れました。これもひとつエピソードがあって、雨の音を入れようってなったときに、ミトさんがこだわったのが、“鹿児島で降ってる雨の音を録ってきてください”っていうことで。この歌詞は鹿児島の自宅の近くで雨に濡れながら作ったんですけど、“それだったら、鹿児島の雨の音じゃないと筋が通らないから”って。実際出来上がってみたら、そのときの情景がパッと浮かびましたね。“作品に嘘をつかない”っていうのは、僕らが守らないといけないことだなって思いました。

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