石崎ひゅーい – ドラマ「新解釈・日本史」主題歌として書き下ろされた「ピーナッツバター」と、東日本大震災の頃に書いたと語る「泣き虫ハッチ」が両A面シングルに!

石崎ひゅーい

“今は亡き母”に対する感情をコンセプトに掲げた2ndミニ・アルバム『だからカーネーションは好きじゃない』で、とことん自分の根源と向き合った石崎ひゅーいが、ダブル・タイアップの両A面シングル「ピーナッツバター/泣き虫ハッチ」をリリースする。ドラマ「新解釈・日本史」の主題歌「ピーナッツバター」は、ドラマありきで書き下ろしをした曲。また、「泣き虫ハッチ」がテーマ・ソングとなった住友生命「Small Story Film」では、彼がその映像に出演するという“参加”もしている。『だからカーネーションは好きじゃない』で、自身のオリジナリティを全面的に肯定することができた彼が、“タイアップ”という提携の中で見せた石崎ひゅーいらしいアプローチは、実に痛快だ。

INTERVIEW & TEXT BY 松浦靖恵

 

自分が好きな人たちの作品に曲が書けることがうれしかった

──前回のインタビューのときに、『だからカーネーションは好きじゃない』を作り終えてから、「曲が作れなくなっちゃった」なんて言っていましたけど、ちゃんと新曲が生まれましたね。

はい。ちゃんと生まれました(笑)。ドラマの主題歌を書き下ろしてくださいっていう素晴らしいきっかけがもらえて良かったです。

──「ピーナッツバター」は、ドラマ「新解釈・日本史」のテーマ曲ですが、詞曲を書く前にドラマ制作サイドや監督(福田雄一)から何か説明を受けたり、要望があったりしましたか?

ドラマの内容を教えてもらったり、台本を読んでみたり、1話目の映像も前もって観させてもらいました。あと、エッジの効いた曲、作品(ドラマ)に対して言葉が負けないような強いものがいいというようなことは言われてたかな。

──石崎ひゅーいは、これまで衝動的に曲や詞を書くことが多かっただけに、ドラマの内容やテーマに合わせて曲を書くこと、先に“お題”のようなものがあったうえで書く作業というのは、いかがでした?

「新解釈・日本史」は、歴史の教科書に載っているような偉人さんを取り上げているんだけど、実際に起こった本当の出来事を独自に解釈して、コメディにするっていう切り口がすごく面白いし、誰もが知っている歴史を変えちゃうなんてロックだなぁって思って。もともと僕は福田監督が手がけた作品を見ていたし、どの作品も切り口が斬新で、そこがすごく好きだったから、福田監督作品に自分が関われることがすごくうれしかったです。俺、運がいいなぁって思いました(笑)。

──運がいい?

お題みたいなものから受けるインスピレーションがいっぱいあったから、とても書きやすかったし、人ありきで曲を書くのって大事だなって思ったんです。監督も大好きだし、出演者の方とお酒を飲んだときに(主演の)ムロツヨシさんと話をしたらめっちゃ気が合ったし。自分が好きな人たちの作品に曲が書けることがよっぽどうれしかったのか、「ピーナッツバター」は1週間くらいで書けちゃいましたね。

──以前のインタビューでも、自分は「新しい人と出会ったり、人と関わって話したりすることが、音楽的にいちばん作用するんだな」ってあるときに気づいたって言ってましたものね。

でもね、そう言いながらも、家にいたいタイプなんですよ(苦笑)。人に会いに出かけたり、誰かと話をしたりするのは楽しいことなんだってわかっているし、人と会う約束が先々に決まってないと不安になるくせに、いざ当日になると“面倒くせぇ~”ってなっちゃう(苦笑)。だから、今回は「新解釈・日本史」っていうドラマとの出会いを作ってもらえて、本当に良かったです。

──もともと書き下ろしに対しては、どんなイメージを持っていましたか?

最初の頃は、書き下ろしって難しい作業なんだろうなと思っていたんです。何か言われちゃうんだろうなとか、言われたことをやりたくなくなったらどうなっちゃうんだろうなとかいろいろ考えちゃって。やる前は苦手意識があったんだけど、いざやってみると、人と出会えるし、インスピレーションを広げてくれるし、自分も新鮮な気持ちになれるしで、“こりゃあ、イイことづくめじゃないか!”と。たぶん、書き下ろしって、石崎ひゅーいの歌を求めてくれたということなんですよね。認めてもらえたっていうか……あなたの歌がほしいんです、この作品には君の歌が必要ですって、僕の歌の居場所みたいなものを作ってもらえるのは、すごくうれしいです。

この時代だから書ける言葉は書いていったほうがいいと思ってる

──「あせんな平凡な毎日が凡人を天才にするから」っていうフレーズは、どんな偉人でもひとりの人間だし、この世の中に生きている人は誰でも、何かをきっかけにして偉人や天才になれるのかもしれないって思わせてくれました。

“歴史を変えることなんかできないけど、君の気持ちぐらいは変えられるよ”なんてよく言うけど、僕、そういう考え方って嫌いなんですよ。うーん……嫌いっていうか、“歴史って変えられるんじゃないの?”って思っちゃう。何言ってんだよ、そんなの無理に決まってるじゃんって思う人は多いとは思うけど、僕はそれをバカげたことだとは思ってないっていうか。歴史を変えるって、そんな大げさなことじゃないんじゃないかなって思う。歴史っていうと、話がどでかくなっちゃうんだけど、例えば、日々とか毎日の中にある何かを変えるって、気持ち次第のような気がするんです。「歴史を変える魔法はあるさ 唱えてみなよ楽しくなるぜ」って、そういうことを言いたかったというか。こんなことバカげてるよなぁってことでも、口に出して言ってみたら、なんか妙に楽しくなっちゃったりするでしょ?

──もし、自分が魔法使いだったらって、想像するだけでも楽しい。

そう! 透明人間だったら、何しようかなとか(笑)。あと、この「あせんな平凡な毎日が~」の部分は、まさに今の自分の状態でもあって。曲がなかなかできねぇな、でも、焦んなよっていう(苦笑)。

──そう自分に言い聞かせている。

うん。まさに。あと、「金なら出すよ二万五千円までなら」のところは、そのときの僕の全財産が二万五千円だったんです。

──(笑)。歌詞の中に、「テレビ」「偉人」「時代」「歴史」なんて言葉があるのは、このドラマの主題歌ということを意識したからですか?

そうだと思うんですけど、あまり意識しすぎないようにはしてました。できるだけ無意識な感じにしておかないと、たぶん、書いてるうちに自分がつまんなくなっちゃう。そういう縛りみたいなものに、僕が飽きちゃうんです。

──歌詞の中に「中二病」って言葉を書きましたけど、この言葉って昔はなかった言葉でしょう? 歌詞を書くとき、今だから書ける言葉を書きたいと思ってますか?

この曲にかぎったことじゃなく、そこはいつも意識してるかな。今、僕らはこの時代を生きているんだから、この時代だから書ける言葉は書いていったほうがいいと思ってます。あと、今回の「calling you」みたいに、歌詞にちょっとだけ英語を入れるのも好きなんです。しかも、その英語の発音がちゃんとできてなくて、カタカナっぽい感じになちゃうっていうのも、なんか好きなんですよね(笑)。

──石崎ひゅーいの歌には、「玉子焼き」とか「ミルク」とか、「バターチキン」とか、食べ物がよく出てきますけど、今回も歌詞の中にいきなり「ピーナッツバター」が出てきました。

「食パンの耳はちぎって~」って書いたときに、じゃあ白い部分に何を塗ろう、“ピーナッツバターだ!”って思いついちゃった。僕がピーナッツバターが好きっていうのもあるんですけど、歌詞に食べ物のことを書くっていうのは、僕の生活に食べ物が必ずあるからなんですよ。こうやってインタビューを受けたり、詞や曲を書いたり、ライブをしたり、酒を飲んだり、ご飯を食べたりっていうことが、僕の生活の中では最も多いことだから、食べ物のことも自然と(歌詞に)出てきちゃうんだと思います。僕は自然の流れで曲を作っていきたいと思っているから、“腹減ったな、何か食いたいな”って思ってたら、メシに関係する言葉がポロッと出ちゃうし。ま、メシを食いたいって思えるっていうのは、生きてる証ですからね。って、今、僕、かなりいいことを言いましたね(笑)。

──(笑)。制作期間中は、あまりお腹がすかないっていう人もいるみたいですけど。

僕はガンガンに食えちゃうんです。僕は集中力が1〜2時間しかないから、とにかくその時間内にガーッと集中して頑張ろうってなるんだけど、集中力が途切れたら、だいたい腹が減ってるんですよねぇ(苦笑)。

真面目にやっているのになんか変な感じがするっていうバランス

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──ドラマの最後に流れる曲とか、曲がテレビから流れてくる感じは意識しましたか?

音の感じとかアレンジは、いつも一緒にやっているTomi Yoさんが、僕に“こんな感じでどうかな?”ってアイデアを提案してくれて、ディスカッションしながら作っていきました。前奏に入っている尺八っぽい音も、Tomiさんから出たアイデアなんですけど、真面目にやっているのになんか変な感じがするっていうバランスが、ドラマの感じにすごく合っていて、いいなって思いました。「新解釈・日本史」ってギャグがいっぱいで、かなりふざけてるし、ばかばかしいんだけど、観ているうちに視聴者は取り上げている偉人や日本史に興味を持っちゃうと思うんです。ふざけているんだけど、どこか真面目で、真面目なんだけど、どこかふざけているっていうあのドラマの感じが、僕はすごく好きですね。もし、自分が子供の頃にあのドラマが放送されていたら、勉強嫌いな僕も歴史に興味を持ったかもしれないなって。日本史が苦手とか歴史の勉強が嫌いな子供たちが観たら絶対いいのにね。ゴールデンタイムに放送してもらいたいくらいですもん。けど、教科書に書いてあることと全然違うから、(ドラマの内容を)そのまんまテスト用紙に書かないほうがいいと思うけど(笑)。

──ところで、ドラマの撮影現場を表敬訪問したんですって?

はい。普通、ドラマってシーンごとに短いカット撮りを重ねていくらしいんですけど、あのドラマは長回しで撮っているから、舞台みたいな流れがあって、面白かったです。監督さんも共演者の方もスタッフさんも、みんなムロさんのことが大好きなんだっていうのが伝わってきたし、現場の雰囲気がすごく良くて。そのあと、ムロさんのラジオにゲストで出させてもらったんですけど、「ピーナッツバター」のことを、「かっこいい! かっこいい!」ってめちゃくちゃ褒めてくれて、僕はすごく気持ち良かったです(笑)。

──ムロさんはそんなに年上ではないですけど、福田監督、箭内道彦さん、リリー・フランキーさん、園子温監督と、なんで石崎ひゅーいは年上のおっさんに気に入られるんでしょうね(笑)。

ま、僕もおっさんなんですけど(笑)。なんで気に入ってくれるんだろう……。ちょっかいを出したくなるのかな(苦笑)。みなさん、子供のような好奇心を持っていて、フットワークも軽いし、少年のようだけど、自分の生き方をちゃんとしている。ホント、みなさんかっこいい大人ですよね。

──ちなみに、好きな偉人さんはいますか?

偉人さんって、どこからが偉人さんになるんですかね?

──歴史上の有名な人じゃなくても、身近な方でも、自分がそう思えば偉人さんじゃないですかね。

だったら、僕の偉人さんは母親かな。あと、僕がいちばん好きなシンガーの玉置浩二さんですかね。

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