石崎ひゅーい ALBUM「ピーナッツバター/泣き虫ハッチ」ディスクレビュー

ピーナッツバター/泣き虫ハッチ

ALBUM

石崎ひゅーい

ピーナッツバター/泣き虫ハッチ

DefSTAR RECORDS

2014.06.25 release


ピーナッツバターを塗ると、世界が一変していく!

 独創的な作品を生み出し続けているシンガー・ソングライター、石崎ひゅーいのダブル・タイアップ両A面シングル。タイアップ用に曲を書き下ろすということは“お題”が設定されて俳句で作っていくことにちょっと似ている。あるいは、決められた素材を元にして、創作料理を作っていくのにも通じるところがある。つまり創意工夫、アイデアが問われるのだが、今回のシングルは彼のたぐいまれな発想力が際立つ作品となった。

 1曲目の「ピーナッツバター」は歴史上の有名な出来事を新解釈してコメディ仕立てにした斬新なドラマ「新解釈・日本史」の主題歌。ドラマに負けじと楽曲も画期的だ。モチーフとなっているのは“歴史”。彼はこの“歴史”を素材としてピーナッツバター風味の美味な料理に仕上げている。ミディアム・テンポで始まり、途中から一気に加速して疾走し、エネルギーが炸裂していくスリリングな構成。江戸時代も明治時代も一気に越えていくようなイマジネイティブでスケールの大きなサウンド。そしてイメージが飛翔していく自在な歌詞。「ダルマ」「偉人さん」「正義の味方」「中二病」「食パン」「恐竜」など、一見脈絡のない言葉を駆使して、聴き手の想像力を刺激していく手腕は見事だ。しかも独創的ではあるのだが、ひとりよがりにならずに、胸を揺さぶるエモーショナルな曲となっている。「平凡な毎日が凡人を天才にするから」というフレーズが素晴らしすぎる! 味気ない食パンもピーナッツバターを塗ることで、クリーミー&ツブツブ感がたまらないご馳走になっていくように、彼はこの歌によって、日常を彩り豊かなものへと改変していく。

 もうひとつのA面曲「泣き虫ハッチ」は住友生命「Small Story Film」のテーマ・ソング。柔らかな歌声がじわじわと染み込んでくるミディアム曲なのだが、希望のシンボルを“泣き虫ハッチ”と表現しているところがユニークだ。もしかして昭和の人気アニメ「みなしごハッチ」を念頭に置いて制作されたのだろうか。このアニメ、みつばちのハッチが生き別れた母親を探す苦難の旅を続けるというストーリーだった。だがこれは“ハッチ、頑張れ”というだけの歌ではない。応援することと応援されることとが表裏一体となっていて、双方向の応援歌になっているところが秀逸だ。孤独を抱き、立ち向かっている存在はひとりだけではない。石崎ひゅーいの歌はたくさんのひとりぼっちを繋いでいく優しいパワーを備えている。

(長谷川誠)

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