OverTheDogs – OverTheDogsから届く新作のタイトルは『冷やし中華以外、始めました。』! 久々のメンバー全員インタビューをお届けする。

OverTheDogs

ここ1年ほどはライブ会場限定シングルのリリースや、街頭でのサンプルCD配布など、バンドとして原点に戻った活動を重ねてきたOverTheDogsから届いた久々のアルバム。その名も『冷やし中華以外、始めました。』は、バンドのメンタル的な好調ぶりを反映し、フレッシュな勢いいっぱいに駆け抜ける全7曲。待ちわびたファンの期待に応える会心作だが、それだけではない。叙情的なメロディと躍動感溢れる演奏の中で、時折ハッと胸を突く、知らず知らずに流される日常の中で本当の自分を探すきっかけになる言葉の数々。ほかの誰でもない、今これを読んでいるあなたにこそ聴いてほしい本当の音楽がここにある。

INTERVIEW & TEXT BY 宮本英夫

 

スパイスを加える工夫ができる人は音楽に向いてる

──今日はこの取材のために、全員で福生から来ていただきまして。

恒吉 豊 こちらこそ。ありがとうございます。

──ご無沙汰してました。と言っても、ライブは結構まめにやってますよね。

恒吉 そうですね。一時は減らしてたんですけど、今は練習する時間も曲を作る時間もあるので。僕、ほかに趣味がないんですよ。だから曲をどんどん作って、ライブもいっぱいやろうと思ってます。

──まずはバンドの近況インタビューから入ろうと思うんですが。どうですか、最近の生活は。

樋口三四郎 いい意味で、自然な感じですね。音楽が生活の一環になっているというか。
恒吉 三ちゃん、カレーを作れるようになったんですよ。それがいちばん大きい(笑)。すごい進歩ですよ。バンドに多大なる影響を与えてます。
樋口 ツネが、“料理ができるようになると、ギターもうまくなるよ”っていうアドバイスをくれたので。
恒吉 僕の、歌の先生が言ってたんですよ。料理の味付けって、すごいシビアじゃないですか。ちょっとした塩の入れ方とか、ちょっとスパイスを加える工夫ができる人は音楽に向いてるし、そういうことを考えると絶対歌も良くなるからって。「だから料理をたくさんしなさい」と言っていて。

──説得力あるなぁ。

恒吉 それはいいなと思って、三ちゃんに言ったら、ひたすらカレーを作るようになった(笑)。
樋口 でもカレーを作っていて、自分が至った答えというのは、レシピの通りに作るといちばんおいしくなるということで。
恒吉 基礎をしっかりやるんだ。
樋口 そう。変なアレンジを加えるよりも、書いてあることに従ったほうがおいしいというのが、今のところ暫定の答えです。
星 英二郎 マニュアルは大事だと。
樋口 それを作った人の研究の成果だなと。今はそれが基本で、たまにお肉をひき肉に変えてみたりとか。
 変えようとはしてるんだ。
恒吉 カレーのインタビューになってるけど。

──なんでしたっけ? 近況インタビューか(笑)。星くんは、最近何か変化はありましたか。

 変化と言うのは、メジャーにいた頃との違いとか、具体的なことでいいんですかね。

──そうですね。ざっくりと、この1年間くらいのことを。

 前は、自分たちの音楽が勝手に広がっていったらいいなとか、抽象的に思っていたものが、もっと直接いろんな人に伝えたいという欲が出てきました。ライブが増えたのも、そういう理由だと思います。作った曲をどう聴かせたいか? が具体的になってきて、今回の作品もそれは反映できたと思います。そしてカレーは好きです(笑)。
樋口 星くんは今回、アレンジのことにも先陣をきってアイデアを出してくれました。

──プレー的にはどんどんシンプルになってきてると思うんですよ。音色はピアノとオルガンくらいで、フレーズと間合いで勝負するみたいな。

 はい。そう思います。(弾いてる)人が見えたらいいなと思いつつ、ツネの曲に合うプレーは何だろう? と考えて、そこに行き着いたんだと思います。でもひとりでカレー屋さんに行ったりしますよ。
恒吉 なんで絶対カレーの話で締めなきゃいけないの(笑)。

──ダイキさんお願いします(笑)。

佐藤ダイキ 僕は最近、ベース&ボーカルというパートになりました。今3曲ぐらいあるんですけど、ライブで歌うようになりましたね。そのせいか、昔に比べてもっと聴いてほしいと思う気持ちが強くなりました。
恒吉 歌うようになってから。
佐藤 あと、メジャー・デビューする前に、新宿の駅前でフライヤーやCDサンプルを配ったりしてたんですけど、このタイミングでもう一回やろうかと。最初はイヤだったんですけど、配り始めたら、これは逆にカッコいいんじゃないか? と。
恒吉 サンプル配りなんて、カッコ悪いと思ってた時期もあったんですよ。でもよく考えたら、バンドを始めた当時はみんなやってたのに、なんでいつのまにか自分の中でカッコ悪いものになっていたんだろう? って。もしかしたらメジャーにいた頃は、それはNGと言われたかもしれないけど。だから僕の近況で言うと、すごい心が健康なんですよ。レコード会社の悪口じゃないですよ。そこはうまく書いてほしいんですけど。

──はい。わかってます。

恒吉 すごい心が健康になりました。自分でカッコいいかカッコ悪いかの判断をして動けるし、“メジャーのバンドはこうだ”とか、そういう決まりごとも作る必要がない。好きなことをやって、「いい曲ができたから聴いてください」と言って、原始的ですけど、今はすごく楽しいです。初期化されて、今いちばん純粋に音楽をやってる気がする。

──初期化ね。それはわかりやすい表現。

恒吉 メジャーのレコード会社に、ああしろこうしろって言われていたわけじゃないんですよ。たぶん自分の中で勝手に“こうしなきゃ”というのがあったんですね。でも“そんなの知らねぇよ”って吹っ切れた。楽しくやって、うまくいったらいいねという、僕のそういう考え方についてきてくれるメンバーだから、すごく感謝してるし、いい状況だなと思います。

──ライブに集まってくれる人も、みんな同じ気持ちだと思いますよ。

恒吉 今後またメジャー再デビューということになるかもしれないし、ならないかもしれないし、わかんないですけど、もしそうなったときは、レコード会社と対等か、それ以上にならなければいけないと思ってます。もちろんレコード会社の話は聞きますけど、音楽に関しては、やりたいことをやるとはっきり言える人じゃないと、デビューしちゃだめだなと思います。それが、この何年かで思ったことですね。

いつか振り返ったときに「あれをやっておいて良かったね」と言える

──そのへんのことは、やんわりと聞こうと思ってたんだけど、先に言われてしまった(笑)。でもメジャー・レーベルで得たものも、すごく多かったと思うんですよね。何人かのプロデューサーと一緒にやったこととか。

恒吉 そうですね。それが逆だったら良くなかったなと思います。インディーズで何枚も出して、プロデューサーがついて……というよりは、先にプロデューサーがついて、いいことも悪いこともわかったのはラッキーだったし、レコード会社にはすごい感謝してます。

──特に鍵盤のアレンジとかは、プロデューサーに鍛えられたところは多かった気がします。

 そうですね。いいところと悪いところが全部見えたので。今は“何がこの歌にとって正しいのか?”が、前よりも見えていると思います。もっと言うと、聴き手の気持ちが前よりもわかるようになったので、焦りもないし、“この歌はこう届くべきだ”という点で、前よりもベストは尽くせてると思います。
恒吉 ただ一個、今回のアルバムは、そうやって楽しく作ったんですけど、ミックスとマスタリングも自分らでやったほうがいいんじゃないか? と思って、やったら、ちょっと失敗しましたね(笑)。

──あははは。そんなこと言っていいのか(笑)。そこはプロに任せたほうが良かった。

恒吉 そう(笑)。そこは今回勉強しました。まぁ失敗というか、そこはうまく書いてほしいんですけど(笑)。作品としては、全然失敗じゃないんですよ。でも正直もっと良く聴かせる方法はいくらでもあったという意味では、悔しい思いがあるということで。でも、これを今やっておかないとダメだったんですよ。全部試したかったので。

──ああ、レコーディングからミックス、マスタリングにいたる全部の過程を、自分たちで。

恒吉 そう。メンバーも僕の意見に賛同してくれたんですけど、たぶん“コノヤロー”と思ってると思います(笑)。
佐藤 しこたま思ってます(笑)。でもとりあえずやってみないと納得しない人間なので。「絶対そっちじゃないほうがいいよ」と言っても、「でもやってみようよ」と言って、やった結果、誰よりもふてくされたりとか(笑)。

──めんどくさいなぁ(笑)。

恒吉 音楽って、何が成功で何が失敗なのか、わかりにくいじゃないですか。ずっとオリコン1位を取り続けたら成功なのか? と言ったら、それはそうかもしれないけど、もっと長い目で見たら、山と谷がないと、全然面白くないと思うので。僕らは今たぶん、60歳とか70歳とかになったときに振り返って、笑えるような音楽人生だと思うんですよ。特にこの1年はいろんなことがあったし、いつか振り返ったときに「あれをやっておいて良かったね」と言える時期だと思うんですよ。
佐藤 でもそのタイミングで解散してたら、笑えないけどね。
恒吉 そう、解散してたら笑えない。

──すごい結束力ですよ。で、今回の『冷やし中華以外、始めました。』に入ってるのは、この1年で作った曲ですか。

恒吉 そうですね。ほぼ新曲です。古い曲も入れようかなと思ったんですけど、言葉のニュアンスが変わってきちゃうんですよ、古い曲って。そのときの流行りがあるんですよね、自分の。
佐藤 その流行りから、俺のボーカル曲は漏れてしまいました(笑)。
恒吉 その代わり特典で付きますよ。タワーレコードがクリアファイルで、ヴィレッジヴァンガードがステッカーで、QRコードがついていて、そこにアクセスすると、ダイキが歌ってる曲が1曲聴けます。未発表の。
樋口 すごい、いい曲ですよ。
恒吉 ヒップホップです。カバンにパンを詰めてくるやつを殴りたい、というテーマの曲なんですけど。

──よくわからないです(笑)。

恒吉 そういうことができてしまうから、メジャーじゃないミュージシャンって厄介なんですよね(笑)。賛否両論のことがバンバンできる。やらないほうがいいんじゃない? って思う人もいっぱいいると思うんですけど。

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