avengers in sci-fi ALBUM「Unknown Tokyo Blues」ディスクレビュー

Unknown Tokyo Blues

ALBUM

avengers in sci-fi

Unknown Tokyo Blues

ビクターエンタテインメント

2014.06.18 release


人と人との感情のやりとりこそが、音楽の本質

 前作『Disc 4 The Seasons』(’12年4月リリース)のインタビューの際、木幡太郎(g、vo、syn)は「以前から、自分を知ってもらおうとする行為そのものが、表現の本質だという考えがあった」と発言したわけだが、約2年2ヵ月ぶりとなるニュー・アルバム『Unknown Tokyo Blues』において彼は“生々しい感情を伝える”という方向性をさらに強く打ち出した。現在の音楽シーンはひたすら即効性を求めている(ように見える)。多くのバンドが“オーディエンスが盛り上がりやすい”という機能性を高め、その当然の結果として似たような楽曲が数多く生まれる──そんな現状に対してアベンズは「人と人との感情のやりとりこそが、音楽の本質である」と力強く宣言しているのだ。そのことをもっともわかりやすく示しているのが、「叡智に退化しよう スペースエイジへ四足で行こうぜ」(「Citizen Song」)というフレーズだろう。

 サウンドの手触りも大きく変化している。まるでレッド・ツェッペリンのような豪快なバンド・アンサンブルからスタートする「Citizen Song」、ファンキーなグルーヴを生み出すベース・ラインと刺激的なスクラッチ・サウンドを軸にした「Tokyo Techtonix」、“近未来のハードロック”とでも形容したくなる「20XX」など、全体を通して、しなやかな肉体性を感じさせる仕上がりになっているのだ。もともとライブではフィジカルなステージを繰り広げていた彼らだが、本作によって初めて、ステージの感覚をパッケージすることに成功したとも言えるだろう。また、木幡のボーカルが前に出ているのも印象的。彼が紡ぎ出す、どこか日本的な叙情性を湛えた歌もまた、このバンドの大きな武器なのだ。

 好むと好まざる関わらず、我々は他者との関係を無視して生きることはできない。感情を一方的に押し付けるのではなく、他者の存在を認めながら、しっかりと交流させること以外に豊かな人生はありえない(残念ながら)。『Unknown Tokyo Blues』はそんな当たり前のことを改めて教えてくれている。

(森朋之)

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