アーバンギャルド ALBUM「鬱くしい国」ディスクレビュー

鬱くしい国

ALBUM

アーバンギャルド

鬱くしい国

徳間ジャパンコミュニケーションズ

2014.06.18 release


渦巻く鬱々とした感情をポップスに昇華

 社会学者の古市憲寿さんの代表作「絶望の国の幸福な若者たち」によると、2010年の時点で20代男子の65.9%、20代女子の75.2%が現在の生活に“満足”していると回答している。もちろん現状に対する不満はいろいろあるのだろうが、将来的に生活が向上するわけもないので、結果的に“現在がいちばんいい”と(これは私の解釈なので、気になる方は著作をチェックしてください)。そのことについて思うことはいろいろあるし、人によって捉え方も違うだろうが、アーバンギャルドの『鬱くしい国』は、そんな若者の状況をリアルに描きつつ、そこに渦巻く鬱々とした感情をポップスに昇華しているという意味で、きわめて貴重な作品だと思う。

 「鬱くるしい国の あいさつはおもてなし」(「さくらメメント」)、「救ってくれなきゃ スクウルカ?アスト」(「生教育」)、「自分に自信がないから写真を撮る」(「自撮入門」)といった気の利いたフレーズを駆使しながらアーバンギャルドは、2014年の現実を残酷なまでに描写してみせる。生きる意味とかはもちろんわからず、鬱は常態化して認識すらされず、なぜかアジアの緊張が高まりまくり、“強い日本を取り戻す!”みたいなことを言う人が現れる現在。その中で若者はひたすら自分だけを見つめながら日常の中に沈んでいく──しかし、このアルバムを聴き終ったあとに残るのは無常でも絶望でもなく、なんだかスッキリした諦念だった。この感じ、悪くない。どこにも存在しない希望を歌われるよりも100倍マシである。

 テクノ・ポップ、ニューウェーブ、ギター・ロックなどを軸にしたサウンド・メイクはさらに進化し、おしゃれなダンス・ミュージックとして機能しているところも本作の魅力。“現実を映すメディアとしてのポップス”としての本作はきっと、病んでることにも気づいていない人たちの間で確実に浸透していくことになるだろう。鬱もリスカも怖くない。だって普通でしょ、それ。

(森朋之)

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