
MINI ALBUM
GLIM SPANKY
焦燥
Virgin Records
2014.06.11 release
<CD>
ブルースが体液のようにほとばしる松尾レミの歌声
ボーカル・ギターの松尾レミとギターの亀本寛貴によるユニット、GLIM SPANKY。上手に聞えるよう取り繕うとかってことは一切ない、まさに“感情”という中身がぎっしり詰まった彼女のボーカルは、歌い終わるまでこちらの耳を離さない。時に重厚に、時に風通しのいいフレーズで作品の世界観に寄与するギターの亀本が、そんな彼女の“歌の続き”を奏でていく。レコーディングでふたりに付き合っているのはドラムのBOBOとベースのハマ・オカモトで、心の深いところに届く意図の明確なバンド・サウンドへと至っている。プロデュースは多くの名作を生んでいるいしわたり淳治だ。
1曲目のタイトルが“焦燥感”ではなく「焦燥」というあたり、看板に偽りない。ブルースが体液のようにほとばしる松尾の歌声は、一部で“ジャニスの再来”と言われているそうだけど、あながち大げさな宣伝文句でもないだろう。続く2曲目「MIDNIGHT CIRCUS」では詞の世界観も含めオリジナリティの質の高さを感じる。デビューに際しての“はじめまして”の役割を果たす音源集というのを意識してか、ステージでの彼らの姿を垣間見ることができるライブ音源も2曲入っていて、それらを聴くと、ふたりの繰り広げるステージの熱さが伝わってくる。特に4曲目「Flower Song(Live)」など個人的には今後“アイク&ティナ・ターナーの再来”と呼ばれる人たちになってほしい気も。ところで、カバーも2曲入っているんだけど、なんとアデルとユーミンの名曲……。いい度胸だぜ!(笑)。
せっかくのご縁だし、ふたりには末永く活躍してほしいと思うので一言加えるなら。このままいくとやはり松尾さんのシャウトに注目が集まっていくと思うのだ。もちろんそれは当然の世間の反応だけど、早い段階で叫ぶこととは真逆の呟く歌の魅力も提示してみせれば、叫ぶこともより引き立つのかもしれない。ボサノヴァのマイーザっいう歴史的歌手の作品とか、今度カバーしてほしい気もする。
(小貫信昭)