エレファントカシマシ SINGLE「Destiny」ディスクレビュー

Destiny

SINGLE

エレファントカシマシ

Destiny

ユニバーサル シグマ

2014.06.11 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤/写真 <CD>


ともに歩いて行きたくなるパワーが宿ったラブ・ソング

 愛と希望の歌。こう書くと、なんだか嘘くさく聞こえてしまうのは、今の世の中に愛と希望が欠乏しているからだろう。そんな時代でありながら、リアルな愛と希望の歌を生み出し続けている稀有なバンドのひとつがエレファントカシマシだ。最新シングル「Destiny」はTBSドラマ「ホワイト・ラボ〜警視庁特別科学捜査班〜」の主題歌でもあり、“ヒューマンなラブ・ソング”というドラマ・サイドの要望にこたえて制作されたとのこと。もともと彼らの音楽は人間味と愛に溢れているから、自分たちの音楽性に忠実に作っていけば、ヒューマンなラブ・ソングという設定はそんなに難しいことではないだろう。だが彼らはさらに“その先”に踏み込んでいる。彼らの本質が凝縮されていて、なおかつ幅広い層に届くポップさとキャッチーさを備えた楽曲となっているからだ。

 前作「あなた」に続いて、亀田誠治プロデュース作品。作曲と編曲は宮本浩次との共作。つまりかなり深いレベルでのコラボレーションということになる。亀田プロデュースの特徴はアーティストのオリジナリティを尊重して、その個性を際立たせていく点にある。「Destiny」でも歌詞とギター、ベース、ドラムの演奏、音色が見事にマッチしていて、バンド・サウンドもヒューマンで愛に溢れている。大サビでの頭打ちのリズムで始まって、広がっていく展開を始め、キャッチーなポイント、フックとなるポイントが散りばめられているのも特徴的だ。楽曲を家に例えるならば、玄関だけでなく、勝手口、ベランダなど、たくさん入り口がある。聴き手が歌の世界に様々なルートから入って行きやすくなっている。

 が、どんなにポップでキャッチーになっても、軽くなったり、薄っぺらくなったりしないのは結成30数年というドシッとしたバンドの土台があるから、そして宮本の真摯な歌声があるからだろう。深さとシンプルさとが両立している歌詞も実に素晴らしい。「その先の光へ」という言葉が説得力を持って響いてくるのは悲しみや苦しみがしっかり描かれているから。例えば、「生きているだけで精一杯の俺」という言葉があるからこそ、「悲しみのあと人は立ち上がる」という言葉がより強力な光を放っていく。ヒューマンとはつまりはその人間の本質がむき出しになるということ。あがいたり、もがいたりしながら進み続けてきた彼らだからこそ、こんなにも温かくて力強いラブ・ソングを生み出せるのだろう。ともに歩いて行きたくなる。彼らの歌にはそんな信頼と共感のパワーが宿っている。

(長谷川誠)

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