忘れらんねえよ – こだわりの両A面ミニ・アルバム『あの娘のメルアド予想する』が完成。“童貞偽装”で巷をお騒がせ(!?)のソング・ライター柴田隆浩が語る。

忘れらんねえよ

話題騒然! 忘れらんねえよのボーカル&ギターの柴田隆浩の童貞偽装が発覚! こう書くと、まるで芸能スキャンダル誌のようなノリになってしまうが、ことの発端は両A面ミニ・アルバムの『あの娘のメルアド予想する』の1曲目「ばかばっか」の歌詞の中で、作者の柴田が童貞喪失を告白して、なおかつその事実をツイートしたことだった。これまで非モテの童貞というのが彼らの立ち位置となっていたのだが、ここに来て、まさかのカミング・アウト。もちろんこれは話題性を持たせたいという彼らの宣伝戦略の一環でもあるわけで、本来ならば、“あざとい”という印象を受けかねないのだが、彼らの場合はむしろ拍手を贈りたくなった。そこまでやるかというバカバカしさ、楽しさも含めて、エンターテインメントとして成立しているから、そしてまたいい音楽を作り続けているという大前提があるからだ。彼らはみじめさも情けなさもかっこ悪さもさらけだして、唯一無二の個性を発揮して、曲を作っている。いい歌を作ったら、どんな手を使ってでも、ひとりでも多くの人に聴いてもらいたくなる。そんなひたむきな想いにも胸を打たれた。話題性だけじゃない。音楽とキャラ、彼らは一曲で二度おいしい。というわけで渦中の柴田に童貞偽装の真相も含めて聞いていく。

INTERVIEW & TEXT BY 長谷川誠


これはいかん! 俺らだけにしかできない表現にしなきゃ

──柴田さん、今、かなり世間を騒がせていますね。

童貞偽装で騒ぎになって、高校時代の古い友達から突然メールをもらったりしました。俺らはこれまで、音楽情報サイトでだいたい900リツイートくらいがマックスだったんですが、童貞偽装で一気に3400リツイートまでいって、“マジ?”って(笑)。そうなると、高校の友達までもが知っちゃうレベルになったので、とりあえず成功ですね(笑)。

──どんな反応が返ってきているんですか?

中には怒っている人もいるんだけど、ほとんどが“ばっかだね〜”“くだらねぇ〜”みたいな感じ。でもお客さんが実際にどんな反応をするのかは、ライブをやって実際に顔を見ないとわからないところもあるので、ちょっと怖くもありという。

──その話題の発端となった新曲「ばかばっか」収録の両A面ミニ・アルバム『あの娘のメルアド予想する』は、忘れらんねえよの本質がよりはっきり出た作品なのではないかと思ったのですが、どんな意識で作ったのですか?

最近考えているのは、もしかしたら俺らはロック界のダチョウ倶楽部さんをめざせるんじゃないかってことなんですよ。要はいじられキャラ(笑)。たぶん、俺らって、かっこいい曲を作って、いいライブをやって、以上! おしまい! っていうだけじゃダメで、プロモーションやツイッターのひと言も含めて考えてやっていかないといけない。そこも含めて活動することで、忘れらんねえよらしさが出るというか、逆に言うと、そこまでやれるバンドだなと。

──音楽活動だけじゃダメって、どうして思ったんですか?

2ndアルバム『空を見上げても空しかねえよ』は音楽愛や人間愛を歌っていて、すごくいいアルバムが出来たと思っているんですけど、世の中的にはあまり刺さっていかなかったんですよ。メチャクチャ売れると思ったのに横バイで、バンドを次のステージに連れていってくれなかった。そのときに思ったのは2ndで歌ってることはほかの人でも歌えることなんじゃないかってこと。だったら、もっとイケメンが歌うほうがいいだろうし、もっと特徴的な声の人が歌っているほうがいいだろうし。これはいかん! 俺らだけにしかできない表現にしなきゃと思ったんですよ。音源をやり切ることもそうだし、ジャケットもそうだし、宣伝もそうだし。今回は全部やり切っていこうと。これから坊主になるんですけど、それもその流れのひとつですね。

──童貞偽装のお詫びということですか?

ええ。ミニ・アルバムの発売日前日に坊主にするんだけど、EXILEみたいにライン入れようかなって。実は全然反省してない、みたいな(笑)。これって強烈にほかのバンドとかぶらないし、ようやく自分たちらしさを発揮できたんじゃないかなって手ごたえがあった。それがダチョウ倶楽部さんだったというか(笑)。正しかったかどうかは世の中の反応が決めるものだと思うんですが、現時点で自分たちにできるのはやり切っていくことだなと。

最終的に自分なりに行き着くところまで行き着けました

──曲作りに関してもやり切って作ったわけですね。

「ばかばっか」の歌詞も一回、レコーディングもマスタリングも終わった状態からやり直したんですよ。「歌詞を変えたい」ってわがままを言って、いろんな人に迷惑かけた。

──どうして作り直そうと思ったんですか?

録り終わったときに、ほかのバンドでも歌えることを歌っちゃってるなって気付いたんですよ。「ばかばっか」以外の歌は俺らしさを出すモードで作れたんですが、「ばかばっか」はアルバムのリード曲というプレッシャーもあって、振り切って書けてなかった。

──リード曲って、最も表に出ていくから、アルバム全体の印象を左右する部分もありますもんね。

そうなんですよ。だから怖がっちゃって、最初は丸い言葉になってしまっていた。こういう歌詞だと、男の人は喜ぶかもしれないけれど、女の人は嫌がるかなとか、歯止めがかかってた。これはマズいぞって。

──具体的にはどこを書き直ししたんですか?

「世の中ばかばっか」って繰り返してるんですけど、それ以外のところはほぼ全部ですね。面白いなって思い付いたことが出てきたら、そこからさらに追求していった。もっと面白いものってなんだろう? 本当に俺が心の底から思っていることってなんだろう? って。そういう作業は苦しかったし、怖かったけれど、やり切るしかないわけで。最終的に自分なりに行き着くところまで行き着けました。

──大サビは童貞偽装発覚に至った、童貞を捨てたことを告白する歌詞になっていますが、ここは?

いちばん最初に曲だけ出来てた時点で思い付きはしていたんですよ。ここで“童貞を捨てた”って書いたらどうかなって。メンバーにもスタッフにも誰にも言ってなくて、俺以外知らない状態だったので、歌の中でゲロったら超面白いなって。でも最初に書いた歌詞はそれとは違うふわっとしたものだったんですが、やっぱり覚悟を決めて言っちゃえって。

──ためらいは?

怖かったですよ。最近、僕は与沢翼がすごく好きで、超面白いなって思っているんですけど、あの人がウェブで、“百の常識的な行動よりも一の非常識な行動のほうが圧倒的に強い。それがバズマーケティング(口コミを利用したマーケティング)の本質だ”みたいなことを言ってて、なるほど! って。えぐい方向に突き進む勇気になりました。でもさすがに童貞偽装のツイートの一発目を出す瞬間は怖くて手が震えましたけど(笑)。

──メンバー、スタッフの反応は?

メンバーにはなかなか言い出せなくて、ずっと先延ばしにしてて、フラワーカンパニーズさんとのツレ伝ツアーの打ち上げで盛り上がって、そのあと、久々にメンバーだけで飲みに行く流れになり、俺らがバンド始めた頃に根城にしてた飲み屋に行ったら、気持ちが高まってきたので、告白しました。そうしたら、“えっ?”みたいになって、笑っていましたね。“童貞を捨てた”って言葉には“ふうん”って感じになるのに、“童貞偽装してた”って言うと、一気にキャッチーになっていくんだなって発見もあり(笑)。

超個人的なところを突き詰めると、あるラインで普遍的なものに変わる

──「ばかばっか」ってほかの部分もかなりパーソナルな内容が歌われていますが、リアルに響いてきました。

僕は神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」って歌がすごく好きで、あれっての子さんの超個人的な日記みたいな歌詞じゃないですか? 俺らの知ったことじゃないはずなのに、なぜかあの曲を聴くと、泣いちゃうんですよ。超個人的なところを突き詰めると、あるラインで普遍的なものに変わるというのがロックンロールの魔法だと思ってて。そういうところに到達したくて、追求しました。童貞偽装の話も“うわっ”て引いてしまう人がいるだろうなって予想がついたんだけど、やりたいんだからしょうがない。“この歌詞で傷つきました”って人がいたら、ごめんなさいとは思うけれど、やめるわけにはいかない。俺のやりたいことを体張ってやりきって初めて、ほかと似てない自分たちだけのオリジナルの表現ができるんだと思っているので。

──「ばかばっか」って、世の中に対して、怒りをぶつけるだけの歌ではないですよね。自分への怒りもあるだろうし。しかも最後の「このちっぽけな僕を照らせよ」というフレーズがすごくいいなと。

世の中のいろんなものをディスっているんだけど、そう言ってる自分がいちばん愚かじゃんってところまで行けたから、良かったなと思っています。

──2ndアルバムを作ったからこそ、ここまで行けたというところもありそうですね。

そうですね。2ndアルバムもべつに自分が思ってないことを歌ったわけではなくて。人っていろんな要素があるじゃないですか。いいことを言うときもあれば、怒っているときもある。要はそのどの部分に光を当てていくか。俺は結局、しみったれたとこ、みっともないとこを表現するのが得意なんだろうし、お客さんはこっちのほうを喜ぶんだろうな、ダチョウ倶楽部さんをめざすべきなんだろうなってだけで、ほかの部分を描かないということではないんです。

──バンドの演奏もソリッドでシャープで存在感があります。サウンド面でも着実に先に進んでいることが伝わってきました。

歌詞のテイストは1st(『忘れらんねえよ』)に戻ってるようなところもあるんですが、音像、音作り、演奏のグルーヴは5倍くらいかっこよくなっていると思いますね。2ndを作る中でアイゴン(會田茂一)さんと一緒にがっつりやっていく中で鍛えられたところでもあるし、フェスや対バン、ツアーなどでやってきたことがバンドの筋肉になってきているところもあるだろうし。

──2曲目の「タイトルコールを見ていた」でのバンドの演奏も見事です。ドラムのリズムもみずみずしいですね。

初めて今はやりのキック4つに裏ハットっていうのをやってみようぜって。で、トライしたら、全然できるなと思いました。

──「僕の名前はなかった」と「僕らの居場所を探す」というネガティブな要素とポジティブな要素、両面あるところもいいなあと思いました。切ないけれど、先に向かうまなざしもある。

これは1stの頃だと書けなかった歌詞だと思いますね。2ndまでやって辿り着いた大人の境地。先に行きたいという気持ちが出てる曲になりました。

自分でも何を書いてるのかさっぱりわからない

──「体内ラブ」の歌詞も最高ですね。なるほど、忘れらんねえよのハッピーなラブ・ソングって、こういう形でしか成立しないんだなって思いました。

そうかもしれない(笑)。いわゆる男女のハッピーなラブ・ソングは書けないですからね。だってそういう経験はゼロだから(笑)。この歌詞、自分でも何を書いてるのかさっぱりわからない。これ、どうしようもないですよね(笑)。

──そこが最高だなと思いました。

この曲、もともと個人的に弾き語りでやっていた歌なんですよ。でもサビの最後の「足りないな 足りないな 分かっている」ってところで俺自身泣きそうになるし、お客さんも泣きそうになる。“なんだ、この曲は?”って思っていて、今回、抜擢しました(笑)。

──この楽しいダンス・ミュージックのノリも気持ちいいです。

西城秀樹さんの「YOUNG MAN」を意識したんですよ。今のBPMとサウンドと俺ららしい歌詞でやると、どうなんだろうって。「大腸小腸」のところも“YMCA”が元ネタだったんです(笑)。

──やけっぱちのハッピーなラブ・ソングという(笑)。

ねえ(笑)。でもこの曲がいちばん好きっていう人も結構いるんですよ。

──ライブでも盛り上がりそうですよね。

ただ、Wiennersの玉屋(2060%)くんがカッティングのギターを弾いていて、それが神がかっていて、僕はまったく弾けないので、ライブで再現不可能っていう(笑)。

──いつか「体外ラブ」も成立するといいですね。

“体外ラブ”ねえ。ないなあ〜なくていいです(笑)。

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