Dragon Ash – 自身初となる日本武道館にて行われた、アルバム『THE FACES』を掲げた全国ツアー“THE SHOW MUST GO ON”のファイナル公演。

Dragon Ash

今年1月に3年ぶりのアルバム『THE FACES』を発表。2月より全国ツアー“THE SHOW MUST GO ON”をスタート。そして、そのファイナルを彼らは日本武道館で迎えた。1997年のデビューから約17年。スタンディングでのライブにこだわった結果、単独公演としては初となる武道館という舞台。決して武道館公演が今や特別ではない。到達点でもない。それはDragon Ashにとってもそうだろうと思う。だからこそ、KjはMCで「武道館でやることが俺たちにとっていいのか悪いのか。お前らにとっていいことなのかわからない。けど、1年でいちばん楽しかった日になれば、やる意味があると思うんだ」と語ったのではないか。けれど、 “いつもどおりに”が“いつも以上に”熱さを爆発させたパフォーマンスとレスポンスには、確実に“スペシャル”な何かがあった。この日、武道館という場所にいた、メンバー、スタッフ、オーディエンスの身体に刻み込まれた、それぞれにとってのスペシャルなライブ──書き手・唐沢和也が見た、5月31日のDragon Ashのライブ・ドキュメントを届けよう。

TEXT BY 唐澤和也


共有できる人がいる。待っててくれる人がいる

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誰にだって、特別なバンドと特別な曲がある。
2014年5月31日。九段下の坂を上っているだけで、汗がにじんでくる。真夏日なこの日、開場の夕方4時を待たずに観客が集まっていた。彼らの目的は、Dragon Ash史上初の日本武道館ライブである。
オフィシャル・グッズの列に並ぶ者。缶ビールのプルタブを起こす者。沖縄から来たという26歳男子は、横浜の友達とふたりで路上に座っていた。今日この時、路上に座って汗をかきながら開場を待っているということは、彼にとっての特別なバンドは、もちろんDragon Ashだ。
「沖縄での仕事を辞めて来ました(笑)。あ、辞めたって言ってもバカみたいな理由じゃないっすよ。本当にやりたい仕事を始めるために今までの仕事を辞めて、そしたらこの武道館ライブ開催の告知があって、“行くしかない!”って。Dragon Ashは生まれてから最初に見たカッコいい人たちです。小学校のときだったんですけど、『陽はまたのぼりくりかえす』の頃で。音楽はもちろん、生き方みたいなものにも影響を受けてると思います。ストイックっていうんですかね。10年を超えてもちゃんと新作を作り続けて、内容もすごくって、ライブもきっちりやるって、ものすごく音楽に対してストイックだと思うから。それに比べたら全然だけど……実は俺、自分のお店を持ちたいんです。ファッション関係の。だから、今日のライブを観て死ぬほど盛り上がってひと区切りつけたら、まずは金を貯めます。肉体労働系の仕事のあてがあるんで(笑)」

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沖縄独特の柔らかいイントネーションと、それとは裏腹の筋の通った言葉に“Dragon Ashのファンっぽいなぁ”と思う。
そんな彼に「どうしても今日やってほしい特別な曲は?」と聞くと、少し考えてから「Freedom of Expression」と答えてくれた。1999年のアルバム『Viva La Revolution』に収録されている1曲で、英語詞故に昔は意味なんてわからずただカッコいいと感じ、大人になってからはその意味にもしびれたそうだ。
思わず「わかる!」と握手をしてしまう。
いや、アルバム『THE FACES』のツアー“THE SHOW MUST GO ON”のファイナルであることを考えると、同曲がアクトされる可能性は低い。
ただ、個人的にも「Freedom of Expression」は特別な曲だった。

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沖縄の彼いわくの「生まれてから最初に見たカッコいい人」をつかまえて失礼にもほどがあったのだが、『負け犬伝説』という、ひどいタイトルの書籍で、Kjにこの曲に絡めてのインタビューをしていたのだ。2002年のことだ。
同曲でのKjは「I’m loser so fuckin’ what?」と歌う。

200万枚を売り上げた『Viva La Revolution』に収録された曲だというのに異彩を放つ“loser“という単語。“loser ”を負け犬と訳してもいいだろう。『負け犬伝説』という書籍は、その頃はやり始めていた“勝ち組、負け組”という評価基準にどうにも納得がいかず、Kjを含む様々なジャンルの6人の男に「あなたが思う勝ち負けとは?」を問い続けたインタビュー集だった。世間の尺度で言えば、完全に“勝ち組”側の人間であるはずの男が「I’m loser so fuckin’ what?」と歌っているのが興味深かったというわけだ。

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予定されていたニュー・アルバムのリリースが延期されたのにもかかわらず、開催された全国ツアー終了後のインタビュー。当時のKjは言う。
「勝ったり負けたりというのは、やっぱ、ありますよ。今回のツアーを終えて、思うところもあって。なんて言うか、“このためにCDを出したりとかの表現をしてるんだ”と、すごく思ったんです。音楽を始めたいちばん最初の頃は、俺なんかだと、THE BLUE HEARTSが好きで、友達とカバー・バンドをやっていた。単純にその行為自体が楽しかったんですけど、今の立場だとか疲れだとかを考えると、たぶん、その行為自体の楽しさだけだったら、もうやってないと思うんですよ。じゃあ、なんで続けんのかっていうと、共有できる人がいる。待っててくれる人がいる。そういうのが大きいんだとすごく感じたんです。だから、ツアーのためにCDを出したりとかの表現をしているんだなと思ったんです」
──その言葉から12年。
Dragon Ashを共有できる人たちは、武道館ライブのチケットを瞬く間にソールド・アウトさせた。

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