
ALBUM
味噌汁’s
ME SO SHE LOOSE
EMI RECORDS
2014.05.28 release
初回盤 <CD+グッズ>
通常盤 <CD>
この一杯に、乾杯
2005年に結成。“RADWIMPSのライバルバンド”として知られ、昨年9月に宮城で開催されたRADの野外ライブ“青とメメメ”に出演し、また翌月にリリースされた「五月の蝿/ラストバージン」のカップリングには「にっぽんぽん」をねじ込んでみせた(?)味噌汁’sが満を持して——なのかどうかはわからないが——メジャーデビュー。ずっとベールに包まれたままでいたい覆面バンドのようなので、その素性についてあれこれ詮索するのは野暮なのだろう(Yahoo!で検索したら“味噌汁’s 正体”とか“味噌汁’s 誰”などのセカンドワードが出てきたのでちょっと笑ったけど)。ただ、このバンドを語る際にやはりどうしてもRADWIMPSが追求している“個々人の身体と真体”を強く揺さぶるロックのダイナミズムや野田洋次郎という類い稀なソングライターが提示する“世界の実景を見る視点”との比較は避けられない。このRADのライバルバンドは、RADの音楽世界を“君たちちょっと肩に力が入りすぎないかい?”というようなテンションで誰よりも優しい眼差しで批評しているし、それと同時に“君たちが表現していることはちょっとも間違ってないよ”という仕草で誰よりも力強く握手している。
かくして味噌汁’sの1stアルバム『ME SO SHE LOOSE』は基本的にストレートなロック/パンク・サウンドが押し出され、そのなかにほのかな実験性が滲む楽曲もあり、そして全体的にメロディが抜群にいい。それもまあ、当然か。リリックの筆致もひたすらシンプルな言葉で表面的にはナンセンスとも言えるユーモアに覆われているが、その実、言葉遊びの精度はかなり高く、ときに無邪気な戯れのなかに鋭利なラジカリズムが浮かび上がる。RADが『×と○と罪と』という自由でタフな大傑作を作り上げたからこそ、味噌汁’sもこのアルバムを作れたのだと思うし、それは双方にとってとても幸福なことだと思う。
(三宅正一)