
MINI ALBUM
ウソツキ
金星人に恋をした。
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT
2014.06.04 release
<CD>
完璧なウソツキ
なんというか、完璧な作品だ。竹田昌和(vo)の透明感と芯のある歌声。メロディアスで爽やかな楽曲。日常をドリーミーに切り取る言葉たち。聞くものに一切の不快感を与えず、ツルリと耳に流れ込んでくる音楽。正に、王道の歌ものバンドだ。これだけなら、キレイな音楽を作るバンドですね、で終わってしまいそうだが、面白いのは彼らの名前が“ウソツキ”であるということ。
ウソツキは、2011年2月に活動をスタートしたギター・バンドだ。2012年3月に5曲入り自主制作盤『雨降るバス停』をライブ会場限定で発売。同年にキューンレコード主催の“キューン 20 イヤーズオーディション”で、ナタリーが選出する“敗者復活枠”にノミネートされる。2013年の夏に4人編成となり、現在では都内を中心に活動を続けている。
先に述べたオーディションのコメントで、彼らは“嘘つきがステージにあがればスターにだってヒーローにだってなれる。”と述べている。確かに、本当の気持ちや感情を堂々と明示するのがはばかられる日常では、正直な思いを朗々と歌う人間のほうが異質で非現実的だし、そう考えるとミュージシャンなんて人たちは大概が嘘つきだ。でも、その言葉に豊かな旋律がつき、美しい声で届けられることによって、それはとても素敵な嘘になる。素敵な嘘は夢を見せてくれる。夢は、いろんなものに作用する。その仕組みを竹田が知っているとするなら、これほどに完璧な楽曲にこだわるのも納得ができる。その旋律と声に紡がれる嘘がキレイであればあるほど、我々は悦んで騙されるのだから。これは、なんとも歪んだ捉え方かもしれない。けれど、彼らのツルリとなめらかな音楽の奥底には、そういった日常への愛や憎悪、音楽の力に対するある程度の諦観とそれを踏まえた希望が、粘度をもって底流しているような気がしてならない。
はたして、そんな臆見さえもウソツキの鮮やかな音楽に、目眩ましをくらっているだけかもしれない。けれど、単純に聴いて気持よくなるだけにしては、あまりにクオリティが高過ぎる音楽なのだ。聴けば聴くほど、もっともっと竹田の人間味を覗いてみたくなる。そのあら探しをしてみたくなる。ひとまず今作ではウソツキに騙されることにして、今後の彼らの音楽を大いなる期待を抱きながら、待つこととする。
(小島双葉)