The Flickers EP「AT FIRST LIGHT」ディスクレビュー

AT FIRST LIGHT

EP

The Flickers

AT FIRST LIGHT

avex trax

2014.06.04 release

<CD+DVD> 写真
<CD>


繊細な詞が突き刺さり大胆サウンドに容赦なく打ちのめされる

 高揚感を促すエレクトロ、実験的で独創的なアンサンブルによるニューウェーブ・サウンド、焦燥感溢れるガレージ・バンドなどの要素を取り入れながら、その範疇からどこまでもはみ出そうとするアプローチが特徴の3人組。計算された音の構築から滲み出すエモーショナルな叫びや鮮やかな情景描写が強いインパクトを残すバンドだ。ここにきて一気にシーンに増殖する“踊れるロック”というカテゴリーに収まりきらない、しっかりとしたオリジナリティで着実に人気と評価を高めつつある。

 そんな彼らがメジャー移籍第1弾EPをリリース。リード曲となる「midnight express」は、彼らの特徴をクリアに打ち出したダンスロック・ナンバー。気持ちを煽る打ち込みのシーケンスと勢いに満ちたバンドの生音に乗せ、中性的なボーカルで歌われるきれいなメロディと、抑えきれない感情の渦がほとばしる。後半に向かうに連れて疾走感が増していくような、前のめりで生々しい衝動を詰め込んだ楽曲に仕上がっている。タイトルが意味するように、沢木耕太郎の小説「深夜特急」にインスパイアされた楽曲ということで、ジャケットには「深夜特急」のカバー・イラストの作者、アドルフ・ムーラン・カッサンドルの作品が使用されている。

 カップリングの「drive me lunatic」は緻密に散りばめた音が妖しい光景を浮かび上がらせるナンバー。2ステップ系のビートが否応なしに体を反応させる。80’Sな肌触りが懐かしくも新しい「in my headroom」は英語詞のニューウェーブ・ディスコで、明るい曲調と淡々としたボーカルの対比が面白い。「detonation」はぶ厚い音をバックにラップ調の歌でクールに始まりながらも、サビでは堪らず爆発。トランス系のアレンジによる盛り上がりはライブの光景が目に浮かびそうだ。

 彼らの真骨頂と言える作品から、あらたな息吹きを感じさせる意欲作も収録した、未知数の魅力が感じられるメジャー・デビューEP。今にもバランスを崩しそうな繊細で危うい歌詞と、リミッターを振り切った大胆なサウンド・メイキングは、人間の中に潜む感情のカオスを容赦なくあぶり出す。

(岡本明)

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