Base Ball Bear ALBUM「二十九歳」ディスクレビュー

二十九歳

ALBUM

Base Ball Bear

二十九歳

EMI RECORDS

2014.06.04 release

完全生産限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


自らの人生観とギター・ロックの未来を鳴らした『二十九歳』

 ミニ・アルバム『THE CUT』で久しぶりに小出祐介にインタビューさせてもらったとき、彼がしきりに言っていたのは「ギター・ロックに飽きている」だった。ギター・ロックが大好きで、ギター・ロックを信頼し、ギター・ロック・バンドとして約13年間活動してきた彼だからこそ、ともすれば袋小路に陥りやすい“ギター”を鳴らして“ロック”するという普遍的だがやり尽くされているこのスタイルの実験と検証、そしてその意味性の拡張に積極的だった。そして、この約3年振りのフル・アルバム『二十九歳』という作品について。

 彼らの平均年齢が冠されたアルバム・タイトルには“20代最後”という逃れられない情緒も確かにあるし、収録曲(例えば「Ghost Town」「The End」など)にも、やるせない黄昏と“足掻き”を叫ぶシーンがある。だから本作はそういうセンチメンタルな作品なのか、と言うと、決してそうではない。印象としては、お客とも、ギター・ロックとも、慣れ合うことを嫌っている。そう思うくらいに、ソリッドすぎるほどソリッドなバンド・アンサンブルと、16曲も収録されているのに1曲も同じ手法で作られた曲が並んでいないゴリゴリに攻めたこの姿勢が、バンド史上かつてないほど“大人げない”。

 ギター・ロックと言えばコード・ストロークで“ジャカジャーン”というのが定石だが、今回のアルバムでは特に、ミニマルな弦の振動を重層的に鳴らしてダイナミズムを生み出す手法や、タイトだが豊富なリズム・パターンを組み合わせたフィジカルの強いリズムに耳が奪われる。「ERAい人」のギターは狂気的なまでにその要素が引き出された曲であるし、“ジャカジャーン”と鳴らす曲にも、“あえてそう鳴らす”明確な意図と意志を感じる。小出の歌詞も妙にいきり立っており、恋の曲であっても“業界のタブー”のようなことを熱く歌うラブ・ソング「yellow」のあとに「そんなに好きじゃなかった」であっさりフラれて“あー女ってなんだ!?”と岡村ちゃんバリに、男の悲哀をファンクにかましてみせたりもする。とにかく、それなりにシリアスなテンションですさまじい情報量をこの1枚にギュウギュウと詰め込んでいるのだが、ラストの「カナリア」で、少しだけ愛敬を振り撒きながら締めているところが憎めない。“29歳”という彼らの現在地から、人生観とギター・ロックの未来を鳴らした作品。そういう意味で、ベボベの活動におけるマイル・ストーンであることは間違いない。

(冨田明宏)

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