aiko ALBUM「泡のような愛だった」ディスクレビュー

泡のような愛だった

ALBUM

aiko

泡のような愛だった

ポニーキャニオン

2014.05.28 release

初回限定仕様盤/写真 <カラートレイ&初回限定ブックレット&特典CD「aiko’s Radio side A」>
通常仕様盤 <特典CD「aiko’s Radio side B」(生産数量限定)>


人が抱える曖昧な気持ちを躊躇なく切り分けたアルバム

 気になるところがいくつもあって、気にするポイントによって感想が微妙に姿を変えていく。音楽でも小説でも映画でも、そこをもっとも大事にしたい身としては、『泡のような愛だった』はまさに出逢えてうれしい一枚だ。

 天気に例えるなら、晴れた空の向こうにあるのだろう雨雲の予感であり、曇天の隙間に漂う微すかな光の気配であり……といった感じ。晴れ、雨、曇、みたいにハッキリと定まってくれれば話は簡単だけれども、人と人の間に横たわるものは、そうそうハッキリはしてくれない。晴れ間は一瞬、いきなりのゲリラ雨、降りそうで降らない雨模様……など、定まることのほうが珍しい。

 という“定まらない何か”がていねいにていねいに歌にされているのが今作。そもそも、およそ安定とはほど遠い自分の気持ちや誰かとの関係を描くことに定評のあるaikoだが、今回は、その切り口がとにかくシャープ。外科医のごときメスさばきで、最も大切なところ、隠しておきたいところが、躊躇なく容赦なく切り取られていく。小気味良いほどの手さばきでサクリ、グサリと、曖昧だった心が切り分けられていく。“どこかで心が繋がっていると勘違いしてるあたし”(「あなたを連れて」)、“これ以上距離を縮めたら全部変わってしまう”(「距離」)など──。正しいことが必ずしもうれしいこととはかぎらない、という、ある意味逃げ場がないところまでaikoが持つメスは及んでいる。

 そこが素晴らしいと思った。前に進んで行くためには、一度すべてを壊すくらいの気持ちが必要なときもある。怖くても、つらくても、事実を見る。知る。すべてはそこから始まる。そういう本当の強さとエールを感じた。だからこそ今回は、アップ・テンポで勢いのある演奏が印象的に残る曲が多くなっているのかもしれない、とさえ思った。一度目、二度目、三度目……と聴き返すほどに曲の新しい解釈と出逢えるのも、今作の楽しさのひとつ。より一層心の奥底へと歌のサーチライトが届いた、11枚目のアルバムである。

(前原雅子)

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