ハルカトミユキ EP「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」ディスクレビュー

そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。

EP

ハルカトミユキ

そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。

Sony Music Associated Records

2014.05.28 release

<CD>


たったひとりの君のために歌う究極のラブ・ソング

 タイトルにすべての想いが集約されていると言っていいだろう。

 メジャー・デビュー作となった1stフル・アルバム『シアノタイプ』以来、約半年ぶりとなる新作「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」は、ハルカトミユキがインディーズ時代に発表した“短歌タイトル”シリーズ通算3枚目のEP。このタイトルには、暗喩や隠喩や無駄な装飾はいっさいない。五・七・五・七・七の31音節を読んでもらえれば、ハルカトミユキの本心がすぐに理解できると思う。

 この、“私にとっていちばん大事なのは、この歌を君が好きだっていってくれることだけなんだよ”というまっすぐな想いを引き出したのは、本作の1曲目に収録されたバラード「その日がきたら」である。曲名にある “その日”とは“世界が終わる日”のこと。終末がテーマになっているため、絶望の歌と捉える方もいるだろうが、個人的には、結婚式に流してもいいくらいの究極のラブ・ソングだと思っている。主人公の“僕”は、世界がどうなろうと関係ない、その日がきたら、「ただ一人君だけを守る」んだと誓う。それは、作詞作曲を手がけたハルカが“世界が終わるときにすべてを犠牲にしても守りたいものはなんだろうか?”と自問自答した末に到達した結論だろう。その過程で、彼女は「例えば君に聴こえないなら こんな歌なんて燃えてしまえばいい」と、自身の歌う理由についても触れている。君を守れないのであれば、歌をうたう意味もないという想いが、短歌タイトルとなって表れたわけだが、もちろん、ハルカトミユキの音楽をより多くの人に届けたいという想いがないわけではない。ただ、それはあくまでも結果であり、目的はやはり、“たったひとりの君のため”だけに歌うこと。本作が、これまで以上にハルカの歌声と言葉が前面に押し出された音像になっていることも関係しているのかもしれないが、この曲には、たったひとりに向けた歌にしか得ることのできない強さも感じる。

 さらに、独裁国家で歌い継がれる童歌のような「赤くぬれ」、ミユキが作曲を手がけ、サビでは2本のメロディがエロティックに交錯する「かたくてやわらかい」という新曲に加え、大学生の頃に書いたというインディーズ時代の楽曲「385」(38.5度の熱の意味)と「青い夜更け」(キャリア唯一の3拍子)の計5曲が収録されている。初のツアー後に書かれた新曲3曲には、“歌、詩”という言葉があり、インディーズ時代の2曲は“大人”になる葛藤や不安、寂しさが歌われてることも偶然ではないはず。表面的には青く静かなように見えて、内面では赤く燃えている彼女たちの今、現在がリアルに伝わってくる一枚となっている。

(永堀アツオ)

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