椎名林檎 ALBUM「逆輸入 ~港湾局~」ディスクレビュー

逆輸入 ~港湾局~

ALBUM

椎名林檎

逆輸入 ~港湾局~

Virgin Records

2014.05.27 release

初回限定生産盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


「未来」に視点を向けたセルフ・カバー集

椎名林檎のニュー・アルバム『逆輸入 ~港湾局~』は初のセルフ・カバー集。これまで彼女が広末涼子やともさかりえ、SMAPや栗山千明など名立たるアーティストに提供してきた楽曲の“ハズレのなさ”は特筆すべきもので、だから、ファンにとっては非常にうれしいアイテムになっている。デビュー15周年を迎えた昨年からライブ・ベスト『蜜月抄』や客演曲を集めたコンピレーション『浮き名』など数々の集大成的アルバムをリリースしてきた彼女にとっても、ここで作家としてのキャリアをまとめる大きな意味合いを持つ一枚と言えるだろう。

ただ、このアルバムが面白いのは、そういった性格の作品でありながら、視点が“過去”ではなく“未来”に向いていること。全11曲、それぞれにアレンジャーを迎え、まったく新しいサウンドに蘇らせている。TOKIOに提供した「渦中の男」はAA=の上田剛士の手によってデジタル・ハードコアに生まれ変わり、PUFFYに提供した「日和姫」はTHE STARBEMS日高 央が前のめりなパンク・ロックに味付けしている。

ほかにも「主演の女」は「あまちゃん」を手がけた大友良英がスリリングなジャズに、「プライベイト」は前山田健一がファンタジックなトイポップに、「真夏の脱獄者」は、大沢伸一がむせ返るファンクに仕上げている。小林武史、根岸孝旨という名プロデューサーも、自らの手腕を巧みに披露し、椎名林檎という稀代の女性シンガーの魅力をポップスとして引き出している。

これはどういうことか。おそらく昨年にリリースした中田ヤスタカが編曲の“熱愛発覚中”から続く、あらたなモードの模索でもあるのだろう。気心の知れたコラボレーターと共に歩み続けるのではなく、あらたなプロデューサーを起用して、常に鮮烈な存在で居続ける。例えばマドンナがそうだ。東京事変を解散したあと、今の椎名林檎も、そういう存在として自分を位置づけているのだと思う。

6月にはW杯の興奮を煽るサッカーアンセム「NIPPON」が次のシングルとしてリリースされる。今年は椎名林檎のさらなる新境地が開けていくはずだ。

(柴 那典)

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