The Mirraz SINGLE「この惑星(ほし)のすべて」ディスクレビュー

この惑星(ほし)のすべて

SINGLE

The Mirraz

この惑星(ほし)のすべて

Virgin Records

2014.05.21 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


バカ正直さに加えてのラブ。

 2013年の「NEW WORLD」では“ヒット・チャートでは相変わらずのアイドル人気だ”“歌詞がほとんど同じの歌に飽き飽きしてる”と歌い、その直後、MGMTやThe Strokesなどたくさんの洋楽ロック・バンドの存在を叫んでみせた彼ら。そこから感じられるのは、正直さ、そしてバカ正直さのふたつにほかならない。前者は感じたままに歌う実直さのこと。それが毒になろうが薬になろうが知ったことではないという、向こう見ずの発露。パンク・スピリットと書いてもいい。そして後者は、“新しい世界”など幻であり、まやかしにすぎないことを身体の芯では認めながら、それでもそこに賭けてみる気概のことだ。

“世界”を掴むための最短距離は、動かないことだったりする。自分たちの殻に閉じこもり、内部の熱だけを高めてゆくというメソッド。例えば洋楽らしいことをやりたいのであれば、もっともっと小さなサークルがあるはずだし、そのサークルでのトップや自己満足を狙うというのが、もっとも達成感を得られる道。しかし彼らはそれをよしとせず、かなりの遠回りを選んでいる。洋楽育ちにはゴツゴツと扱いづらい日本語を選択してでも、“自分たちが伝えるべきものを歌いたい”という気持ちに殉じた。それをバカ正直と言わずしてなんと言えばいいのかと思う。

 2014年の最初を飾る「この惑星(ほし)のすべて」にも、その感情を象徴するラインが登場する。そしてその、“視界は狭い 集中すればするほど狭くなる/都合のいいように見える もっと遠くを見たい”という自己問答は、“君さえいればそれこそがこの惑星(ほし)のすべて”というクライマックスへと着地する。そう、彼らの新曲は耳たぶの先まで赤くなる、ザ・ラブソング! なのだ。バカ正直さに加えてのラブ。これが響かないわけがない。休符をたっぷりと取ることで硬度を増したギター。血管の奥でうねりまくるベース。散弾となり顔面に浴びせられるドラム。そのすべてが“愛しい君”へと疾駆する。もちろんこれまでの彼らにもラブ・ソングは存在したが、ここまで大きく開かれていたものはなかったように思う。“新しい世界”を手に入れるには、他者の“世界”と外交し、自分の“世界”を送り込むことが必要不可欠。それを知った彼らは、他者の恋愛や愛情に深く入り込み、そこに“新しい世界”、いや、“惑星”を独立させるかのような歌を書いたのだ。遠くの窓の明かりそれぞれに渦巻く、現在進行形の恋にも、戻らない愛にも、この歌はワイルド・バンチ(強盗団)のように入り込み、ガツガツと食い荒らす!

 食い荒らす、と言えばカップリングの「ステーキを食べに行こう」は至極痛快なアコースティック・ジャミング。この曲もラスト1行の破壊力が特筆ものなのだが、それは各々で確認してほしい。どうしてもここには引用できない理由があるのだ。絶対に後悔はしない。わたしが保証する。愛に生きる人間は全員、このCDを買おうではないか。

(祭蓮しずか)

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