SALU ALBUM「COMEDY」ディスクレビュー

COMEDY

ALBUM

SALU

COMEDY

トイズファクトリー

2014.05.21 release

<CD>


SALU(サル)による進化を促す革命的ヒップホップ

 革命的な傑作だ。音楽シーンに影響を及ぼす斬新さと、リスナーに変革を促す強い説得力を備えている。詩的で哲学的で社会的なリリック。淡々&飄々としていながらも、タフさと独自のしなやかなタイム感を備えたライミング。まるで映画のサウンド・トラックのように歌の世界を立体的に広げていくイマジネイティブなトラック。その3要素がしっかり噛み合って、独自の世界を構築している。SALUの音楽が個性的であるのは自らの声、肉体、精神を通して、ヒップホップという表現を徹底的に消化しているから。つまりヒップホップっぽい音楽をなぞっていくではなくて、SALUの音楽を究めていこうとしているからだろう。

 個々の曲が有機的に結びついて、コンセプチュアルな作品として成立しているところも見事だ。アルバムのテーマはタイトルにもなっている“COMEDY”だろう。人生は至近距離から見つめると、悲劇的なものとなり、俯瞰から眺めると、喜劇的なものとなっていく。これは後者の視点を備えた作品。とは言っても、他人事としてではなくて、現実と向き合い、この世界でいかにサバイブしていくかを突き詰めている。知的ではあるのだが、冷めていない。いやむしろかなり熱い。人生という映画の主人公は自分。そんなメッセージを読み取ることも可能だろう。

 ヒリヒリした不穏な空気が漂う「100th Monkey」は現実社会及び作品への入り口の役割を果たしていて、秀逸な導入部となっている。「New Balance」の“バランス取らないのがNEWBALANCE”、「BMS」の“その影を自ら破け”など、感性や知性を刺激するアグレッシブなフレーズ満載。「Comedy」「Weekend」「Sphere」など、映画名、俳優名、役名といった映画にまつわる単語がたくさん登場する曲が目立っていて、音楽ファンはもちろん、映画ファンがニヤリとするポイントも散りばめられている。ゾンビのカクカクした動きまでもをリズムで表現したような「東京ゾンビ」、ソウル・ミュージックの高揚感を最新のセンスで再構築した「Goodtime」、アンビエント風味のあるサウンド・コラージュによって、シュールな空間を生みだした「Sphere」など、音楽的なアイデアにも富んである。レビューも映画を引用して締めよう。映画「猿の惑星」は人類から猿へと主人公のバトン・タッチが描かれた映画だった。『COMEDY』は主人公が他者ではなくて、自己であることの宣言であり、あらたなる音楽の夜明けを告げるアルバム。これは2014年を代表するエポック・メイキングな作品として認知されるべきだろう。

(長谷川 誠)

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