THE NOVEMBERS ALBUM「今日も生きたね」ディスクレビュー

今日も生きたね

ALBUM

THE NOVEMBERS

今日も生きたね

MERZ

2014.05.14 release

<CD>


THE NOVEMBERSのアンセム=祝歌、誕生

 シングル表題曲「今日も生きたね」を聴いて、唐突な連想ではあるけれど、ふたつのことを思い出した。ひとつはある先進的な展示で人気の動物園の園長が、その園を構える地域一帯に生態系が崩壊するほど過剰に鹿が繁殖し、園長自らハンターとなったことに対する否定も肯定もいずれも“不愉快なものを見たことへの他人事の反応”と話していたこと。もうひとつはザ・スミスの「MEAT IS MURDER」である。モリッシーは歌詞そのものでは“食肉は殺戮だ”と綴っているが、それは主義主張ではなく、当たり前に行われていることを当たり前に思うなという比喩であると受け取っている。THE NOVEMBERSが初の”アンセム=賛美歌、祝歌”として世に送り出す曲にそんな感想を持つのは、皮肉でもなんでもない。無意識だが私たちは無自覚には生きていないからだ。

 そして面白いのはこの曲の質感が、別に告発的でも攻撃的でもないところにある。徹頭徹尾、サウンドのラウドさや突き刺さるような質感が大半を占めていた前作にあたるアルバム『zeitgeist』(と、言いつつラストの2曲で自らに尋問するような冷たい地下室から太陽のある場所に出るような展開であることこそが重要なのだが)の制作を経て、この新しい曲の持つ安堵感すら内包した体温のある音像に辿り着いたことそのものも味わいながらこの曲を身体に通すと、小林祐介の思考がより近く感じられるのではないだろうか。とは言え、アルバムでも試みられたどこか遠くで刻まれているようなビート、ごく近い場所で日常の言葉のように歌われるボーカルなどは、通底したものを感じる。新鮮なのは削ぎ落としたという意味での素朴なアンサンブル、そして特に耳を惹いたのがどこか日本のニュー・ミュージック黎明期的な一部のメロディ。これは小林のフェイバリットである荒井由実のエッセンスが奇しくも今、この曲を選んで生まれたのかもしれない。

 そしてもう1曲は初期から演奏されてきた「ブルックリン最終出口」を今の感性で定着させたもの。振り払おうにも否応なく内在する自分の残虐性を俯瞰で見るような、歌詞とは対照的な平熱感を持った仕上がりは、このシングルにこの2曲が収録されたことは必然だったのだ。なお、パッケージには同じ内容で宛名やメッセージを手にとった人が自由に書く(描く)ことができる“シェアCD”が同梱。誰かに“聴いてほしい”でも“聴いてどう思う?”でもいいだろうし、渡すタイミングもいつでもいいと思う。つまりこの曲を受け取ったその先にあなたはどうするのか? というメッセージが込められた、いかにもTHE NOVEMBERSらしい提案も、「今日も生きたね」の一部なのだ。

(石角友香)

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