クリープハイプ SINGLE「寝癖」ディスクレビュー

寝癖

SINGLE

クリープハイプ

寝癖

ユニーバサル シグマ

2014.05.07 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


悔しさや悲しさはすべて音楽の中の物語になる

 今年の1月、ベスト盤の発売に関して、オフィシャル・サイトにて「レコード会社が決めた一方的なものでバンドは不信感を募らせている」というメッセージを掲載し、興味本位の見物客も含めた騒動に発展したクリープハイプ。しかし、彼らは「この悔しさも悲しさも怒りも全部音楽にします」とコメントし、尾崎世界観は「どうしても伝えたい事があるので1回だけツイートします。 音楽を聴く人の力を信じてます」とツイートした。そんな過程を経て完成した移籍第1弾シングル「寝癖」には、別れの予感がもたらす“切なさ”や、心のズレから生ずる“もどかしさ”はあれども、別れそうな相手への“憎しみ”はいっさい描かれていない。移籍騒動に関しては、それだけでもう、十分なのではないかと思う。

 移籍第1弾シングルを制作にするにあたって、尾崎の頭の片隅にあったのは、インディーズ時代の名曲「左耳」だという。「左耳」は、彼氏の左耳に見つけたピアスの穴に元カノの存在を感じた彼女が、自分のピアスでその穴を埋めるというラブ・ソングだった。現在もライブの定番曲となっており、クリープハイプの表現スタイル──男女目線で描かれたストーリー性のある歌詞と、疾走感のあるサウンドとグッとくるメロディが世間的に広く知られるようになった、ある意味、出発点を象徴する曲。そういう意味では、「寝癖」も、「左耳」〜「手と手」〜「イノチミジカシコイセヨオトメ」に連なる、クリープハイプのド真ん中の曲で、スタイルとしては原点回帰しているが、シンプルなアレンジで、バンドの現在の表現力の高さをより強く感じさせる作りとなっている。

 聴き手には、まず、歌詞カードをじっくり読んでもらいたい。寝癖で彼の嘘を見抜く“あたし”と、嘘が見抜かれていることを気づきながら気づかないフリをしている“僕”。「君の髪が乾くまではここにいると思うよ」という“僕”が、君のドライヤーが終わると家を出ていってしまうのだろうか……。筆者は、一聴した際は、僕はすでに心変わりしていて、「髪が白くなるまでずっとそばにいたいよ」という“アタシ”の気持ちにはこたえられないのではないかと思っていたが、ミュージック・ビデオの映像(日本武道館2デイズ公演で流れたお兄ちゃんの映像と繋がってます!)は、ふたりが笑いながら家を出ていくシーンで終わっていた。そう考えると、「君の髪が白くなってもそばにいたいと思ってるよ」というフレーズのほうが、僕の本当の気持ちだということになる。ふたりは、少しすれ違ってしまっただけで、またやり直せるかもしれない。なにしろ、寝癖で心の変化がわかるくらい、お互いのことをよく見ているふたりなんだから……。と、「寝癖」に登場するふたりの心境や、物語の続きを考えながら聴いてもらいたい一曲となっている。

 2曲目の「ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ」は昨年のツアー中に書いたというロック・ナンバーで、尾崎が一人称でファンに対して「今日は来てくれてほんとうにありがとう」と歌っている。3曲目の「ねがいり」は2006年にインディーズでリリースした、尾崎にとって思い入れの深いミドル・ナンバーで、この曲も男女の視点で書かれている。また、初回盤のみに収録されている4曲目のカントリー・ワルツ「目覚まし時計」は、長谷川カオナシがメイン・ボーカルで、尾崎も歌っているが、登場人物は3人いる。

 音盤の中にいるのは、どんな人たちで、どんな物語が展開されているのか、自分なりに考えてみてほしい。

(永堀アツオ)

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