Koji Nakamura ALBUM「Masterpeace」ディスクレビュー

Masterpeace

ALBUM

Koji Nakamura

Masterpeace

キューンミュージック

2014.04.30 release


ソロだけどひとりじゃない、1stソロにして集大成

 ナカコーは一途だ。1997年に4人組のギター・ロック・バンド、スーパーカーの一員としてキャリアをスタートさせた彼は、2000年発表の3枚目のアルバム『Futurama』からエレクトロニカを導入。打ち込みやインスト曲も増え、いちメンバーいち楽器という旧態の役割分担も捨て、よりフレキシブルに自分の感覚を研ぎすませていくようになった。2002年発表の4thアルバム『HIGH VISION』からは、映画「ピンポン」の主題歌「YUMEGIWA LAST BOY」や、のちにアニメ「交響詩篇エウレカセブン」の挿入歌やゲーム「Another Century’s Episode」に起用された「STORYWRITER」、2002年・2007年・2011年と時代を越えて3度もCMソングに起用された「STROBOLIHTS」などの名曲を生み出した。また、バンド在籍時の2001年から“NYANTORA(ニャントラ)”名義でソロ活動を始め、チルウェイヴ/アンビエントポップ系のアルバムを発表。2005年にバンドを解散してからは、ソロ・プロジェクト“ILL”を立ち上げ、ミニマリズムを追求する姿勢を見せた一方で、元スーパーカーのフルカワミキ、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers,toddle)、牛尾憲輔(agraph)とともに新バンド“LAMA”を結成し、ノイズやアンビエントもあくまでもポップに鳴らしてみせた。さらに、「爽健美茶」をはじめとするCM音楽、ラジオ・ドラマ「エーテル」やアニメ、映画の劇伴、リミックスやアート・イベントの音楽など、幅広いフィールドで活躍。と、彼の活動の形態や場所、ジャンルやプロジェクトは非常に多岐に渡っているが、その根底にあるのは、“新しく、面白い音(や人)を探している”という姿勢だろう。まだ誰も鳴らしたこととのない音を探し、鳴らし、重ね、構築していくのが好きだという気持ちは、1997年から現在まで一貫しているのではないかと思う。

 長々とキャリアを振り返ったのは、彼の新プロジェクト“Koji Nakamura”の1stソロ・アルバム『Masterpeace』が、これまでの活動を集大成したような作品になっていたから。革新的で実験的なのに、聴き心地はあくまでポップな歌ものを中心に、ニューウェーブ、ポスト・ロック、テクノ、アンビエント、チルアウト、ミニマリズム……と様々なジャンルを独自ブレンドで混ぜ合わせ、自分の感覚で配合したうえで、新世界を構築している。また、プログラミング、シンセ、ギター、べースなどを演奏したナカコーは、サウンド・クリエイトと歌唱に専念。スーパーカー時代のレーベルメイトであったACO、アニメ「交響詩篇エウレカセブン」の京田知己監督、ラジオ・ドラマ「エーテル」の脚本家である永津愛子、クリエイティブ・ディレクターでもあるJINTANA(Pan Pacific Playa)、ふくろうずの内田万里、LEO今井に作詞を依頼。つまり、好奇心旺盛に様々なジャンルを飲み込んできたナカコーのアーティスト/マルチプレイヤーとしての集大成であるとともに、これまで果たしてきた刺激的なクリエイターたちとの出逢いも統合したような一枚となっているのだ。

 ナカコーの音をまだ聴いたことないという方には、LEO今井が作詞した「Diamond」をおすすめしたい。一定のコードを鳴らすピアノとナカコーが歌う「Day Of Diamond」というフレーズが繰り返される。このまま6分も続けばミニマル・テクノになるだろうが、少しずつ楽器が重ねられていき、セクシーな歌声も温度を高め、やがて、今日的なディスコ・ミュージックへとなっている頃には、ファンキーなグルーヴに自然と体が揺れてるはずだ。

(永堀アツオ)

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