HaKU ALBUM「シンバイオシス」ディスクレビュー

シンバイオシス

ALBUM

HaKU

シンバイオシス

EMI RECORDS

2014.04.30 release

初回盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


共生することで生まれ、共有することで進化する

“ヤマアラシのジレンマ”という用語を聞いたことがあるだろうか。ヤマアラシは、相手に自分のぬくもりを伝えようと思っても、身を寄せれば寄せるほど、身体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。つまり、“自己の自立”と“相手との一体感”というふたつの欲求によるジレンマだ。お互いを傷つけ合いながらも、どうしようもなくぬくもりを求めながら共に生きる、哀しくて愛しい人間の性ともいえる。

『シンバイオシス』=“共生”の名前がついた今作は、これまでも対人型オルタナティブ・ダンス・ロック・バンドとして、音楽と、人と向き合ってきた彼らが、一層聴き手一人ひとりの目を見つめ、ジックリと話し合うような気概を持って完成させた1枚だ。

 2012年のメジャー・デビュー以降、精力的なライブ活動の中で鍛えあげられた、しなやかで強靭なバンド・サウンド。HaKUの宝ともいえる、辻村有記(vo、g)の中性的で透明感のある歌声と言葉。限界までフィジカルに頼った制作技法とパフォーマンス。ほんの数曲聴けば、彼らがこの1〜2年の中で、バンドのアイデンティティをとてもていねいにブラッシュアップしてきたことがわかる。それだけ音源としての完成度は非常に高いわけであるが、それ以上に感動すべきは、先にも述べた彼らの気概だ。

 ダンス・ロック・ミュージックという土俵の上で、ここまで各曲のカラーを描き分けられるのは、才能だけによるものではない。それぞれに明確なメッセージと、明確な受け手のシェープが存在しているからだろう。それは、辻村をはじめとする彼らが、受け手の体温に触れようと、自分たちの体温を伝えようと、時には傷つけ合いながらもがいたからこそ、勝ち取れたものだ。受け手と共に生きることを望む意思は、“聴かせる”工夫となって音に表れ、それは結果的に、歌って踊れるダンス・ロックとなり、HaKUの醍醐味ともいえるステージでの輝きにつながっている。さらには、その輝きをバンドを進化させるエッセンスに昇華させる力を、彼らは持っている。

 今作をもって、HaKUは様々なことがクリヤーになったのではないだろうか。明確さを持った表現者は、特にこんな時代では、強い。彼らの白き閃光は、これからどんな未来を照らしてくれるだろう? メジャーというフィールドに上がってから、まだ1年半。着実に迫力を増していく彼らに、今後も期待し続けたい。

(小島双葉)

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