宇宙人 – アニメ「惡の華」のエンディングを手がけたことを機に、不思議でディープなその世界に話題沸騰中。おじいちゃんの死にまつわる3部作シングルが登場。

宇宙人

名前は宇宙人。タイトルは「じじい」。ジャケットは矢追純一。果たして、その内容がさっぱりわからない作品がここに誕生した。2012年のメジャー・デビュー以降、2枚のミニ・アルバムとシングル1枚をリリースし、徐々に解明されてきた宇宙人の生態は、今作を持って痛快に裏切られ、またもや謎に包まれてしまった。その宇宙人を牽引するボーカル・しのさき あさこは、いったいどんな人物なのか? その恋愛観、死生観、今後の展望までを遠慮なく聞いてみた。結論から先に述べると、やっぱりさっぱりわからない人だった。ただ、彼女は圧倒的に面白い。興味本位で繰り出される質問の、斜め上を華麗に攻めてくる彼女の言動をご堪能あれ。

INTERVIEW & TEXT BY 小島双葉

 

矢追さんは、存在が宇宙なんじゃないかと思います

──曲はもちろん、アート・ワークも、ゲストも、とにかくツッコミどころ満載な作品に仕上がっていて。これまでの宇宙人を前提として聴くと、かなり意外な印象を受けました。でも、間違いなく感動大作だと思います。良い歌です。

ふふふ。

──曲に関しての前に、まず気になってしょうがないので、ジャケットについて。この12センチ四方の中に、よくここまでインパクトを詰め込めたなと(笑)。今回、矢追純一さんをジャケットにっていうのは、しのさきさんの案で?

今回の曲は “死ぬ”とか“生きる”とかについて、深く考えて作った曲で。でも、死んだことないから。その未知の領域まで絶対知っている人っていうのは、やっぱり矢追さんしかいないなと。メンバーとスタッフ、全員一致で決まりました。

──たしかに、昨今はそうですね。少し前だと丹波哲郎さんとかもいらっしゃいましたけど。

それに、“宇宙人”といえば矢追さんっていう、両方です。

──うん、すっごいピッタリです。しかし、よく実現しましたね。スタッフの方が事務所に直接オファーをして?

はい。矢追さんは、心以上の何か広いものを持ってるというか、存在が宇宙なんじゃないかと思います。初めてお会いしたときも思いましたけど。

──初対面はジャケット撮影のとき?

これ(ジャケット写真)と同じセットでアー写(上の写真)も撮影したので。

──え、これってイラストじゃないんですか? 実写の?

セットです。それをちょっとだけ写真加工してます。

──そのときって、矢追さんとどんなことをお話しされたんでしょう。

普通の話と、あと矢追さんが宇宙塾(矢追純一氏のプライベートフォーラム)をやっていて、その合宿エピソードとかを教えてくれたりして、なごませてくれたり。

──「しのさきさんもおいでよ!」みたいな。

ううん、押し付けるようなことを絶対に言わない人で。本当に大好きです。

──良かったですね、今回こうして奇跡のコラボができて。さて、曲についてもおうかがいしたいんですけど……。

はい。

見た目のイメージもないとダメだと思って、「ロボジー」を見ました

──今回はこれまでになく、具体的な風景描写の歌詞も多いですけど、しのさきさんご自身は、おじいちゃんと一緒に住まわれてた時期はあったんですか?

一緒には暮らしてなくて……。メンバーのにいや(ひでひろ)くんから、小さい頃によくおじいちゃんの自転車の後ろに乗せてもらっていた、というエピソードを聞いて。「じじい-導かれし宇宙-」は、そうやって自転車で一緒にどこか行っていたのに、おじいちゃんだけどんどん遠くに行ってしまう悲しさ、嘆きを書いてます。

──なるほど。あの、悲しいお話で本当に申し訳ないんですけど、おじいちゃんが亡くなられたのは、いつ頃ですか?

(父方も母方も)両方、元気です。

──……は?

(笑顔)

──あの、でも、歌詞の内容的にはおじいちゃんの死をきっかけに書かれたのではと……。

おじいちゃんの死を悲しむ、おじいちゃん子が主人公のストーリーを作って。うふふふ、ちょっと詐欺っぽいかな(笑)。あっ、でも、しっかりそのときになりきって書いたので、すごく苦しかったです。

──そうですか……完全にやられました(笑)。

スタッフ 亡くなったひいおじいちゃんとひいおばあちゃんのほうがモデルになってるんだよね、どちらかと言うと。

──そのときのことも思い出しつつ、にいやさんのエピソードを入れ込みつつ、主人公になりきって書いた。

はい。ちゃんとなりきるには、じじいの見た目のイメージもないとダメだと思って、映画「ロボジー」を7〜8回見ました。見た目のモデルは「ロボジー」の俳優さん(ミッキー・カーチス)。

──……まぁ、ご健在なのは何よりです(笑)。でも、“じじいの死”っていうものをテーマにしようと思ったのはなぜなんですか?

2013年の私の口癖が“じじい”だったみたいで、無意識のうちに連発してたらしいんです(笑)。それを覚えていたディレクターさんが「今回はじじいをテーマに曲を作ったらどう?」って言ってくれて。でも、タイトルが“じじい”で、ふざけたような曲だとただの悪口で終わっちゃう。どうするかって言われたときに、当たり前すぎて普段考えない“家族愛”とか“生きる”とか“死ぬ”っていうことを、これを機会にじっくり深く考えて、作ろうと。

──すごく大切なテーマだし、しのさきさんの描き方も素晴らしいと思います。

やった(笑)。1曲目の「じじい-導かれし宇宙-」は、生前を混ぜつつ、死へ向かっていくじじいを見ている自分の嘆き、“行かないで”っていう叫びの曲で。2曲目「じじい-おわりのはじまり-」は死に直面したときの喪失感、後悔の気持ちなんですけど、でも、徐々にそれとも向き合っていって、“今日も自分は生きている”という実感を、ここで受け取る。3曲目「じじい-そして伝説へ-」ではじじいが天国に行くんですけど、死神や天使と楽しく暮らしていくのを見て、“死は怖くない。今を精一杯生きたらOK!”って、楽しく終わります。それぞれの曲中でもどんどん感情が変わっていっているし、3部作すべてを通しても変わっていくから、それを表現するのは難しかったです。

──最後が明るい希望で終わってるのがいいです。

作るときもすごく苦しかったので、そんな自分のためにもこれを作ったのかも(笑)。

歌い方でも伝えなきゃっていうのは、すごく意識しました

──歌い方も、かなり変化を付けてますよね。『慟哭』(2012年5月リリース)や『珊瑚』(2012年7月リリース)のときの淡々とした歌い方と比べたら、ものすごく感情の抑揚が付いていて。

歌い方でも伝えなきゃっていうのは、すごく意識しました。

──ASA-CHANG&巡礼との『白日夢』(2013年10月リリース)のときにも、何かのインタビューで「初めて感情を込めて歌う機会だった」と話されてたんですけど、これまでと違う歌い方っていうのは大変でしたか?

大変でした。自分が感情を込めても、それを相手が感じなかったら意味がないので。オーバーめに歌いました。

──じゃあ、レコーディングでも、自分ではなく周りが良し悪しを決めていった?

判断は全部委ねます。

──ひとりよがりにならないように。具体的な描写もそうですけど、ここまでわかりやすくストーリーになっているのは、今までなかったですよね。

ないですね。自分の中ではあっても、こんなに人に伝わる形は新しいです。

──曲が出来上がって、メンバーに聴かせたときの反応はいかがでしたか?

驚きを隠せない様子でした。今までの曲と全然違うので。

──ざわつくみたいな(笑)。

アレンジも、今までは歌詞は見ずにやっていたけど、今回は歌詞を見てアレンジを考えるっていうのに全員で挑戦しました。

──っていうのは、しのさきさんの中でも歌詞を聴いてほしいっていう気持ちもあったし。

気持ちがどんどん変わっていくのがわかるように。1曲目の最後で「行かないで」と歌っているけど、でも、じじいは行ってしまう。だから、ここから後ろは8分の11拍子に変わってたりします。しのさきこだわりです。ふふふ。

──普段、曲を作るときはしのさきさんが曲の芯を作っていって、アレンジは全員で?

はい。最近はパソコンでも曲を作れるようになったので、そこでフレーズを作っていったり、あとは個人が考えてきたやつを取り入れたりしつつ。

──その時点で、歌詞もざっくり付いてるような感じで。

メンバーに渡すときは、ほぼ完成してます。

──じゃあ、詞を練る作業は全部ひとり?

でも、赤ペン先生っていう人もいます。

──……それは、実在しますか?

します(笑)。メールとか電話でやりとりしたり、呼び出しされたり。

──あ、ディレクターさんですね。

鬼先生です。

──怖い方なんですか?

厳しいです。でも優しい赤ペン先生。鬼赤ペン(笑)。

──メンバーとは結構仲良いほうですか?

わりと仲良しです。曲作りのときくらいしか会わないけど(笑)。

──そもそも、バンド結成のいきさつみたいなものって?

それがわからないんです。いつの間にか集まった4人で。

──共通点がない?

まったくっていうくらいないです。

──導かれて集まったってことにしておきましょう(笑)。「惡の華」もそうでしたけど、しのさきさんは歌詞を書く際、作品の舞台となってる土地へ赴いたり、かなりガッツリと向き合って書いてますよね。

「歌詞を書く作業は自分をえぐる作業だ」と、名言を残したディレクターがいます。

──そうですか(笑)。

そういう名言を今回やってみるっていうのも、挑戦なんじゃない? って言われて。

──そういう「やってみたら?」っていうのには、毎回素直にチャレンジしてみるほうなんですね。

自分では何も考えずに生きているタイプなので、何が来てもすんなり、が結構多いです。

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