宇宙人 SINGLE「じじい」ディスクレビュー

じじい

SINGLE

宇宙人

じじい

2014.04.23 release


じじいへの愛

 4人組ポップ・バンド、宇宙人。彼女/彼らに関しては、ナゾが多くて、まだ実態が掴めないでいる。だが、ナゾが多いからこそ、気になって仕方がない存在になっている。なにしろ、音楽シーンへの登場も突然だった。2008年にボーカルでソング・ライターのしのさきあさこを中心に、おそらく、彼女の地元である高知で結成されたあと、地元でのライブ活動などを行わないまま、2010年の“FUJI ROCK FESTIVAL”のROOKIE-A-GO-GOステージに出現した。翌年となる2011年8月にはインディーズから1stアルバム『お部屋でミステリーサークル』をリリースし、第4回CDショップ大賞の“中国四国ブロック賞”を授賞。2012年にメジャー・デビューを果たし、2枚のミニ・アルバムを発表。2013年に入ると、後藤まり子、の子(神聖かまってちゃん)、南波志帆をゲスト・ボーカルに迎えて、アニメ「悪の華」のオープニングテーマを制作。同年5月に自身が歌い直した「悪の華(宇宙人ver)」を1stシングルとしてリリースし、ロストコープ(実写の映像をアニメにトーレスした手法)を用いたMVが“あの気持ち悪いアニメで流れる奇妙な歌”として話題を集め、Yahoo!映像トピックランキングでウィークリー1位を獲得。そして、前作から1年ぶりにリリースされるニュー・シングルのタイトルは「じじい」で、ジャケットには’70年代にUFO&超能力ブームを巻き起こした矢追純一氏が起用され、3曲目のゲスト・ボーカルには「アルプスの少女ハイジ」のアルムおんじ役や『ドラゴンボール改』の亀仙人役などで知られるベテラン声優の佐藤正治を迎えている。

 果たして、音盤のほうは、シュールで不思議な感触はそのままに、実にコンセプチュアルな作りで、語弊があるかもしれないが、これまでになくわかりやすい内容となっている。テーマは、おじいちゃんの死。3部構成で孫からじじいへの愛が歌われている。物悲しくもサイケデリックなロック・ナンバー「じじい-導かれし宇宙(コスモ)-」でじじいと別れ、感涙必死のバラード「じじい-おわりのはじまり-」でじじしの死に直面し、じじいや死神、天使が登場するミュージカル・ナンバー「じじい-そして伝説へ-」で天国へと旅立ったじじいと再会する。そして、長い時間をかけて、喪失感から抜け出し、「今をパラダイスにかえる」という心境に辿り着く。誰もが一度は経験する“身近な人との永遠の別れ”や“生と死”という問題と真摯に向き合い、あくまでもポップに聴き手に提示する手際は、おおらかでまっすぐな歌い方で、話の筋もわかりやすいぶん、切実に胸に響く。

(永堀アツオ)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人