TAMTAM MINI ALBUM「For Bored Dancers」ディスクレビュー

For Bored Dancers

MINI ALBUM

TAMTAM

For Bored Dancers

ビクターエンタテインメント

2014.04.23 release


ダブで踊り、ダブを歌おう

 ライブではつねにダブPAを帯同し、生演奏にリアルタイムでディレイ、リバーブ処理を施す21世紀型ダブ・バンド、TAMTAMのメジャー・デビュー・ミニ・アルバム。“ダブ”と書くと、コアな音楽ファン向けか? と思われがちだが、彼らの音楽には、普段はJ-POPしか聴かないという人にも訴求する魅力がある。もちろん、サウンド・プロポーションはダビーだ。ドラムやベースには強いリバーブがかかっているし、わかりやすく言えば、ボーカルもエコーによって、広がりと浮遊感が与えられている。また、音の処理はダブ的だが、サウンド全体で言えばレゲエやスカ、ロックステディはもちろん、カットアップやボーカルチョップを使った「フリー」や、ニューヨークの女性ラッパーの名前が飛び出す「トゥナイト」からは、ファンクやヒップホップの影響も見える。ロックやテクノ、アンビエント、エクスペリメンタル、シューゲイザー、ポスト・ロックにも通じているようにも感じる。おそらく、レゲエを含む様々な音楽から、自分たちの感性に沿って取捨選択したうえで、ダブ処理を施した、独自ブレンドの複層的な音楽を作り上げているのだろう。とかく洋楽偏差値の高いサウンドではあるのだが、聴き心地はあくまでも“歌もの”なのだ。メロディ・ラインは強く印象的で、歌声は、バンド内の楽器のひとつには収まらない存在感がある。

 例えば、1曲目の「クライマクス」。女性ボーカルのKuroが口を開き、少しだけ甘い声を吐くたびに、気持ちが徐々に高められていき、サビではまさにクラマックスのように爆発する。スロー・テンポの曲では、リラックスできるような癒しの効果もあるのだが、美しくたゆたうだけではなく、音を前面で破裂させることもできる。彼女のトランペットから始まる「シューゲイズ」は、涙をこらえて下を向く主人公が思い浮かぶポップ・ソングとなっているし、「バイマイフューチャー」では、歌い手が凛とした存在感を放っているからこそ、破壊と再生の瞬間を疑似体験できる。一度、耳にすると、彼女の声が頭から離れなくなり、サウンドとともに身体に浸透していくような錯覚を覚える。そして、いつの間にか、一緒に歌いながら踊ってることに気づいたりする。TAMTAMは、4つ打ちで客を踊らせるバンドばかりで飽き飽きしてる方にもお勧めしたい、歌えるダンス・ミュージックなのである。

(永堀アツオ)

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