BIGMAMA – “ロック×クラシック”がテーマのコンセプト・アルバム第2弾『Roclassick2』。金井政人が語る“Roclassick”とこれからのBIGMAMA。

BIGMAMA

その名のとおり“ロック×クラシック”をテーマに作られたBIGMAMAのコンセプト・アルバム『Roclassick2』。クラシックの有名曲を噛み砕き、誰もが知ってるフレーズを散りばめながら、彼ら独自のロック・ナンバーに昇華させた7曲が収録されている。

バンドを率いる金井政人へのインタビュー。どうやら彼は“Roclassick”という試みを、バンドにとっての、そして音楽家としての自分のキャリアを踏まえ、かなり大きな視点の中で捉えているようなのだ。いったいどんなことを考えているのか。彼と語り合った。

INTERVIEW & TEXT BY 柴 那典

 

“ロック×クラシック”でライブハウスを熱狂させる

──今回“ロック×クラシック”というコンセプトで改めてアルバムを作るという、その意図はどういうところにあったんでしょう?

バンドの歴史をイメージして、例えばグラフでそれを描いたとしたしますよね。その放物線、曲線がより美しく伸びていくために、このアルバムが必要な気がしたんです。自分にとってもバンドにとってもカンフル剤になるような作用があると思ったんですよね。音楽を作るクリエイターとしての自分にとっても、新しいフェーズになる期待感があって。

──自分のクリエイティビティの幅を広げるという意味もあった。

そうですね。例えば作家はいろんなタイプの本を書いていくイメージがあるんですけれど、それと同じように音楽家もいろんなものを作って、その作品ごとにいろんな評価をされたらいいのにっていう気持ちがあって。僕らBIGMAMAは入り口でこそロックをやっていたかもしれないけど、考えてみればもともとメンバーは5人ともフラットにいろいろ音楽を聴いていたし、作りたいものが増えてきたときにも、いろいろな提案ができる5人で。だからこそ、より実験的に、もっといろいろなことをやっていていいなって思って。それがすごく健全なことだと思った。今回の『Roclassick2』を作るときにざっくりと自分が考えていたのはそういうことです。

──ロックとクラシックをテーマに掲げても、いろんな捉え方、いろんなやり方があると思うんです。その中で、このアルバムはいい意味ですごくベタだと思った。みんなの知ってるフレーズを曲のフックとして使う、それで自分たち流の曲を作るという。こういう作り方になったのは?

それはまず、単純に自分たちのストーリーの中で、“ロック×クラシック”でライブハウスを熱狂させるってことをしたかったんです。

──ライブハウスがイメージとして見えていた ?

改めて、そうですね。自分たちの前回、前々回のアルバムは、むしろライブハウスをどう飛び越えていこうか、もっと大きいところや、聴く人の日常にいかに溶け込むかを自然と意識しているアルバムだったと思っていて。で、今の現実として自分たちがZeppツアーができる状況がある。そこで自分たちがどういうライブをしたいかっていうことを考えて、ひとつ前のシングルの「Sweet Dreams」ができたんです。あれは、僕らにとってひとつのライブの最も美しいエンディングとなるように作った曲で。で、その次に自分たちのライブをレベルアップさせるために必要なものが、ツカミの部分だったんです。

──フックが必要だった。

高揚させたり、熱狂させたりするほうの曲が欲しくなったんです。だから“ライブハウス”を“ロック”と“クラシック”で熱狂させる。この3つのワードを揃えたときに、こういう方向性になってきたということですね。

もともとの曲から連想される言葉をいかに当てはめていくか

──曲を選ぶ過程ってどういう感じでした? いろいろ候補はあった?

はい。だから実際ここからたくさんの曲が溢れているしはみ出ているし、選ばれし7曲なんです。それは好みと、あと僕はひとつだけメンバーにずっと言い聞かせていたことがあって。柴さんにさっき言われてしまいましたけど、「前回よりベタにやりたい」って言ってました。

──その意識はすごくあったんですね。

はい。全部が全部ベタにやりすぎると思い描いていたバランスとはちょっとズレちゃうんですけど、せっかくコンセプト・アルバムって名乗ってやっているんだから、ちゃんとわかってもらいたい。だから、前回よりもさらにわかりやすくやるべきだとは意識的に思っていた部分ですね。特にそれを考えたのは2曲目の「Swan Song」と3曲目の「No.9」ですね。最初の段階で「白鳥の湖」をこういうふうに使いたい、ベートーベンの「第9」をこういうふうに使いたいっていうイメージがあって。そこからこのアルバムの制作が始まったんです。

──これ、最初にあったのはどっちの曲でした?

「Swan Song」です。

──これは「白鳥の湖」という曲をどう見せたい気持ちがあった?

一言で言えばこの曲は “「白鳥の湖」のロック・バージョンで人を踊らせる”っていうチャレンジだったんです。「白鳥の湖」自体、バレエの音楽ですからね。“踊る”というワードがまずあった。だから僕としてはこれをロック・ミュージックとして再構築して人が踊っていたらどうなるんだろうって、そこにロマンを感じて。「白鳥の湖」の旋律でどうやったら人が揺れるんだろう、踊るんだろうっていう。だから、昨今やりすぎ感のある4つ打ちをいかに4つ打ちに感じさせずにノリを作るか狙っていました。

──でも、すごく盛り上がる曲だけれど、歌詞は沈んでいるんですよね。これはどういうところから?

およそ書かれている「白鳥の湖」自体が、もともとバッド・エンドの物語なんですね。呪いをかけられて白鳥の姿になった姫が、呪いが解けず、一緒にいた王子が嘆き悲しんで、ふたりが湖の底に心中していくっていう。今回、僕は作詞において限りなく僕のエゴは捨てているんですね。自分の言葉は置いておいて、もともとの曲から連想される言葉をいかに当てはめていくか、っていうことをやっていったという。

──「No.9」はどういうアプローチでした?

これは「Swan Song」と対照的ですね。「Swan Song」は開始数秒で「白鳥の湖」を感じさせたかったんです。逆に「No.9」は曲のいちばん盛り上がったピークの部分で「第9」のフレーズが鳴ることに意味があった。そのフレーズが持つ圧倒的な祝祭感を、いちばん盛り上がったところでいかにそのまま使うかという。そして「喜びの歌」が単なるハッピー・ソングに聴こえないようなバランスを取る歌詞を書こう、と。そこから“地球最終日最後の日”というイメージが出てきて。

──この曲は“喜びってなんだろう”という問いと向き合ったわけだし、もともとの曲が持っていたものを紐解いていくような作り方になった。

限りなく自分を消していく作業でしたね。でも、自分がそこに言葉を当てはめてくわけで、そこにはどうしても自分のアイデンティティが出てくる。その曲は“喜び”についてすごく一生懸命に考えているんだけど、結果的にちょっとした下ネタに着地していて。それが自分なりの距離感なんですよね。

──「白鳥の湖」と「第9」が最初に決まっていたと。そこから残りの5曲はどういうバランスで決めていったんでしょう?

今回、レコーディングを前半4曲、後半3曲でやっていたんです。まず「Swan Song」と「No.9」、それから「bambino bambina」と「Moonlight」を前半で録りました。

──「bambino bambina」はエルガーの「威風堂々」をどう料理したんでしょう?

あえてチープさを狙ってみる、軽いものをやってみるというのはありましたね。「白鳥の湖」と「第9」は、元の曲を結構大切に使ったんです。だから次はそのままにしないで、「威風堂々」のフレーズを跳ねさせて、威風堂々とさせないっていう。

──原曲の持っている重厚さを反転させたと。

あの、僕、最近こういう場でちょっと褒められすぎだと思うんですよね。結果そのとおりになってないという反骨精神もあって。本当はもっと賛否両論を言われたいくらいな気持ちで“Roclassick”をやっているんですよ。「これはナシだね」とか言ってもらったほうが盛り上がるんじゃないかと思って。そういう意味で、エルガーにも怒られるくらいの気持ちでいいと思っているんです。だから、なるべく子どもっぽく歌詞を書いたという。

──なるほど。「Moonlight」はどうでしょう。これは歌詞も含めて曲の持っているものにいちばん近いような気もしますけれど。

そうですね。ドビュッシーの「月の光」の響きの甘いところだけとっているので。ロマンチックなシーンなんですね。ただ、僕の中ではその曲のイメージはハッピー・エンドではないんです。そういう約束事がありました。実はこの曲は、ほかに候補があったけど著作権の関係で無理だったことがあって、それで選んだんです。もっとアグレッシブな曲を用意していたんですけれど、作曲者の没後そんなに経ってなかったので出来なかったんですね。

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