シュリスペイロフ ALBUM「tutle」ディスクレビュー

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ALBUM

シュリスペイロフ

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DELICIOUS LABEL

2014.04.16 release


なんでもない日常から紡がれる言葉たち

 the pillowsの山中さわおのプロデュースによる、約2年8ヵ月ぶりとなる新作。

 シュリスペイロフというバンドのことを知ったのは2月にリリースされたthe pillowsの25周年記念トリビュート・アルバム『ROCK AND SYMPATHY-tribute to the pillows-』で(「カーニバル」をカバーしてます)、それまで彼らの作品を聴いたことがなかったのだが、1曲目の「下着と日々」がとても良くて、そのまま3回続けて聴いてしまった。この曲で歌われていること──それは作品全体にも通じているのだが──は“ほとんどなんにも起こらない日常”だ。まるで永遠のように錯覚してしまう日々の中で、少しだけ悲しくなったり、少しだけ寂しくなったり、ちょっと笑えたり、安心したり。それだけのことをメイン・ソングライターの宮本英一は、美しく、穏やかなメロディに乗せて歌う。特に「役に立たない事していたい たわいのない話をしていたい」というフレーズには“本当にそれだけでいいのにな”という共感を引き出され、じんわりと感動した。

 その他の収録曲にも、印象的な歌詞がさりげなく入っていて、思わずハッとさせられる。

「僕たちの世界は 自由なようでそうでもない」(「朝ごはん」)
「言いたいことは うそよりも うそくさいな」(「小説」)

 脱力してるフリもせず、無理にテンションを上げることもなく、なんでもない日常の中から、普遍的としか言いようのない言葉を紡ぎ出し、それを歌にする。本当に魅力的なソング・ライターだと思う。また、宮本が生み出した歌の世界をナチュラルに引き立てるサウンド・メイクも素晴らしい。メロディを大事にしながら、独特のオルタナティブ感覚を交え、浮遊感と高揚感が溶け合う個性的なサウンドへと結び付けているのだ。演奏者のエゴではなく、あくまでも楽曲が呼ぶアレンジを施しているところにも好感が持てる。ラストの「どうでもいい」における、研ぎ澄まされたグルーヴもこのバンドの武器だろう。

 本格的な活動スタートから10年目を迎えたシュリスペイロフ。亀(タートル)のようにゆっくりと自らの音楽を深めてきた3人はこれから、少しずつ活動のスピードを上げていくはず。極端に友達が少ない私だが、このバンドが好きな人とは気が合う気がする。

(森朋之)

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