Salley ALBUM「フューシャ」ディスクレビュー

フューシャ

ALBUM

Salley

フューシャ

ビクターエンタテインメント

2014.04.09 release

初回盤 <CD+DVD>
通常盤/写真 <CD>


2014年のJ-POPにおける、最も良質な作品のひとつ

 “フューシャ”とは、アイルランドの初夏を彩る花。赤紫〜ピンクの鮮やかな色彩を持ち、現地の言葉で“神の涙”という意味を持つこの花は、ふたりが紡ぎ出す音楽のイメージとしっかり重なっている。

 うらら(vo/作詞)、上口浩平(g/作曲・編曲)によるポップ・ユニット・Salleyから1stフル・アルバム『フューシャ』が届けられた。シングル「赤い靴」「green」「その先の景色を」「あたしをみつけて」を含んだ本作は、2014年のJ-POPにおける、最も良質な作品のひとつであるときっぱり言い切りたい。

 まず印象に残るのは、リスナーの耳を一瞬で惹きつけるフックと何度聴いても飽きることのない奥深さを両立させた楽曲だ。風を切り開くようなギターと気持ちよく飛び跳ねるビートがひとつになった「Agreed Greed」、’90年代後半のオルタナティブ・ロックを想起させるサウンドの中で色彩豊かなメロディが広がっていく「カラフル」、どこか憂鬱な雰囲気を持ったミディアム・チューン「リセットの呪文」、アイリッシュトラッドのテイストを取り入れた「My little girl」。洗練されたメロディとオーガニックな手触りのサウンドを軸にした彼らの音楽は、このアルバムによってさらに高い評価を得ることになるだろう。

 もちろん、うららのボーカルも強く心に残る。どこまでもナチュラルに響く彼女の歌の魅力が最も端的に示されているのは、アルバムのタイトル曲とも言える「fuchsia」だろう。アコースティック・ギターと歌を中心にした素朴なアレンジの中で彼女は、聴く者の心を根本から励ますような言葉を響かせるている。

「あなたの落とした涙は 真っ赤な花となり 踊るように明日へ導く あなたの為に」

 豊かな詩情と力強いメッセージを含んだこの歌詞を、決して大仰にならず、リスナーに手渡すように表現するうらら。歌のうまさとはピッチの正確さでも声量でもなく、“歌を伝える力”であることを改めて実感させられる。消費されるポップスとは一線を画す、オーセンティックな魅力を持った『フューシャ』。こういう音楽がJ-POPの中心になることを心から願う。

(森朋之)

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