Salley – 待望のフル・アルバム『フューシャ』が完成した。昨年5月のメジャー・デビューから1年。ここまでのふたりの変化と進化とは?

Salley

ボーカルのうららは、ギターの上口浩平が作ったデモのギター・リフを聴いた瞬間に、まず、色が思い浮かぶと言う。デビュー・シングル「赤い靴」は赤、TOWER RECORDS限定でリリースされた爽やかなラブ・ソング「green」は緑、ふたりが出会っていちばん初めに制作したという2ndシングル「その先の景色を」と3rdシングル「あたしをみつけて」は白。そして、1stアルバムには、アイルランドで初夏に咲くピンク色の花の名前である『フューシャ』というタイトルが付けられている。赤に近いビビッドなピンクを冠にし、ふたりの過去・現在・未来が詰め込まれた本作には、様々な色が混じり合う「カラフル」や、水でかすれた墨汁の黒をイメージさせる「リセットの呪文」なども収録されている。まずは、フィドルやティンホイッスルなどのアイリッシュ楽器を織り混ぜた、哀愁漂うエモーショナルなサウンドから浮かび上がる、色彩の豊かさを感じてほしい。そのうえで、音盤の中に潜む小さな女の子を探してもらえたらと思う。この音楽の中には、ちょっと意地っ張りで強がりだけど、本当はナイーブな女の子が踊っていて、きっとその雰囲気や言葉に共感できるはずだから。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ

 

自分たちの歴史の流れというか、自分たちの心の動きを感じてもらえたら

──1stアルバムが完成しました!

上口浩平 全曲全力投球できたんで、ものすごく満足してます。
うらら 私も大満足ですね。“よし、アルバムを作ろう!”ではなく、ずっとコンスタントに“いい曲を作ろう!”っていう想いで作ってきた曲がやっとひとつにまとまった感じなので、シンプルにいい曲を集められた一枚になったなって思いますね。

──どんな作品にしたいって考えてました?

うらら 最初のアルバムなので、コンセプトを決めるよりも、自分たちの幅とか、まだ浅いけれども、今までやってきた歴史が見せられたらいいなって思ってて。2011年の8月にSalleyを結成してからずっと曲作りをしてきたので、ふたりが出会ったとき、デビューが決まったあと、デビューしたあとっていう歴史の流れというか、自分たちの心の動きを感じてもらえたら面白いかなと思いますね。

──アルバムの1曲目を飾る「その先の景色を」(過去インタビュー参考)がいちばん古い曲ですよね。

うらら そうですね。ふたりでいちばん最初に作った曲なので、絶対にこの曲から始めたいなって思って。デビュー・シングル「赤い靴」も出会ってから1〜2ヵ月後に出来た曲だし、2曲目の「Agreed Greed」もSalley的には古い楽曲ですね。
上口 「Agreed Greed」は個人的にアルバムの中でいちばん楽しく演奏できた曲で。作ったときも、イントロのリフがぱっと浮かんで。それが自分的にはすごく新鮮やったんで、ワクワクしながら作っていったっていうだけの楽曲なんですね。そういう勢いが全体を押してる感じというか、エネルギーがある楽曲になったなって思ってて。歌詞は、僕が作った曲をうららに渡して、歌詞を書いてもらうっていうやり方がまだ確立してない時期で。
うらら 上口くんの謎の歌詞が乗ってましたね。「書き換えなくてもいい」って言われたんですけど、最初からハマってた言葉は残しつつ、すごい勢いで書き換えさせてもらって(笑)。私が歌うことを意識しすぎて、すごくかわいらしい歌詞になってたんですよね。ただ、上口くんの歌詞をどけて、別の日本語に置き換えるのが難しかったので、英語の力を借りてて。今ではほとんどやらない、ちょっと珍しい方法で書いてますね。

──サウンドは賑やかで楽しい、お祭り感があるんですが、タイトルが……。

うらら あはは。直訳すると“同意された強欲”で怖い感じになっちゃうんですけど、“グリード”が重なるのが面白いなって付けた造語で。私的には、“誰も否定してないから、自分の好きなことをやればいいよ”っていう意味で付けたんですね。一歩踏み出せばいいだけなのに、“でも”とか“だって”って言うばかりで、踏み出さないための言い訳を探している人が多いなって思って。逆に、“じゃあ、やめればいいじゃん”って言うと、“え、でも……”ってなる。自分に対しても言ってることなんですけど、“やりたいと思ってるならやればいいし、やりたくないならやめればいい。ほんとはどっちなの?”ってことを言いたくて。ただ、それだけだと意地悪な感じになっちゃうので、全体としては、“自分の好きなことをやったらいいじゃん”ってことを言えたらいいなって思って書きましたね。

人生の教訓として“覆水盆に返らず”以上にハマった言葉がない

──楽曲が出来た順で話すと、ここまでに出た3曲は“デビューが決まる前”から作ってた曲ですよね。その後、2012年夏にはデビューが決まって。

上口 今のSalleyの制作スタイルとしては、僕が作った曲にうららが歌詞を付けて、ディレクターに聴かせるっていう流れなんですけど、「リセットの呪文」はそのスタイルができる前に作った曲で。僕とディレクターで二人三脚で曲を作っていた時期があったんですね。コードやメロディ・ラインのディレクションは自分なんだけど、“ここでコード・チェンジを2回くらいしてほしい”とか、逐一リクエストをもらう感じで作ってて。つねに人の意見が入ってくるなかでの制作で、今までにやったことのない作り方だったんですけど、結果、カッコいい楽曲になったなって思って。もともとは、ディレクターに「エグい曲が聴きたい」って言ってもらったことで出来た曲ですね。
うらら 最初に曲を聴いたときに、すごくダウナーな印象を受けて。ただ暗いだけじゃなく、パンチもあったので、クドくしたほうがいいかなと思って、“覆水盆に返らず”をテーマに書きました。

──壊れた関係は二度と戻らない?

うらら 別れたカップルがヨリを戻すとか……もしもヨリを戻したとしても、それもまたいつか終わるよねって思ってて。私、人生の教訓として“覆水盆に返らず”以上にハマった言葉がないんですよね。そんな暗い言葉を教訓にしていいのかと思うんですけど、歌にしてみてもいいなと思って、“リセットできないよ”っていう言い方に変えて歌ってますね。
上口 僕、盆を返しちゃうタイプかもしれないです……。

──あはははは。“焼けぼっくいに火がつく”タイプだ。

うらら でも、一度壊れた関係は絶対にもとには戻らないですよね。壊れた経験を含めた関係になるし、どこかしらにヒビは入ってて、また水が漏れ出すこともあると思う。例えば、一度、嘘をつかれたあと、仲直りして温厚に暮らしてたとしても、つねに本当か嘘かを疑ってしてまって、疲れてしまうっていうことが書きたかったんですよね。
上口 ま、ディテクターの「エグい曲を聴きたい」っていう提案が、うららの歌詞の新しいイメージに繋がったのであれば……。制作の幅としても新しい感覚はありますね。あ、あと、「青い鳥」もデビューが決まったあとの曲ですね。
うらら デビューすることが決まって、そこに向けて曲を作ってるときに、一時期、上口くんがディレクターのOKをもらった曲を私に送ってきて制作するっていう形を取ってて。でも、「その先の景色を」や「赤い靴」は自分たちが好きなように作った曲だったから、もう一度、そうやって自分たちらしく作ろうっていう感じで、上口くんからまた、たくさんの曲が送られてきた中にあった一曲で。だから、すごくリラックスして、自分らしく書けたっていう記憶があって。テーマは幼馴染み同士の恋愛で、都会に憧れている彼女と、その彼女をずっと見守ってる彼氏っていうイメージで書いてますね。

──この女の子は一回、都会に出て、ひどい目にあってますよね。

うらら そうですね。私の友達で、なんでわざわざこんな不幸な恋愛をするんだろうっていう人がいて。不幸な恋愛をしてること自体が恋愛の醍醐味だって感じてるから、“なんでそんな人と”って言っても聞いてくれないので、ある一定のゴールを歌という形で提示したかったんですよね。

──Salleyのラブ・ソングに出てくる女の子は、ダメ男に振り回されてる子が多くないですか?

うらら 周りの友達にそういうタイプが多いんですよね。今、間違いなく5人は思い浮かんでるんですけど(笑)、「カラフル」も不幸な恋愛ばかりに足をつっこんでいく友達をモデルに書いてて。今も“That’s ダメ男”と一緒にいるんですけど……。

──テーマは、失恋からの回復ですかね? 「君はおまけさダーリン!」って言いながら空を蹴飛ばしてますが。

うらら “あなたに合わせてるわけじゃないんだよ”っていう、ちょっと負け惜しみの要素も入ってるんですけど、この曲のモデルにした友達は、どんな相手であっても、オシャレだけは譲れないっていう子で。男受けがいいか悪いかで服を選んでるわけじゃないし、自分が自分に自信を持てるかどうかが基準なんだよってことを歌いたかったんですね。それを“自分の意思を持って選ぶ”って書くと堅くなっちゃうので、あくまでひとりの女の子の生活の中で、簡単には相手色には染められない部分があるんだよっていうことを、かわいい曲調に乗せて女子っぽく歌えたらいいなって感じでしたね。

憧れてた自分や、一回あきらめた自分とかに、何か言ってあげたいなって

──デビュー前、デビュー決定後ときて、デビュー後に作った曲の話にいきたいと思います。

うらら 「fuchsia」と「My little girl」の2曲だけは、アルバムのために作った曲なんですね。特に「My little girl」は「その先の景色を」で始まって、この曲で終わるっていう曲順を意識して作ってて。歌詞の内容的に、「My little girl」は、「その先の景色を」の現在版になってるんです。いちばん最初に作った「その先の景色を」は、メジャー・デビューもなんも見えてない状況の中で、それでもその先が見たいんだっていう心境を書いてた。じゃあ、今、現在はどういう風な考えなのかを書こうと思って。そこで完結しちゃったら意味がないので、さらに先に向かうようなというか、聴き終わった人が、これからのSalleyがどうなっていくかが楽しみだなっていう終わり方にしたいなって意識で書いてました。
上口 うららにしては珍しく、ちょっと強引に入れ込んできたなっていう箇所があって。「この道しかないから」っていう落ちサビのとこなんですけど、どうしてもこれを入れたいんだ、これが伝えたいんだっていう意志を感じたんですね。それが、自分的には、新感覚っていうか。今までは周りの楽器との兼ね合いを考えながら言葉を乗せていく印象を受けてたので、またちょっと違ったうららを感じたというのはありましたね。

──将来が見えない中での決意表明から始まり、最後にどんなことを書きたいって思ってました?

うらら 今も“前を向いていきたい”っていう気持ちは変わらないんですけど、「その先の景色を」を書いてた頃の自分とか、もっともっと前の自分……例えば、中学生のときに歌手になりたいって憧れてた自分や、一回あきらめたときの自分とかに、何か言ってあげたいなって思って。「プレゼント」でも似たようなことを言ってるんですけど……。

──過去の自分にどんな言葉をかけてあげたかった?

うらら いろんなことを考えて悩んだり、大阪に帰りたいって思ったりしてると思うけど、結果、大丈夫だよって言いたかったんですよね。自己満足なんですけど……。

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