ペトロールズ SINGLE「SIDE BY SIDE」ディスクレビュー

SIDE BY SIDE

SINGLE

ペトロールズ

SIDE BY SIDE

ENNDISC

2014.03.26 release

<CD>


あなたも虜になってしまえばいい

 ペトロールズ。個人的に、今、この国で最もクールなバンドだと思っている。結成は2005年。下北沢GARAGEという小さなライブハウスを出発点にこれまでマイペースすぎるほどマイペースな活動を展開してきたことから、長らく知る人ぞ知る存在であったが、ここ数年で様々なイベントなどにも出演するようになり、バンド名は聞いたことがあるという読者も少なくないだろう。ライブでは着実に一見のオーディエンスを虜にし、現在、東京でのワンマン・ライブは恵比寿リキッドルームクラスのハコでもなかなかチケットが取れない状況になっている。換言すれば、一貫して純然たる音楽力だけでリスナーの支持を獲得しているバンドである。過去の作品群はライブ会場限定で販売されているものも多く、その一部はネットオークションなどで高額取引されていたりするのだが、これからペトロールズと出会うリスナーにとって打ってつけの作品と言えるのが、この1年半ぶりの全国流通盤となる3曲入りのシングル「SIDE BY SIDE」だ。

 メンバーは長岡亮介(vo、g)、三浦淳悟(b)、河村俊秀(ds)の3人。バンドの発起人であり全曲のソングライティングを手がける長岡は、東京事変のギタリスト“浮雲”として名を馳せ、事変の解散後は女王蜂、大橋トリオ、GATALI ACOUSTIC SET(髭・須藤寿のソロプジェクト)、illion(RADWIMPS・野田洋次郎のソロプロジェクト)、星野源などそれぞれまったく音楽性が異なるアーティストのサポートも務めてきた。これだけのメンツから求められている事実は、彼の音楽的センスがいかに並びないもので、また豊かな引き出しと奥行きを伴っているかという証左にもなっている。長岡のルーツはカントリーやブルーグラスにあり、そこからソウルやファンクなどのブラック・ミュージックを通過し、絶妙な距離を保ちながらロックにも接近した。意外にもペトロールズを結成するまでは本格的に曲を書いたことがなかったという長岡だが、だからこそ、と言っていいだろう、ペトロールズの楽曲は彼のバックグラウンドがとてもナチュラルに昇華され、誰にも似ていない旋律、色、動き、響き、求心力をまとっている。そこに離れがたく付着する豊潤な夜の芳香とセクシャルな気配が、バンドの雄弁な緊張感と余白をたたえたグルーヴによって放出される。そんな最高のポップスがここにある。

 本作「SIDE BY SIDE」のテーマは“旅”であり、それは4月20日からスタートする同名の対バン・ツアーを見据えて派生したものであるが、この3曲は今のペトローズが過去最高に高まり、開かれた状態にあることを如実に示してもいる。抗いがたいメロウネスを充満させながら荒野を突き進むオルタナ・ファンク「Fuel」、ペトロールズの記号性なきダイナミズムが凝縮されライブでは初期から披露されている「Ziki」、流浪の旅人たちの交差点を牧歌的かつロードームービー風に描いた「Side by Side」。書き手の威信を賭けて、クオリティは完全保証する。さあ、出会ってほしい。

(三宅正一)

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