THE BACK HORN – 昨年結成15周年を迎えた彼らの10thアルバム『暁のファンファーレ』。またあらたな制作課程、意識を経て生まれたと言う本作を4人が語る。

THE BACK HORN

通算10枚目となる、THE BACK HORN待望のニュー・アルバム『暁のファンファーレ』が完成した。バンド一丸となって高らかな希望を鳴らした傑作『リヴスコール』から1年10ヵ月ぶりとなる今作は、反作用的にメンバーそれぞれの個性が色濃く打ち出され、結果、過去最高と言えるバリエーションとダイナミズムを獲得。シングル曲「バトルイマ」を筆頭に全編にわたって漲る、魂を奮い立たせるような勇ましさ/闘争心は、腹の決まった本物のロック・バンドにしか鳴らせない類のものだろう。完成に至るまでの足跡と手ごたえをメンバー全員に聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 奥村明裕

 

メロディの向こうに何かが広がっているような音楽の可能性を感じられる

──新しいアルバム、まるで夜の海に漕ぎ出して、幾多の荒波を乗り越えながらまばゆい夜明けを迎えるような、深い感動がありました……って、こんなコメントでどうでしょう?

松田晋二 はっはは。いや、ありがとうございます。そういう映像的な表現の合うアルバムですよね。

──たしかに。率直な手ごたえは、いかがですか?

松田 個人的には……メロディのアルバムだなって、すごい思って。THE BACK HORNって、昔から“言葉”を自分たちなりに大切に扱ってきたバンドで。メロディに負けない歌詞があったら最強だろうという信念があって。そういう曲をたくさん作ってきたなかで、今回は言葉とメロディのケンカじゃなくて、メロディの向こうに何かが広がっているような、音楽の可能性を感じられる作品になったなと思ってまして。

──言葉というのは、いわゆるメッセージ性のこと?

松田 メッセージもそうですし、歌詞のパンチ力とか、切り口とか、言葉のセレクトとか。それがよりメロディと一体になっているというか。そのあたりの洗練度合いはすごい高まったアルバムだと思います。
菅波栄純 そうですね。手ごたえとしては、今まででいちばん生々しい演奏だなあと思って。
松田 そうそう。
菅波 4人が呼吸を合わせて演奏してる感じがめちゃめちゃ出てると思います。

人間が一緒に演奏しているときのウネリみたいなものが音源になった

──今回はどのようにレコーディングを進めたんですか?

菅波 最初に4人で演奏して、それをどんどん重ねていくようなスタイルなんですけど。ホント、自分がいちばん聴きたかった、人間が一緒に演奏しているときのウネリみたいなものが音源になったアルバムだなと思って。もちろん込めたメッセージ性とかもすげぇいいものになったなと思いつつ……最初に思った感想はそれでしたね。俺が聴きたかったロックの演奏って、こういうのだなあって。エレクトロニックな音楽も好きでよく聴きますけど、そういうものだと聴けない人間のウネリがここにあると思います。

──それっていうのは、最初からめざして辿り着いた境地だったんですか?

菅波 いや、たぶん……曲に引き出されたダイナミズムでもあると思うし。単純にそれぞれの音がすっきり削ぎ落とされたシンプルな音になってるし、お互いが呼吸を合わせてる感じがすごくしていて。出るとこは出て、支えるところは支えてっていうのが。あんま話し合いとかしなくても、阿吽の呼吸みたいなものはだんだん熟成してきてると思いますね。

──バンドとして成熟してきたと。

菅波 自分で言うとちょっと気恥ずかしいんですけどね(笑)。そういうのはあると思います。だから、13曲も入っててフルボリュームなんですけど、つるっと丸ごと聴けるんだよなあ。

──うんうん。岡峰さんはどうですか?

岡峰光舟 前作の『リヴスコール』のときは、曲順とかまでアルバムの全体像をきっちりみんなで構築してからレコーディングしたんですけど、今回はとにかくいい曲をどんどん作っていって、タームごとに録っていって。だから、この13曲が揃ったときに初めてアルバムの全体像が見えて。

──前作とは、制作プロセスが違ったんですね。

岡峰 はい。『リヴスコール』のときのように、きっちり作り込まれた世界観も大好きなんですけど、今回みたいに一曲一曲にバリエーションが出せたっていうのも、この作り方ならではだったのかなと思って。13曲出来て、この曲順になったときに、すげぇいいアルバムだなって実感しましたね。

──今回はあえてそういう作り方を選んで?

岡峰 そうですね。個々に責任を持って、とにかくいい曲、いいメロディ、いい歌詞を一個ずつ温めていって、それをバンドで一気に固めていった、みたいな。それがいい方向に作用した気がしてます。

──メンバーそれぞれの個性が際立ちつつ、バンドとしての一体感も生み出せたと。

岡峰 自分たちではそう思ってますね。

──山田さんはどうですか?

山田将司 似たような意見ですけど、ホント、4人の個性が出て、これだけの楽曲的な振れ幅があって。最初に13曲揃ったときは、まとめ切れないなっていうのがあったんだけど。でも、だからこそリアリティがあるというか。完全に想像を超えたアルバムが出来たと思います。

アルバムとしてのバランスは取るんじゃなくて、取り合うものというか

──制作に取り掛かる前に、4人で話し合ったこととかは?

岡峰 話し合ったことは、実際なかったですね。レコーディングしてる最中も、アルバムに入れる入れない関係なく録っていきましたし。

──かなり衝動的な勢いで作られたんですね。

松田 そうですね。どこかである程度まとめられるだろうっていう感覚があって。今までの経験とか自信もあるし。衝動的だけど当てずっぽうでやってたわけじゃなく、後々わかったことだけど、一曲一曲がこのアルバムに繋がっていたというか。あと、アルバムとしてのバランスは取るんじゃなくて、取り合うものというか。
菅波 ほぉ……(手元のメモ帳に発言を書き込む菅波)。
山田 名言、出た?(笑)
松田 いや、そういうんじゃなくて(笑)。バランスって、取ろうとすると意外に取れなくて。だけど、長くやってると自分たちなりのバランス感覚がわかってくるというか。その、バランスを取ろうとしないことが、実はいいバランスに繋がってるというのが実感できたアルバムで。だから、バランスは取るものじゃなくて、取り合うものっていう。

──2回言われましたけど、メモは?

菅波 もう大丈夫です(笑)。

──ははははっ。じゃあ、アルバム制作においては、ここまで自由にやったのは初めて?

松田 たぶん、特に話もせず作ったのは初めてなんじゃないかな? みんなで合宿行って音出して、それを育て上げて磨いていった曲はたくさんありますけど。
岡峰 うん。去年の1月にツアーが終わって、3月中頃くらいから曲作りしようってなったときに、(菅波)栄純から1ヵ月くらいメンバー各々で曲を作ってみようっていう提案があって。曲はいっぱいじゃなくて、一曲でいいから、自分の中での一曲を作ろうって。そこからスタートしてますよね。

自分の腹の底を覗いてみる期間があってもいいんじゃないかなって思った

──その提案にはどういう意図があって?

菅波 自分の中で『リヴスコール』が、ツアーもひっくるめて無我夢中でやってたところがあって。なぜ音楽をやるのかってところまで突き詰めて。『リヴスコール』に「ミュージック」って曲も入ってるけど、お腹がふくれるわけでもなんでもねえものだけど、この世には音楽が必要だってところまで確信的に行き着いて。だから、『リヴスコール』はゼロ地点というか。自分らの存在意義とか信頼関係とかを見つめ直したし。
松田 ある意味、使命というか、俺たちがバンドをやるならばっていう。
菅波 うん。それをツアーまで終えて、ひとりひとりが得たもの、鳴らしたいと思ってるものとか、自分の腹の底を覗いてみる期間があってもいいんじゃないかなって思ったんすね。『リヴスコール』でそれだけの経験ができたから。

──バンド、音楽と徹底的に向き合った『リヴスコール』を経て、今度は個人として、自分自身と向き合おうと。

菅波 根源的なものに目を向ける機会があったから、もうちょっと目を凝らしてみて、自分の中から湧き上がってくるメッセージとか、音の響きとか、それぞれに引っ張り出せないかなって。スタジオに集まって、みんなで音を出すこともできたけど、その前にふつふつと滾らせる時間が必要じゃないかと。

──自分の中に深く潜るというか。

菅波 そう。それで最初に提案しました。

──それだけ『リヴスコール』の制作は、震災後というタイミングもあってシビアだったんですね。

菅波 はい。少し試された感じがしましたね。シビアだったけど、それ以上の、音楽をやる喜びみたいなものが最終的に打ち勝ったっていうか。ライブでもいろんなお客さんにパワーもらったし、自分たちの中でそれが越えてきて。喜びが勝つってことは、俺たちはバンドを続けるべきだぜって思って。だから、あらたな一步を踏み出せたというか。

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