石崎ひゅーい – 自身のソング・ライティングの原点を母と語る──その亡き母に向けてをコンセプトに描かれたミニ・アルバム『だからカーネーションは好きじゃない』。

石崎ひゅーい

昨年7月にリリースしたアルバム『独立前夜』のインタビューで、「僕の表現するものの中で重要なアイデンティティになっているのは、母ちゃん」と言っていた、石崎ひゅーい。そんな彼が、今は亡き母親に対する感情をコンセプトにした2ndミニ・アルバム『だからカーネーションは好きじゃない』を発表する。石崎ひゅーいにとって、母親ととことん向き合うということは、自分自身と向き合うこと。そして、自分を肯定するということ。今作は、石崎ひゅーいのアイデンティティそのものだと思う。

INTERVIEW & TEXT BY 松浦靖恵

 

自分から生まれたものに何か物足りなさを感じてしまった

──本格的に曲作りを始めてからこれまでの自分を1枚のアルバムにまとめたことで、『独立前夜』は石崎ひゅーいにとって、ひとつの区切りになった作品だったと思うんです。それだけに、『独立前夜』以降、何か心境の変化があったのではないか、と。

心境の変化というか、自分の中では『独立前夜』を出してからも、それまでと何も変わらない感じで、余裕で曲がガンガンできると思っていたんですけど、全然曲ができなくなっちゃいましたね(笑)。

──それは大変なことになっちゃいましたね。なぜそんなことになってしまったんでしょう。

『独立前夜』までの僕は、衝動的に曲を作っていたんです。でも、たぶん、衝動的に作るってことに、自分が慣れちゃったんだと思います。

──衝動は石崎ひゅーいが音楽をやるうえでいちばん大事にしていた部分だったのに?

僕にとって曲を書くというのは、とても自然なことだったけれど、シンガー・ソングライターとしては、そんなカッコつけたことばっかり言ってらんねぇなっていう部分もあるというか。いい曲なんて次から次へと生まれてこないし、なんかいいもんがいつか降ってこないかなと待っていたって、まったく降ってこない。で、そんな状況の中でも、“おっ!”と思えるような曲がポロッと出てくるんだけど、前の自分というか、衝動のまんまに書いた以前の曲と比較しちゃって。なんか、感覚がくすぶっている感じでしたね。自分から生まれたものに何か物足りなさを感じてしまったんだと思います。

──そんな心境になっても、曲は作り続けていた?

曲は作りたいから、いろいろ考えながら曲作りを続けてました。衝動的な感じで書く以外に、どんなやり方があるんだろうっていろいろ努力してみたりもしたし。でもね、なんかやっぱり違うかも? って気づいちゃったんですよ。頭でいろいろ考えながら作るのは、やっぱり自分じゃないなってことに。

そうだよな、僕はそこを避けては通れないんだよな

──いろんなやり方を試していたら、逆に原点に戻っていっちゃった。

そうなんです。自分は何を歌うんだろうって考えたときに、そうか、やっぱりコレだったんだって改めて気づけたのは、このアルバムの1曲目に入っている「僕だけの楽園」が出来たときですね。この曲は母ちゃんに向けた曲なんですけど、自分の中にあるマザコンの部分は、僕がソング・ライティングするときの根源みたいなものだっていうのが自分でもわかっているから、「僕だけの楽園」が出来たときにパッと視界が開けちゃったというか。そうか、そうだよな、僕はそこを避けては通れないんだよな、だったらそこをもっと掘り起こしてみよう、とことん突き詰めてみよう、と。

──そんな経緯があって、今作は亡き母に向けた想いをコンセプトにした作品になったんですね。ミニ・アルバムにしようというのは、最初から決めていたんですか?

はい。曲数も5曲にしようって最初から決めてました。「僕だけの楽園」が出来たときに、なんとなくミニ・アルバムに入れる曲の音の構成が見えてきたし、5曲目に前からあった「卵焼き」を入れたら、いい眠りにつけるなっていう流れも見えてきたので。

──石崎ひゅーいは、「卵焼き」のような優しい歌もうたえちゃうんです。

実は、そうなんです(笑)。この曲は1年前くらいに出来ていて。生活感とか日常とか、そういうものがもろに出ている曲って今までになかったなぁっていうことを思ったときに、だったら作ろうと思って作った曲です。

──コンセプト・アルバムにしようと決めてから書いた詞曲は、どんなテンションで書いていたんですか? 母親への想いがより膨らんだとか、悲しい気持ちになってしまったとか。

なんだろう……。母ちゃんは今ここにはいないから、たしかに悲しい気持ちにもなるんだけど、作り終えたときには晴れやかな気分になるというか。なんかね、このCDはリリースしなくてもいいかも、なんて思っちゃって(苦笑)。

──いや、いくらなんでもそれはダメでしょう(笑)。

ですよね(笑)。だけど、自分の中では、富士山の頂上からこのCDを天に向かってポーンと放り投げたら、どこからともなく大きな鳥がやってきて、そのCDをパッと掴んで、天国にいる母ちゃんのところまで持っていってくれたらいいなって思っちゃったんです。

アイデンティティを無理矢理に変える必要はないんだなって気づけた

──ここに収録した5曲は、石崎ひゅーいにとってはとても個人的なものだけに、そんな気持ちになってしまったのかも。

そうなんです。

──でも、そうするわけにはいかない(笑)。だって、石崎ひゅーいの音楽を待っている人たちがたくさんいますから。

無事、発売されることになって良かったです(笑)。たしかに、ここに辿り着くまでは曲ができなくなったりして迷走していたけど、自分でコンセプトを掲げて作品を作るってことを今までやったことがなかったし、収録曲が全部母ちゃんに向けた歌っていうのをとことんやってみたら、どうなるんだろうっていう興味もあったし。小説の1ページ目とかに“この小説は●●さんに捧ぐ”なんて書いてあったりするけど、母ちゃんに捧げるアルバムが、メジャー・デビューしてから作れるなんていいなぁって思いました。

──コンセプトありきの作品作りではあったけれど、実はより自由に詞曲を書いているように感じられたんですけど。

たしかにそうかもしれないです。今回の曲はよりオリジナルなものになったと思うし、より自由だなって自分でも思いました。母ちゃんに向けた曲を書いたことで、いい意味で自分のアイデンティティは変わらないんだな、無理矢理に変える必要はないんだなってことにも気づけたし。今回のアルバムは自分の根源をとことん見てやろうっていう原点回帰みたいなものになったし、誰にもマネできないようなものが作れたかなって思います。

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