パスピエ SINGLE「MATATABISTEP/あの青と青と青」ディスクレビュー

MATATABISTEP/あの青と青と青

SINGLE

パスピエ

MATATABISTEP/あの青と青と青

ワーナーミュージック・ジャパン

2014.03.26 release

初回限定盤
通常盤


両A面作から多面性を導き出す2014年のパスピエ

 鮮やかな色彩感覚と自由なタッチを特徴とする印象派絵画/音楽とポップ・ロックの融合をテーマに結成された5人組バンド、パスピエ。ジャンルが林立する現在の音楽シーンを貫いて響く普遍的な訴求力を模索するべく、多角的に楽しむことができるハイブリッドな音楽性とそれを邪魔しないメンバーの匿名性、イメージを喚起させるビジュアルとの融合を絶妙なさじ加減で共存させていることから、彼らの音楽性を語る際には相対性理論の名前が引き合いに出されることが多い。しかし、パスピエはパスピエだ。かつてのY.M.O.がそうだったように、オリエンタリズムが感じられるニューウェーブやテクノ・ポップからの影響が押し出されたインディーズ時代の音楽性は昨年6月にリリースされたメジャー・1stアルバム『演出家出演』でさらに進化。コンピューター上で構築されていた密室的なアレンジはスタジオでのフィジカルな作業に移行し、さらにはポスト・ロックやフュージョンの要素を溶かし込みながら研ぎ澄ませていったポップ・センスは多くのリスナーを巻き込んでいった。

 両A面の新作シングル「MATATABISTEP/あの青と青と青」は、そんな彼らが『演出家出演』以降に放つニュー・モードとなる作品。その1曲目に持ってきた「MATATABISTEP」は、キャッチーさを凝縮した、ずばりパスピエ流のダンス・チューンだ。EDMを彷彿とさせるレイビーなシンセとファンキーなベースが印象的なリズム・セクションは、前作アルバムで切り開いたフィジカルなパスピエを象徴しているかのよう。それに対して、2曲目の「あの青と青と青」は、大胡田なつきが歌う「壊して壊して」というフレーズに象徴されるように、これまでのパスピエを解体して、あらたな音楽性を構築するための第一歩といえるカッティングエッジな一曲。ダブステップを思わせる変則的なドラム・パターンを含む、プログレッシブな展開の楽曲が壮大に広がっていく作風はおそらく今後のバンドの方向性を示唆するものなのだろう。

 さらにカップリングにはテンポ・アップしながら鍵盤を目まぐるしく転がしていく「万華鏡」と電気グルーヴ「Shangri-La」のカバーを収録。特に後者は、’70年代のディスコ・クラシック、シルベッティの「スプリング・レイン」をサンプリングした「Shangri-La」をカバーるというトリッキーなアプローチが実にパスピエらしく、両A面曲で異なるふたつの新機軸を打ち出しながら、同時にこれまで培ってきた個性も忘れず、多面的なバンド像をきっちり提示する彼らの活動は2014年も絶好調のようだ。

(小野田雄)

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